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ある晴れた日に

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576部分:鬼め悪魔めその十二


鬼め悪魔めその十二

「全くよ」
「そうね。言われてみれば」
「確かにね」
「ちっ、変な店に紛れ込んだぜ」
 遂にはうんざりとした口調になっていた。
「全くよ」
「それはそうとしてだけれど」
 恵美が彼のその愚痴に水を入れてきた。
「注文は?」
「注文?」
「そうよ。喫茶店に入ったのよ」
 このことを言うのだった。
「喫茶店に。飲み物?それとも食べ物?」
「飲み物な」
 それを貰うというのだった。
「コーヒー二つな」
「二つね」
「アメリカンを頼むな」
「わかったわ」
「それで坪本」
 明日夢がくすりと笑いながら彼女に言ってきた。
「一つ聞きたいんだけれど」
「言いたいことはわかってるさ」
 坪本は少しうんざりとした顔で言葉を返した。そうしながら二人とは少し離れたカウンターの席に着いた。そこに彼女も一緒であった。
「加住のことだろ」
「加住さんっていうの」
「そうだよ」
 彼女だというのだ。
「中学の頃からのな」
「そういえば彼女いたって言っていたわね」
「その通りだよ。隠すつもりはなかったけれどな」
「そうね。はい」
「ああ、悪いな」
 ここで恵美がその二人にコーヒーを出してきた。二人はそれを受けるのだった。
「それじゃあ頂くな」
「頼むな。それでな」
「今度は何かしら」
「別に何も聞かないんだな」 
 あらためて二人に問うた坪本だった。
「絶対に突っ込まれるって思ったんだけれどな」
「突っ込んで欲しいの?」
「そうして欲しいの」
「いや、それはいいけれどな」
 実はそうはして欲しくない彼であった。しかしそれでもなのだった。
「まあそれでもな」
「何なの?それで」
「言いたいことあるみたいね」
「可愛いだろ」
 その彼女を指し示しての言葉だった。
「こいつよ。可愛いだろ」
「ああ、彼女自慢ね」
「それをしたかったの」
「いや、そうじゃねえけれどな」
 そうではないと否定しても顔は笑っている坪本だった。それが何よりの証拠であった。
「別にな」
「あんたの彼女には勿体ないわ」
 明日夢はその彼にこう告げたのだった。
「本当にね」
「おい、言うにこと欠いてそれかよ」
「言ってあげたけれど気に障ったかしら」
「幾ら何でもそれはねえだろ」
 こう返すのだった。
「本当によ。俺にぴったりとかそういうのはねえのかよ」
「全然」
 この辺りはあえてであった。
「思いもつかなかったわ、そんな言葉」
「ちっ、北乃に聞いたのが間違いだったよ」
「私だったらよかったのかしら」
「御前もいいからな」
 恵美に対してもうんざりとした顔で返す。
「別にな」
「そうなの」
「何言われるかわかったものじゃねえ」
 それはもう本能的に察しているのだった。
「この店に入ったのが運の尽きだったぜ」
「あのね」
 ここでその加住が笑いながら言ってきたのだった。
 
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