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デート・ア・ライブ~Hakenkreuz~

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第十話「ホロコースト・Ⅱ」

最初のターゲット(犠牲者)となったのは真那であった。彼女の視界の中で最も近くにいた、という程度の理由だが選ばれた方からすれば理不尽とすら言えるだろう。

彼女は右腕に持ったMG42を真那に向け発砲した。先程ナイトメアに向け放った物と同じ弾丸。しかし、それは不気味に赤く光る弾丸に変貌していた。

「くっ!」

真那はとっさの事で右に回避する。運よく弾丸は一発もかすりもせずに真那の右わきを通り過ぎていく。しかし、通り過ぎた弾丸は勢いを殺すことなく、まるで何かに弾かれたように角度を変えて真那を後ろから狙う。

「っ!危ない!」

咄嗟に気付いた折紙が真那を押す事でそれも回避するが弾丸は見えない壁に当たったように角度を大きく変える。今度は弾丸がそれぞれ別の方向に跳ねる事で先ほど以上に回避を難しくしていた。

「はぁぁっ!」

視線が真那と折紙に向いている隙に死角から十香が攻撃を行う。両手で持った鏖殺公(サンダルフォン)を振り下ろす。しかし、彼女はそれを左腕に持ったトンファーで受け流す事でダメージを最小限に抑える。そして渾身の力を入れて振り下ろした十香は受け流されたことで姿勢を崩してしまう。

「ふっ!」

「あぐっ!?」

彼女は反撃と言わんばかりに受け流した動作を利用し十香の顔に回しげりを食らわせる。無防備となっている十香は何も出来ずその顔面に彼女の靴をめり込ませ屋上の端へと吹き飛ばされてしまう。更に鏖殺公(サンダルフォン)を途中で離してしまったため彼女の手を離れ遠くの方へと落ちて行った。

「十香!」

「これはこれは、まさかここまでとは思いませんでしたわ」

意識を失い倒れる十香を見て士道は叫ぶ。その隣では予想していなかった彼女の本気を見て逃げる算段をしている狂三の姿があった。

「(今この場で彼女の相手をしてもよろしいですがそれによってどれ程の被害が出るのか分からない以上この場は退いた方がよろしいですわね)…さて、士道さん。本日はここでお暇させていただきますわ」

「狂三!?何を…」

「本当なら貴方を喰べたかったのですが彼女が暴れていては私も危ないのでまた後日にさせていただきますわ」

「させると思うのか?」

狂三は一瞬で後方に下がる。瞬間狂三がいた場所をいくつもの爆発が発生する。その原因である彼女の方を見れば狂三の方に銃口を向ける姿があった。

「あら、真那さんや折紙さんの相手はしなくていいのですか?」

「あのコバエ共ならとっくに潰した」

彼女の言う通り二人は肩を寄り添って屋上の入り口で倒れている。どうやら十香の一連の動きの間に無力化したようだ。

「折紙!?真那!」

「…さて、残るはナイトメア、お前だけだな」

「ふふ、士道さんは数に居れていないのですね」

「当たり前だろ。武器を持たない、戦意もなくただ戦闘の邪魔にしかならない存在を数に入れる訳がないだろ」

彼女の辛辣な言葉に士道は俯く。彼女の言う通りこの場において最も戦力を有しておらず身を守る事も出来ないと理解していたからだ。士道のその様子を気にも留めず彼女は空間からある物を取り出した。

「光栄に思え、ナイトメア。貴様にはこれで止めを刺してやるよ」

彼女が取り出した物はナチスドイツが誇る高射砲、アハトアハトであった。到底人が持てるような大きさでも重量でもないが彼女はまるで小銃を構える時と同じように持ち、重さなど感じていないかのようにしている。

「準備は出来たか?まあ、準備が出来てなくても構わないがな」

彼女はそう言うと共に狂三へと弾丸が放たれる。MG42やラインメタルよりも巨大で手榴弾より威力のある弾丸はその射程距離の短さもあり呆気なく狂三の元に到着した。狂三は一瞬にして胴体が消し飛ぶと同時に弾丸の爆発の中へとかき消えていった。当たった瞬間の事も考えれば即死であろう。

「狂三ぃっ!」

狂三の呆気ない死に士道は声を上げるが狂三、ナイトメアの事をこの中では本人の次に知っている彼女は警戒することなくアハトアハトの代わりに機関銃を構えている。

「…お見事ですわ。あと少し早ければ私は死んでしまうところでしたわ」

「やはり、生きてたか」

「く、狂三?」

狂三が最後に立っていた場所。そこから少し後方から黒い影が現れ先ほど死んだはずの狂三が現れる。彼女は仕留め損なった事を薄々感じながら機関銃を構え士道はなぜ生きているのか分からず呆然とする。

「全く、貴方が本気の時に戦いたくはありませんわね。私が何十人いても足りないですわ。そうでしょ?私たち?」

狂三がそう言うと彼女と士道を囲むようにたくさんの狂三が現れる。

「な、なんだよこれ…」

「これらはあらゆる時間軸の私たちですわ」

大量に現れた狂三は本体を守るように配置しつつ全方向を囲むようにいた。彼女は首を回し軽く確認すると改めて本体の狂三を見る。狂三の瞳には既に戦意の意志はないが自分の邪魔をした彼女に不満はあるようで軽く睨んでいた。

「さて、私はこの辺でお暇させていただきますわ。流石にこれ以上暴れるのは危険ですので」

「逃がすと思っているのか?」

「きヒヒヒ!そのための私たちですわ!」

狂三がそう言うと分身体全てが短筒を向けてくる。確かに彼女と言えどこの数をまともに相手するのはきつい。自然と分身体の相手をせざるをおえなくなっていた。

「ナイトメアッ!」

「ふふ、それではごきげんよう。今日はそれなりに楽しかったですわ」

狂三はそう言うと自分の影の中に消えていくのであった。
 
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