ある晴れた日に
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574部分:鬼め悪魔めその十
鬼め悪魔めその十
「あまり感情を表には出さないじゃない」
「まあな」
「その喋り方はな」
「だけれどね。内面はね」
彼はそこまでも見ているのだった。
「かなり激しいから」
「そんなにか」
野本は今の彼等に目をやった。
「あいつ、それは」
「うん、僕はそう見ているけれどね」
「そうだね」
桐生がここでまた竹山の言葉に頷いた。
「だから余計にね。見せない方がいいよ」
「だから言わない方がいいね」
「そうだよ。絶対にね」
竹山は再度一同に告げた。
「止めるべきだね」
「知ったら何するかわからない」
「だからこそ」
「何も言わない方がいいか」
皆ここで結論を出したのだった。
「今は」
「とりあえずは」
「音橋君には竹林さんに専念してもらおう」
竹山はその結論をあらためて述べた。
「それでいいね」
「ああ、それじゃあな」
「そうしましょう」
皆これで決めた。ここで牧村が教室に入って来た。それを気に皆別れた。
その日の放課後だった。明日夢は皆と一緒に未晴を見舞った後で共にいた恵美の見せのブルーライオンに入った。そこのカウンターに座り彼女に言うのだった。
「ねえ」
「どうしたの?」
「今朝の話だけれど」
その親子の話である。目の前に置かれている紅茶にはまだ手をつけずそのまま彼女に対して告げているのだった。
「あれだけれどね」
「あの話ね」
「ええ、それよ」
あらためて恵美に話したのだった。
「それだけれど」
「まず音橋には言わないことね」
「そうね」
恵美の言葉に静かに頷いた。二人共制服姿のままである。ただ恵美はその上にエプロンを着けている。その上でカウンターにいるのである。
「それはわかってるわ」
「わかってるけれどっていうのね」
「どうしたらいいのかしらね」
今明日夢は右手で肘をついて考える顔になっていた。
「その吉見って奴はどうにかしないと駄目だけれど」
「けれど私達じゃ難しいわ」
「難しいっていうのね」
「ええ」
このことをまた言う恵美だった。
「それはね。難しいわ」
「元を何とかしないとまた未晴と同じ娘が出て来るんでしょ?」
「既にもう出ているのかもね」
その可能性について言及した恵美だった。
「今にもね」
「だったら余計に何とかしないと」
「いえ、それでもよ」
声がうわずりかけた明日夢にすぐに返したのだった。
「慎重に行かないと」
「・・・・・・そうだったわね」
その恵美に言われて冷静さを取り戻したのだった。
「迂闊に動いたらそれで」
「どうにかなるのは私達の方よ」
危険があるというのだった。
「だからね」
「どうにもならないのね、今は」
「少なくともあの親子の方はね」
まさにそうだというのだった。
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