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ある晴れた日に

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618部分:やがて来る自由の日その八


やがて来る自由の日その八

「そうしたものだと思ってたけれど」
「実際は違うのですね」
「現実だと」
 江夏先生はその現実に即して考えてみた。
「政治家は選挙に落ちれば」
「それで終わりですね」
「それに政敵も多いし案外そういったことは」
「できませんね」
「スキャンダルが出ればそれで終わりよ」
 政治家の世界はその通りである。身内の不祥事はそのまま自身のダメージになる。この辺りはシビアであり非常に不安定な地位なのだ。
「それだけでね」
「国会議員でも県会議員でも」
「同じなのよね。政治家だと」
「そういえば政治家の人は大抵」
「例外もいるけれどおおむね腰が低いわ」
「そうですよね」
 これにも理由があるのである。
「だって偉そうだとそれだけで」
「評判が悪くなって」
「そのままイメージダウンになるわ。結局は同じよ」
「そういうことですね」
「そして大企業のトップは」
 次はそれについて話される。
「企業の不祥事になりかねないし」
「それに身内のそれは」
「社内での失脚に直結するわ」
「ですよね」
「それに会社なんて」
 江夏先生は世の中のことがかなりわかっていると言えた。そういった意味でこの先生は少なくとも日教組の世間知らずの連中とは違っていた。
「栄枯盛衰があるじゃない」
「問題が起こった会社は」
「終わりよ」
 この世界もそうなのである。
「それだけでね」
「ですよね。それも」
「だから大企業のトップもね」
「力に限りがありますね」
「そういうことよ」
「ええ」
 田淵先生は彼等についても納得したのであった。
 そして最後は。マスコミに最も嫌われている存在の話だった。
「キャリア官僚にしても」
「それがライバルに付け込まれて」
「終わりよ。あの世界もね」
「そういった意味では政治家や大企業と同じですね」
「そうよ。何処もそうなのよ」
 江夏先生は言うのだった。
「お医者さんの世界でもね」
「身内の悪事を揉み消すには」
「多少はできてもね。限度があるわ」
「ああしたことは」
「まずできないわ」
 その吉見への言葉であった。
「絶対にね」
「ええ、それは」
「自分に跳ね返ってくるししかもそれを敵に嗅ぎ付けられる」
「だからこそできない」
「それに」
 江夏先生の言葉はさらに続く。
「普通の人は自分の子供がそうしたことをしないように」
「躾けますよね」
「当然よ。自分の跡を継ぐのよ」
「はい」
「そういった躾はするわ」
 このこともわかっているのだった。
「まず絶対にね」
「けれどそれをせずに済んで」
「そして悪事を揉み消せるのは」
「ああした人達だったのね」
 実に忌々しげに話す江夏先生だった。
 
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