Back door night
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第二章
「だからある程度知ってるさ」
「そうなのね」
「だから言うんだよ」
「扉を開けたら妖怪がいたりとか」
「あるかもな」
「じゃあ若しかして」
私はあえてだ、彼氏に話した。
「私がこのお部屋の扉を開けたら」
「そうしたらな」
私は扉の方を見ているけれど彼氏はずっとゲームをしている、見ていると随分上手にプレイを進めている。
「いるかもな」
「縁起じゃないわね」
「ゾンビとかな」
「ゾンビは駄目でしょ」
「ああ、襲われたらゾンビになるからな」
ゲームではいつもそうだ、それか食べられるかだ。
「よくないな、けれどゾンビゲームでもな」
「扉を開けたらっていうのは定番ね」
「そうだろ、まあとにかく扉一枚その向こうはな」
「開けてそこに入れば」
「それまでいた世界から出てな」
「別の世界に入って」
「それで別の何かがいるんだよ」
その扉の向こうにというのだ。
「そうなるんだよ」
「成程ね」
「ああ、まあそんなことはな」
まさにというのだ、そしてだった。
私もゲームをしてその後はもう二人共シャワーを浴びてご飯を食べていたので気楽にだった。この日は二人で一緒のベッドに寝た。
次の日は翌日は二人共休日なので遅くまで飲みながらゲームをしていた、その時に彼氏は私に言ってきた。
「お酒あるか?」
「ああ、もうないわね」
気付けばなくなっていた、買い込んでいたワインも二人でチーズやハムと一緒に飲んでいたらもうなかった。
「全部空けたわ」
「そうか」
「それでどうするの?」
「買いに行くか」
これが彼の返事だった。
「近くのコンビニまで」
「ワインにするの?」
「今日飲んでるのはワインだからな」
それでとだ、彼氏は私に言ってきた。
「だからな」
「ワイン買いに行くのね」
「そうするか」
こう言いつつだ、彼はゲームを中断した、そのうえで私にまた言ってきた。
「じゃあな」
「いまからね」
「買いに行くか、おつまみまだあるか?」
「クラッカーあるわよ、チーズも」
見ればこの二つがまだあった。
「二人分はね」
「じゃあワイン買いに行くか」
近くのコンビニまでというのだ。
「一人一本位でいいか」
「そうね、じゃあね」
「行こうな」
「ええ、じゃあね」
二人共ラフな何の色気のないジャージ姿でもだ、真夜中だし構わないと思ってだった。彼氏はいつも私が一人で夜出ると危ないと言うのでこの日も二人で外に出ることにした。そうしてお部屋の玄関の扉を開ける時にだ。
ふとだ、私は昨日の夜の彼との会話を思い出してその彼に言った。
「ねえ、扉を開けたら」
「昨日の話だとな」
「もうね」
「外はな」
「別の世界でね」
「妖怪がいるのかしら」
「真夜中だしな」
すっかり酔っている顔でだ、彼は私に笑って言ってきた。
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