魔法少⼥リリカルなのは UnlimitedStrikers
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第36話 親子
――side震離――
「……その観点からは見たことなかったわね」
「……灯台下暗しというか、なんというか……はぁ」
医務室にて、シャマル先生と共にとある画像を見て頭を抱える。
モニタに映るのは、2つの画像。一つは、何かの模様な物。中心に大きな円があり、そこから血管の様な、大中様々な線が四方八方に複雑に絡み合って伸びていた。
もう一つにも、中心に大きな円はある。だが、その円は歪な形をしており、目を凝らしてよく見なければ線が奔ってるようには見えない。だが、見えたとしても、先の画像に比べるとあまり絡まっておらず、線も弱々しい。
「……サンプルで私の分を提供したんですけど、まさかこんなに差が出るなんて」
「でも、これが本当ならばどうして流は戦闘が出来るかって話になっちゃうわ」
今見てるこの画像の真ん中の円とは、リンカーコアから体の各部へ伝達させる魔力の循環図だ。最近少し気になったことがあって、この前の事件の時の私のデータと、元に戻ってから取った流のデータを、色々弄ってる内にこの画像を出すことに成功した。
「ちなみにこれって、シャマル先生的には?」
「ドクターストップっていいたいんだけど。現に普通に戦ってるところを見ると何も言えなくて」
クスンと涙目になるシャマル先生を励ましながら、今一度確認する。先に見ていた画像が私のリンカーコア。所々濁ったり薄くなったりしている部分はあるけど、まだ許容範囲内だ。
だが、後者の画像。これは流のリンカーコアだ。だが、本来なら綺麗な円で無くてはならない部分は歪み、そこを中心に奔る線はどれも濁り、薄くなっている。
ここまで歪んでいると、リンカーコアを傷つけるだけでなく、現時点でも何かしら影響が出るはずなのに、流は普通にしている。
だけど……。
「……偶然だったんですよねー。私とかち合ってる時に撃った収束砲や砲撃が全部バラバラだったから気づいたんですよねー、改めて見るとおかしくねー? と思って」
机に肘ついて、頬杖しながらグダグダ話す。というか吐き出す。今まではあまり気にかけていなかったけれど、最近は体が変わった事もあって注意深く見るようになった。それに伴って攻撃を改めて観察して、分かってしまったこと。
本来、この世界の魔法とは、デバイスを使って魔法を撃つようになっている。勿論無くても撃てるが、それには術式をしっかり把握して置かなければならない。故に、収束などは基本的には難しい部類になるが、デバイスによって制御されているから収束砲等が撃てるんだ。
それと同じくして、機械で演算して撃たれるというこの動作。込めた魔力によって多少の変動はあっても、基本的な答え、つまり放たれた攻撃は一定でなければならない。その値に、多少のほんの僅かなズレ程度ならば、まだ説明が付く。だが、あり得ないほどずれるとすれば、それは過程で間違いがあったからズレるという事。
勿論例外はある。身体強化や、武装強化はこれに当てはまらない。あくまで個人技量や、体の限界なども考慮しないといけないのだが……、まぁこれは置いといて。
流の場合。デバイスを使って攻撃をしているにも関わらず、その放った攻撃……つまり、本来出さなければならない値が毎回あり得ないほど異なっている。
しかも、それは分かりやすい部分で、違和感となって出ていた。撃つ度に微妙に威力が極端に上がったり、下がったりしているという事。
それに気づいて、今回相談してみたんだけど……。
「うーーん。流でこれなら……はやてちゃん達も不味いんじゃないかしら」
ということだ。シャマル先生なら調整が出来るんじゃないかと思って相談したら、自分から仕事を作ったんですよ、この人。
で仕方ないから……。
――――
「……以上、リンカーコアを中心としたマッサージ法何だけど……大丈夫?」
「助かります。まぁ、無理しない程度でやってみますねー。それでは、失礼します」
……正直に言いますと、これ無限書庫で見た方法と一緒だー! ってなことをシャマル先生には言えるわけも無く、せっかく丁寧に教えてくれた以上、知ってる! とか言えず、ずっと説明を聞いてた。
と言うか、前に教えてくれた方法のまま……手に魔力を込めて、淀んだ流れを戻すようにやればいいんだね。
てくてくと廊下を歩きながら、ふと思う。ここ数日の事を。
流→お風呂→マッサージ→アハッ♪
「フンッ!」
変なことが頭を過ぎって、思わず頭を壁に叩きつけて、煩悩を飛ばす。落ち着きなさい叶望震離。周りが変な目で見てようが気にしちゃ駄目。何か遠くでリインさんが涙目になって何処かに飛んでいったけど、気にしちゃ……うん。駄目だよ。
あの時と同じ……様に、うん。アレの魔力を込めた版でやればいいんだよ。
しかし問題がなー。あ、そうだ。夜に行けばいいんだよ。そうしよー。
――side響――
テキパキと、リズムよく書類やデータを整理していく中、ふらりとやってきたなのはさんが、スバルとギンガの側へ行き。
「スバル。ティアナはどうしたの?」
流の援護を受けつつ書類整理をしているスバルに聴くけど、心ここにあらずと行った様子で頭から煙が出そうな感じになっている。その代わりに。
「やが……はやてさんと共に、本局へ同行されました」
一瞬名字で呼びそうになったのをなんとか堪えて、名前に言い直す流を見てなのはさんの顔が綻んだ。その間にギンガがスバルの裾を引っ張って、心を戻して、なのはさんの方に視線を向けさせる。
いやぁ、この一連の動作見てると、流も徐々に馴染んできて、いいですねぇ!
