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ある晴れた日に

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57部分:穏やかな夜にはその六


穏やかな夜にはその六

「結構以上にな」
「ミルク。多めにしたの」
「そうなのか」
「落ち着くでしょ。飲んでると」
「まあな」
 その紅茶を飲みながらまた応える。
「飲んだだけでな」
「それ飲んでまた食べて」
「ああ」
 未晴の言葉に大人しく頷く。
「わかったぜ」
「この馬鹿が急に大人しくなるなんて」 
 凛はこのことも驚きの顔を見せている。
「嘘みたいね」
「全く」
「流石未晴っていうか」
 クラスの皆が褒めるのは未晴に対してであった。
「そういうところはやっぱりね」
「頼りになるっていうかね」
「そんな。私はただ」
「謙遜は無用よ」
 明日夢がにこりと笑ってその未晴に告げる。
「本当のことだからね」
「そうなの」
「確かにさ」
 見れば明日夢もそのロイヤルミルクティーを飲んでいる。これは彼女が自分で自分に対して入れたものである。他の皆もそうやって飲みだしている。
「この紅茶美味しいね」
「ミルクもね」
「ミルクまであっためておいたなんてやるじゃない」
「気配り上手よね」
「いつもそうしてるから」
 やはりここでも慎み深い未晴であった。
「だから。それで」
「それでこそ未晴だけれどね」
 咲がそんな未晴ににこりと笑って告げる。
「いざっていう時はね。やっぱり未晴よ」
「そうそう」
 奈々瀬がにこりと笑って頷く。
「おかげで場が和んだし」
「ところでね」
 話が収まったところで恵美が皆に言ってきた。
「まだキャンプファイアーじゃないけれどね」
「それは明日よ」
 皆が恵美に対して言う。
「キャンプファイアーはね」
「それでも何かあるの」
「ええ。音橋」
「俺か」
「何かあるかしら」
 正道に顔を向けて問うてきたのである。
「いい曲が。今ある?」
「オリジナルじゃなきゃ駄目か?」
「いえ」
 正道の問いには首を横に振って答える恵美だった。
「別にそれはこだわらないわ」
「つまりあれか。俺に夕食のBGMをやって欲しいってわけか」
「悪いけれどね。あんたさえよかったら」
「そうだな」
 それを聞いて考えに入る正道だった。勿論いつも通りその背にはギターがある。学校でもここでも何時でも肌身離さずというわけなのだ。
「じゃあ何か奏でるか」
「どんな曲なの?」
「カレーだけれど」
「カレーなら。そうだな」
 皆に問われてからまたギターを手に取った。
「この曲じゃねえのか?」
「あれっ、この曲って」
「これって」
 皆正道がギターで奏ではじめたその曲を聴いて言うのだった。
「聴き慣れない曲だな」
「オリジナルか?」
「そうさ。俺が中二の時に作った曲さ」
 正道はその曲を奏でながら皆に言葉を返した。
「題名はカレーの王様」
「カレーの王様!?」
「随分変なタイトルだな」
「タイトルは適当につけたんだよ」
 こう答える正道だった。
「曲だけ作ってタイトルと歌詞はそれからやったんだよ」
「作詞作曲が御前か」
「また随分と滅茶苦茶だな」
「あん!?俺は普通にやってるぜ」
 皆のからかいの言葉に対して平気に返す。
「俺の曲に俺が詞をつけるのはな」
「っていうかあんた作詞できたの」
「それ凄い信じられないんだけれど」
「作曲だけでも信じられないんだけれどな」
 皆あからさまに随分と突っ込んできた。
「タイトルまでなんてな」
「しかしまあ」
 皆の言葉はまだ続く。
「無茶苦茶なタイトルだよな」
「何考えてそんなタイトルにしたのよ」
「だから適当なんだよ」
 少なくともやる気というものがあまり感じられないタイトルなのは確かだった。あからさまにカレールーの商品名から取ったものがわかるものだった。
 
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