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デート・ア・ライブ~Hakenkreuz~

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第三話「対話」

「SS marschiert in Feindesland
Und singt ein Teufelstlied
Ein schütze steht am Oderstland
Und leise summt er mit
Wir pfeifen auf Unten und oben
Und uns kann die ganze Welt
Verfluchen oder auch loben
Grad wie es ihr wohl gefällt
Refrain
Refrain
Wo wir sind da ist immer vorwärts
Und der Teufel der lacht nur dazu
Ha ha ha ha ha ha!
Wir kämpfen für Deutschland
Wir kämpfen für Hitler
Der Gegner kommt niemals zur Ruh'」

アリーナの中に入った精霊、識別名【SS】と呼ばれる彼女はその識別名通りの歌を歌いあげる。歌っている内容さえ気にしなければ誰もがウットリと耳を書向けるほどの美声であったが残念な事に彼女の歌を聞いている者はいなかった。尤も、彼女にとってそんな事は些細な事でしかなかったが。

「ふふ、やっぱり自由に動くからだと言うのは素晴らしい物ですね」

アリーナの中央にてクルクルと周る彼女は思い通りに動く体に恍惚とした表情を浮かべる。暫くそうしていたがやがて軍靴の音を響かせ回り終えた彼女はある一点を見つめる。その眼には先ほどASTを退けた時の様な冷たい目をしていた。

「さて、いつまでそこにいるつもりかは知りませんがのぞき見されるような趣味はありません。5秒以内に出てきてください。出て来なければ吹き飛ばします。5、4「わ、分かった!出るから待ってくれ!」最初からそうすればいい物を」

小銃、Kar98kを向け数え始めると情けない声と共に一人の少年が飛び出してくる。彼女は詰まらなそうに呟くと足を踏み込み一瞬で少年の所まで跳躍する。少年、五河士道の目の前に立った彼女は右手に持った小銃ではなく左手にいつの間にか持っていたワルサーP38を五河士道の額に当てる。鉄の冷たさと引き金を引くだけで殺せる武器が自分の額に突き付けられているため五河士道の顔は真っ青になっている。

「さて、一体何の様ですか?私はこう見えて忙しいのですよ」

「そ、それは…っ!」

五河士道は両手を上げ無抵抗の意志を示しながら必死に言葉を伝えようとするが銃が突き付けられた状態では上手く話せないのかしどろもどろになっている。

「…き、君と話がしたいんだ」

「…話?私は赤の他人と話す事など何もありませんが?そもそも貴方は誰ですか?」

五河士道の言葉が気に入らなかったのかワルサーを握る手に力が入り額に少しめり込む。その様子を見て青を通り越して白くなりつつある五河士道は更に話を続ける。

「お、俺は五河士道。精霊である君と話がしたいんだ」

「…へぇ」

彼女は五河士道の言葉に目を細める。しかし、先程の様に苛立ちを感じていないのか突き付けていたワルサーをホルスターに戻す。漸く解放された士道は両手を降ろし安堵の息を吐いた。そして士道は気を取り直して彼女の方を見て口を開いた。

「あ、あの「お話をする前に幾つか質問があります」な、なんだ?」

「まずその1。何故精霊の存在を知っているのですか?一般人は普通存在そのものを知らないはずですよね?その恰好を見る限りいつも飛んでくるコバエ共ではないようですし」

「そ、それは…。俺はラタトスクという組織に所属している。そこでは精霊の保護を目的にして活動している」

「成程。ではあのコバエとは別の組織、それも敵対していると考えてよろしいのですか?」

「敵対している訳ではないけど、味方ではないな」

「…質問その2、の前に新たに出来た3の方から聞きますか。保護と言ってましたがどうやって保護をするので?まさか霊力が観測されていることを知って言いますよね?」

「あ、ああ。俺にはある力があるんだ。その力は精霊の霊力を封印できる。封印すれば霊力は観測されないから精霊は普通の人間として生活できる」

「…」

士道の言葉に彼女は何かを考え込むように顎に手を当てる。少しして考えがまとまったのか士道の方を見る。吸血鬼の如き真っ赤な瞳が士道を射抜く。

「大体理解はしましたがそう言う事ならお引き取り願います。私は霊力を封印されるなんて真っ平ごめんですので」

「でもそれじゃ現れる度にASTに…」

「そのASTというのがあのコバエの事ならご心配なく。あの程度物の数ではありません。私を倒したいなら精霊を殺せる実力者を連れて来ない限りね」

士道はここに来る前にASTを蹴散らした姿を見ているため言葉に詰まる。しかし、

「でもそれじゃ毎回ASTと戦闘になるだろ!何でお互いに争わなけばいけないんだ!話し合いで解決だって…」

「…ふ、ふふ」

士道の叫びに彼女は何が面白かったのか口から噴き出す。そして、

「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!」

アリーナに響き渡る大笑いを上げる。よっぽど可笑しかったのかお腹を抱えもう片方のてを顔に当てている。

「な、何が可笑しいんだ!」

「ふふ、ヒヒ…ふぅ。五河士道と言ったけ?いやぁ、君には笑わせられたよ。久しぶりにこんなに笑った」

彼女は息を整え目じりに溜まった涙をぬぐうと絶対零度の如き冷たい視線を士道に向ける。向けられた士道は一瞬で体中から熱を奪われたような感覚に襲われた。

「対話で解決できるなら既にそれが成されているよイエローモンキー。大体人間とは臆病な生物だ。自分とは違う、ただそれだけで迫害し差別する。それが人間ではないならなおさら、ね。人間という社会は人の姿をしながら世界を滅ぼせる力を持った私たちを決して受け入れない。その力が自分たちに向いたら、と考えるから。そして既に無意識、意図的ではないとは言え既に害が実際に出ている。例え封印し保護したとしてもそれは一時的に過ぎない。必ず殺そうとする者が現れるはずだ。その時、君は今と同じことを言えるかな?」

彼女の言葉に士道はただ黙る事しか出来なかった。
 
 

 
後書き
二時前にもう一話投稿します。 
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