「なのはさんも今日はオフィスですか?」
直ぐ側までなのはさんが来てることに気づいてなかったスバルが、話題を変えようと話を振る。
横で冷や汗流してるギンガが居なかったら決まってたんだけどなぁ。
「そうだよ。響と奏を除いたライトニングは今日も現場調査だし、副隊長達はオフシフトだし、六課の前線メンバーは私とスバル、流と響、そしてギンガの変則チームだけだね」
「何も起きないことを祈ります……」
つっても、残ってるのほぼスターズですけどねー。というツッコミは控えとく。一応補足として、なんで俺がライトニングとして参加してないかというと、文字通り現場調査ということがまず一つ。
もう一つは奏居ないし、スターズは病み上がり2人が居るから、代わりに俺が残って出動があった場合のフォローに入ることになった。
あとは、たまには家族3人一緒なのもいいんじゃないかと思って引いたんだけどね。実際調査終わったら食事してから戻ってくるって言ってたし。
いやー最近はエリオとキャロに兄呼びされてもフェイトさんが飛んでこなくなったから、大分楽になったなぁって。
最初の頃は酷かった……酷かった! 理不尽な暴力に俺耐えたし! フェイトさん相手にチームで模擬戦したら、何かえっらい狙われてたし。
今となってはいい思い出だ、うん。
そして、スバルや。いい加減流かギンガに頼るのやめーや。仕事出来ないまんまじゃない
――――
「でも、ヴィヴィオって……この先、どうなるんでしょうか?」
「ちゃんと受け入れてくれる家庭が見つかれば、それが一番なんだけど」
「難しいですよね。やっぱり普通……と違うから」
寮へと続く道で、なのはさんとスバル、そしてギンガがヴィヴィオの今後について話してる。この話題には流も興味があるらしく、心配そうに話を聞いてる。
ギンガの言葉に何か感じたけれど、それは一旦置いておこう。
まぁ、ヴィヴィオの件は、事情が事情なもんだから、時間は掛かるだろう。だから、暫くは……。
「見つかるまでは……ちゃんと安心できる場所に巡り会えるまで時間が掛かると思うんだ。だから、まぁ当分は私が面倒見てけばいいのかなって」
それを聞いて、表情が明るくなるスバル。
「エリオやキャロにとってのフェイトちゃんみたいな、保護責任者って形にしとこうと思って」
「良いですね! ヴィヴィオ喜びますよ!」
これを聞いて、流も安堵の表情を浮かべてた。うん、良かった……。
筈だったんだけど、実際の所は。
「?」
「ほら、やっぱりよく分からない」
流の膝の上に座るヴィヴィオは首を傾げて困惑してた。まぁ、この歳で保護責任者とか言われても、理解出来ないのが普通だよね。俺もギンガも苦笑い。
それを聞いてスバルがウンウンと頭を抱えて悩んだかと思ったら。何かをひらめいたらしく。
「つまり暫くなのはさんがヴィヴィオのママだよって事」
それを聞いて、流となのはさんを見上げた。そして、なのはさんの方を見て。
「……ママ?」
不安そうに、小さく呟いた。それを見てスバルが慌ててるのを尻目に。なのはさんがヴィヴィオの側へと座り。
「いいよ、ママでも。ヴィヴィオのママが本当のママが見つかるまで、なのはさんがママの代わり。ヴィヴィオは……それでもいい?」
不安そうに流の膝から降りるがズボンの裾を掴んだまま、不安そうになのはさんを見上げる。それを見て微笑むなのはさん。
