ある晴れた日に
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647部分:悪魔その八
悪魔その八
「パパの力でね。それに」
「それに。何なのよ」
「僕も法律には強いしね」
こうも言うのである。
「幾らでも抜け道あるしね」
「抜け道っていうのね」
「法律なんてどうでもなるんだよ」
そしてまた言うのだった。
「本当にどうにでもね」
「それで今日は何でここに来たのよ」
明日夢がきっとした顔で彼に返した。
「まさかとは思うけれど」
「そのまさかだったらどうするのかな」
へらへらとして、それでいて何処か狂った、そんな声も出してきた。
「君達は」
「この子達は何があってもやらせないわ」
「絶対にです」
毅然として彼に返した。
「例えあんたが何をしようと思ってもね」
「何もさせませんよ」
「おやおや、これはまた厳しいね」
二人の今の言葉を聞いて肩をすくめてみせたのであった。
「実に」
「それでどうするっていうの?」
「一体」
「何か気分が変わったよ」
やはりここでも軽い言葉であった。
「今日はもういいや」
「いいや?」
「帰るよ」
こう言って踵を返すのだた。
「もうね」
「帰るっていうの?」
「戦うとか好きじゃないんだ」
背中を向けたままでの言葉である。
「そういうのはね」
「じゃあ何が好きなのよ」
「楽しむことだよ」
背を向けたままなのでその顔は見えない。しかしその声はというと。一度聞けば二度と忘れることができないような、ぞっとする声であった。
「それが好きなんだよ」
「あんたまさかそうやって」
「まさか?」
「未晴を」
明日夢は思わずその名前を言った。
「未晴をそうして」
「何かな、それって」
「未晴のこと知らないなんえ言わせないわよっ」
その言葉が荒いものになった。
「絶対にね」
「さあ。いちいち名前なんて調べないし」
彼にとってはあくまでその程度だというのだ。
「そんなのね」
「こいつは・・・・・・」
明日夢はここでわかったのだった。目の前にいるこの男がだ。既に人と呼んでいいのかどうかさえ憚れるような。そうした輩であるということがだ。
「本当に性根が」
「だからなんだね」
桐生もその明日夢の横で言う。
「ああしたことができるんだよ」
「僕はおもちゃで遊んだだけだよ」
彼にしてはそれだけだというのだ。
「ただそれだけだよ」
「くっ・・・・・・」
「じゃあね」
ここまで言ってであった。前に向かって歩いて行く。
「また機会があればね」
「・・・・・・許さない」
明日夢は彼の背中に対して告げた。
「あんたは。何があっても許さない」
しかし動くことはできなかった。桐生もまた。その妖気は背中からも恐ろしいまでに伝わってきていた。それでどうしようもなかったのである。
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