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デート・ア・ライブ~Hakenkreuz~

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第十一話「ホロコースト・Ⅲ」

「さて、これで最後か」

彼女は殿と言う形で残されたナイトメアの分身体、その最後の一体にMG42を打ち込み肉塊へと変えるとそう呟く。十体以上いたナイトメアの分身体は本体が姿を消してから僅か五分ほどで全滅した。本体に及ばずとも天使の力を持つにも関わらず呆気なく倒した彼女ん実力の高さを伺えるだろう。

「す、すごい…」

一方、屋上の隅で見ている事しか出来なかった士道はただただ彼女の戦いに目を奪われていた。それと同時に屋上の隅で戦いを見ている事しか出来ない自分が情けなく思えてくる。元々ただの高校生だった士道に精霊と戦う事など不可能だ。そんなことが出来るのなら既に精霊などこの世から消えているだろう。

「これで終了か?いや」

彼女はそこまで言いかけると後方を見る。そこにはブレードを杖にしてよろよろと立ち上がる折紙の姿があった。体中に弾丸が貫通した箇所があるが折紙は無茶を承知で体を動かす。

「【SS】っ、貴方はここで…っ!」

「…あなたが何故そこまで憎悪の感情を持っているのかは知らないし興味もない。だけど立ち上がり武器を持ちなおかつ闘志、戦意がある以上覚悟はあるのだろうな?」

彼女は右手に持った機関銃を折紙へと向ける。自動小銃の攻撃だけで満身創痍になっている現状で機関銃の攻撃を受ければ折紙の体は確実に肉塊に変貌するだろう。

「折紙!え、【SS】さん、止めてくれ!」

士道は彼女の攻撃を止めようと声を上げるが彼女の瞳は折紙へと向けられたまま固定されていた。

「くっ!なら!」

士道は震える足を無理やり動かし折紙の前に出ると手を広げ隠すように立つ。

「士道!?」

「…何の真似だ、五河士道。邪魔をするなら貴様も敵だ」

「頼む!これ以上誰かを殺すのは止めてくれ!もう、俺の目の前で人が傷つく姿なんて…!」

士道は機関銃の銃口を向けられている事による死の恐怖を無理やり抑え込み彼女へと叫ぶ。士道の心からの叫びであった。しかし、それは彼女の前では全く意味をなさなかった。

「…くだらない。今こうして相対するだけで膝を震わす貴様が何を言った所でこの現状では弱者の戯言でしかない。最後通告だ、五河士道。そこをどけ」

「…それは、出来ない!」

目の前の彼女から放たれる強烈な殺気。それだけ人の心臓を止めれるであろう殺気を真正面からうけても士道の返答は全く変わらなかった。本来それは士道の美徳なのであろうがこの場ではあまり意味がなかった。

「そうか…。ならば死ね」

彼女は士道の返答を聞くと何の抵抗もなく引き金を引いた。MG42という第二次世界大戦を代表する機関銃の本来の威力と彼女の天使による強化が施されたその弾丸はまさに一発一発が人の命を簡単に奪い人を肉塊へと変える力を有していた。

必殺の弾丸は士道の予測を超えあっという間に迫ってくる。自らの体で後ろにいる折紙が何処まで防げるかは分からない。折紙も士道を助けようと随意領域(テリトリー)を発生させるが彼女のCR-ユニットの随意領域(テリトリー)で防げる力などたかが知れていた。

直ぐに襲いかかって来るであろう痛みを想像し士道は目を瞑る。

しかし、それは

突然遮るように現れた熱風でかき消された。

「え…?」

「なっ!?」

「…」

士道は襲いかかって来ない痛みに疑問を持ち全てを見ていた折紙は驚きの声を上げ弾丸を呆気なく消された彼女は不快そうに眉を顰め上空を見る。

そこには、

「間に合った様ね」

天女の如き衣服を羽織り

「少しだけ力を返してもらうわよ士道」

炎を纏った

「焦がせ〈灼爛殲鬼(カマエル)〉!」

五河士道の妹、五河琴里の姿があった。

「さあ、私たちの戦争(デート)を始めましょう」









天宮市とは別の場所、暗い空間に彼らはいた。

「時は近い」

「我らの悲願はもうすぐ果たされよう」

「だがまだ不確定要素がある。それはどうする?」

「決まっている。いつも通りさ」

「そう、我らの前に立ちふさがる者には死を与えるだけだ」

「さあ、諸君。最後の仕上げを行おうじゃないか」

それを最後にこの空間からは声が完全に消えた。
 
 

 
後書き
琴里ちゃん漸く登場 
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