「……ママ?」
「はい、ヴィヴィオ」
それでもまだ不安そうに裾を掴んでる、そして。
「……ママ」
「なあに?」
みるみるうちに顔がグシャグシャになって、なのはさんの元へ駆け寄って抱きついて、大声で泣いた。
「え?! あ?! え?!」
突然の事態に慌てるスバルを尻目に、流の表情も嬉しそうにしているのに気づいた。そして、大声で泣くヴィヴィオを優しくなでながら、なのはさんはずっと抱き続けてた。
そして、落ち着くまで側に着いていると、不意にヴィヴィオがなのはさんの手から離れて、流の元へ行き。
「流は?」
「何が?」
コテンと首を傾げるヴィヴィオに合わせて、流も首を傾げる。
「流のママ」
一瞬時が止まる。
と言うより、吹き出しそうになる口を慌てて抑えた……スバルのな!
俺も流も……いや、流はなんか変な汗をかいてる。 俺となのはさんは目が点になるけど。先になのはさんがもとに戻って。やたらとニコニコと笑みを浮かべて。
「流ー。ママって呼んでもいいよ~」
一瞬なのはさんと目があった。悪戯心でやったんだろうけど……、うん。乗ろう。どうせ恥ずかしがって、言わないだろうし。ちょっとこういう時の対処を学ばせよう。
なんて考えてると、流も元に戻った。意味は伝わってるらしく、顔が赤い。恥ずかしさを誤魔化すようにヴィヴィオの頭を撫でて。
「……その、お母……さん」
また時が止まった。
言った方は、多分冗談に乗ったんだろうけど、言われた方は逆に、予想外だったらしく、徐々に顔が赤くなって、
「え、あ、ごめんね流?」
ぎこちなくなってしまった。見てるこちらもなんとも言えない感じになる。そんな中で。
「流、そこはママって言わないと」
ワンモアなんて言うスバルをシバいて、この状況を理解出来てないヴィヴィオを説得。なのはさんは流のママには成れないと伝えた。そしたらなんと。
「……じゃあお爺ちゃん?」
「なんでやねん」
まさかの祖父ポジションて。聞いてて驚いたわ。スバルは爆笑してるし、ギンガは口押さえてるし、なのはさんも流も困ってるし。と言うか本当に流の事好きだよなー。なんでだろ?
「ヴィヴィオは流の何処が好きなの?」
「んー……あ、前にお外へ連れてってくれて、一杯お水があったの!」
「「「「え?」」」」
その場に居た全員の声が被って、視線が流へ向かうが、全力で知らないという素振りをする。
「……それはいつの話?」
「んー……忘れたー」
ガクリと項垂れそうになるのを堪えて、ヴィヴィオの頭を撫でて立ち上がる。まぁ、多分何かと勘違いしてる……と思う。だけど、変な空気だし……良し。
「お腹すいたしご飯食べましょ」
「「わーい」」
苦しいかなーとか思ったけど、スバルとヴィヴィオが食いついてくれて良かった。なのはさんもいいよってジェスチャーを出してくれたし。流もこの空気から抜け出せると分かってホッとしてる。
でも、外へ連れてって貰った、ね……。
まぁ、わかんないことだらけだ、仕方ないさ。
――――
震離を除いた六課残留メンバーとヴィヴィオとで食事を取ってる。何か震離の奴は色々調べたいからって色んな所を回ってるらしい。しかも何かリインさん曰く突然廊下で頭打ちつけたとか言ってたけど、何してんだアイツは?
まぁ、ある意味いつも通りなんだろうけどさ。
ふと視線をなのはさんとヴィヴィオに向けると、二人共嬉しそうというか、楽しそうだ。まぁ、ヴィヴィオにとっては母親が見つかったわけだし、なのはさんもそのつもりなんだろうケド。
いっその事しっかり引き取っちゃえばいいのに……なんて思う、だけどそれは第三者の俺だから言える話であって、本当の所は難しいんだろう。なのはさんの現状を見るに忙しい人って言うことは誰が見ても分かるし。
ヴィヴィオになにかあるのは分かるし、今六課でも色んな方面で調べてるらしいけど。間違いなく普通の女の子ってわけじゃないだろうし。何よりヘリ潰したあの人が、人質としてわざわざ連れて行こうとしたもんなー。
まぁあんまりこういう事考えても良くないか。
とりあえず、食事を取り終えて仕事を片付けようと思ったら。
「響に質問なんだけどいいかな?」
「? 何でしょう?」
そう言われて、なのはさんのデスクに向かう。そして、とある資料とデータを見せられて……。あらま。
「これ、何か分かるよね?」
ちらりと、スバル達の方を見てこっちに意識が向いてないことを確認してから。
「……流のデータですよね?」
「そう。スバル達がセカンドモードに入って、フェイトちゃんやシグナムさん達に任せられるようになったから、流達を見ようかなって思ってるんだ。
それでね。私としては流をこのままオールラウンダーとして持っていきたいと考えてるの」
「……ですけど、まだ分からないと言うかなんというか。ごめんなさい俺の意見ではまだ計りかねないというか、具体的な事言えないです」
資料とデータを見ながら、首を傾げそうになる。実際の所、流みたいな本当の意味での万能系って見たこと無いからなぁ、俺ではなんとも。
「うーん。今のうちに教える方向を考えないと、近いうちに時雨達4人も来るからねー。
正式に決まるまではロングアーチだけど、向こうからお話があってね。いざという時に使えないのは嫌だから、訓練をつけて欲しいって」
「あぁ、なるほど」
思わず苦い顔になる。うーん。あいつら4人もくるとなると、いよいよもって俺のいる意味がなくなるんだよなぁ。そろそろマジで指揮官資格取って後方に回ったほうがいいのかなー。
「あとさ、響に個人的なお願いなんだけど」
「はい。俺で良いなら受けますよ?」
胸元で手を合わせてこちらを見上げるなのはさんを見て、なんだろうなと思う。出来ることなら協力は惜しまないし。
「……無茶ぶりになるかもだけど?」
「承知の上ですよ。出来ることなら協力致します。なんでもどうぞ」
そこまで言って、なのはさんがニヤリと笑ったのが見えた。やっべ。
「なら、ヴィヴィオを紹介する為に地球へ行くの同行して?」
「絶対にノゥです」
「お願い?」
「嫌です」
えへって、小首を倒しながらお願いポーズを取られるけど、この姿勢は変えない。
「なんでもどうぞって、言ったじゃない」
「仕事なら手伝いますけど、明らかにそれオフの話じゃないですか。それにあんまりあそこに行きたくないのも理由です。
大体そうホイホイ休みが取れるわけでもないでしょう、なのはさんお忙しいんですから」
「……はやてちゃんからね。言われたの。有給消化してもらわんと困るって」
「完全な私情じゃないですか……でもヴィヴィオ紹介するって言っても、やっぱはじめからそのおつもりで?」
「うん。六課で預かるのは決まってたけど、保護責任者は決まってなかったからね。私がやろうとは思ってたの」
なるほど初めからそのつもりだったんですね。でもだからって俺を地球……海鳴に同行する理由がわからん。というか、スバルやその……なのはさん困らせてるーみたいに面白そうな目でこっち見るなよ。
「それでね。響の居合術に心当たりがあるから見てもらおうと思って」
「……はぃ?」
思わず変な声が出たけど……マジかよ。いやでもなぁ。
「……少しお時間貰っても?」
「うん。一日だけ行く予定だし。保護責任者の書類も提出しないといけないしで、すぐに行くってわけじゃないけど。考えておいて欲しいなって」
「了解です。では失礼します」
会釈して下がる。席に戻って手を付けてた仕事に戻るけど。今一やる気になれない。
まぁ、原因はなのはさんの一言なんだけどね。
今更流派がしれてもなァ。勿論嬉しいっていう気持ちもある。だけど、なんて言えばいいんだろうか。それほど重要ってわけじゃないんだよね。
母さんから教わったこの技術。勿論なのはさんが言う心当たりのある人に披露しても良いと思う。なんだかんだで、俺はこの技にそれなりの自信もあるし、恥ずかしい所なんて何一つ無いとさえ自覚出来る。母さんが教えてくれたこの技。伊達や酔狂でずっと磨いてたわけじゃないし。
だからなんだろうか。もし流派が分かって、母さん以上の人が居たとして……それで何か変わるのが、嫌なんだろうか?
この日は思ってた以上に進めることが出来なかった。
夜になっても気分はもやもやしたままだ。気晴らしに花霞を整備していたら、ティアから連絡が入って、今からこっちに来いと言われた。まだ帰ってきてない流に書き置きを置いて、部屋を訪ねて入ってみたら、あらビックリ。
何かエリオとキャロが泣いてた。
で、話を聞いた。今日調査任務のはずだったけど、何かガジェットが出現、それを3人で上手く撃破したけど、どうもフェイトさんの表情が優れない。元気が出るようにと思ってキャロが飴をあげたら悲しそうな顔になったと。
自分達が考えていること、フェイトさんに心配をかけないようにがんばっていることと、それに伴う悩みと迷い。
それを聞いてまず思ったのが……不器用だよなぁ。
「……じゃあ俺から質問な。2人はフェイトさんの事嫌いになったとかそんな事は?」
二人共首を横に振る。うん、良かった。
「だろうな。ありえない。だけどちょうどいいやつを例えにあげようか。最近流が話しかけてきたりして、どう思った?」
不思議そうにエリオとキャロは互いの顔を見合って首を傾げる。困惑したような顔でこっちを見て。
「……嬉しかった」
「いつも一人で解決しようって感じだったから、頼られたというか、質問して一生懸命答えてくれようとしてて」
「うん、そのとおりだ。頼って頼られて、嬉しかったろ? それをフェイトさんにもしてあげたら良いよ」
「「え?」」
面を食らったように、驚く2人を見て頭を撫でる。
「俺はもう母さん居ないからなんとも言えないけどさ。
2人がフェイトさんに心配かけたくないとか、無理を言いたくないとかで考えすぎてさ、それで2人が無理をしてるんじゃって、フェイトさんは悲しいんじゃないか?」
ふと視線をナカジマ姉妹とティアに向けると、グッと親指を立ててコチラに向けてる。同じ意見だったみたいで何より……ってか、俺いらなくね?
「……無理なんて……してない」
エリオが悲しそうに呟く。少し撫でる手を止めて、2人を見て。
「だよな。だけどさ、昨日まで名前を呼んで頼ってた子が、急にしっかりして、距離を取ったりしたらさ、こう思うんだよ。無理してないかな? させてないかなって」
「でも、同じ部隊の上司と部下ですし」
俯きながらキャロが言う。それでもさ、
「それこそ論外だ。それをいい出したら、俺や流は階級上だし、仕事中は、もう少し敬えって話になる」
「「「「……うぅ」」」」
「あ、あはは」
実際でもなんでもない、本当ならもっと固いはずなんだよ。他の部隊は特に。だけど、うちの部隊その辺も緩いからなー。俺も名前でいいって言われてから、普通に名前で呼んでるし。しっかりお偉いさんの前では名字と階級とで呼ぶけどね。
「だから気にするな……とは言わんけど。もう少し話をして頼ってあげなよ。甘えられる内に。話が出来る内に色々しないと、離れてから、居なくなってからじゃ遅いしね」
「「うん!」」
「さ、まだフェイトさん帰ってないし、迎えておかえりって言ってやんなよ。それだけでも喜ぶよ」
「わかった!」
「行ってきます!」
ぽんと2人の背中を押してやると、パタパタと走っていった。うんうん、元気になって良かった良かった。
「響、やるじゃーん」
横で聞いていたスバルが意地悪そうな顔で言うのを見て。
「あーん? なんじゃ貴様、目上で上官やぞー。敬えー」
「ははー」
「……何、アホなことしてるのよ」
「何時もこんな感じなの?」
「そうなんですよホントにもー」
スバルとじゃれてたら、怒られたで御座る……。
しかもティアには呆れられるし、ギンガは笑ってるしちょっと恥ずかしいし。
後書き
pixivの方にて、これの一つ前の回を投稿しております。諸事情で、R-18のお話ですのでご注意くださいませ。
加えて、何故震離が頭を打ち付けたかも理由が御座います。
長いだけの文かもしれませんが、楽しんで頂けたのなら幸いです。ここまでお付き合いいただき、感謝いたします。
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