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ある晴れた日に

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558部分:もう道化師じゃないその九


もう道化師じゃないその九

「ここに。ずっといる」
「未晴が動くまでね」
「その為には何でもする」
 五人に返す言葉は不変のものだった。
「出来る以上のことでもだ」
「わかったわよ。じゃあ」
「やってやるわよ」
「俺達もな」
 それは彼等周りの面々も同じであった。
「やってやるか」
「未晴の笑顔がまた見られるようにね」
「じゃあまた明日ね」
 千佳があらためて決意を定めた皆に告げた。
「ここに来ましょう」
「ああ、またな」
「来るか」
 こう言ってであった。話は決まった。明日またここに来ることにしたのである。
 実際に次の日も来た。そして未晴を見舞った。だがその帰りだった。正道だけ残して病院を出る彼等だったがその中で竹山がふと言ったのである。
「おかしいね」
「おかしいって?」
「何がなんだ?」
「竹林さんのことだよ」
 未晴がおかしいというのである。
「音橋君が毎日あれだけギターを奏でて歌ってるじゃない」
「ああ、それでか」
「それでなのね」
「うん、それでも反応が全然ないじゃない」
 また皆に話した。
「相当な心の傷だよね」
「そりゃまあ当然でしょ」
「それはね」
 五人がここで彼に言ってきた。
「酷い目に遭ったんでしょう?だったら」
「ああなっても」
「監禁されていたみたいだけれど」
 竹山は今度はこのことを話した。
「丁度噂になってるじゃない」
「ああ、あれな」
「あの話だな」
 皆もその話に応えて顔を彼に向けた。
「最近女の子がさらわれて」
「何処かで虐待されて街に捨てられてるっていう」
「そういう話よね」
「それじゃないかな」
 こう言う竹山だった。
「竹林さんも」
「ちょっと待ってよ」
 静華は今の彼の言葉で普段は能天気そのものの目を厳しいものにさせてきた。そのうえで彼に対して言葉を返すのであった。
「じゃあ何よ。未晴もそれに遭って」
「うん」
「ああなって。やった奴は今も平気な顔で街を歩いてるってこと?」
「そうかも知れないね」
 その可能性を否定しない彼だった。
「若しかしたら」
「冗談じゃないわよ、そんなの」
 何時になく険しい顔と声になっている静華だった。
「未晴にそんなことした奴が本当にいるなんて」
「けれどさ、あれよ」
 凛が眉を顰めさせてその静華に言ってきた。
「未晴のあれって。見てもそうだし聞いても」
「間違いなく誰かにやられたよな」
「そうだな」
 佐々の言葉に野茂が頷く。
「交通事故とかそういうのじゃなくてな」
「虐待されてだな」
 皆それは否定できなかった。
「じゃなきゃああはな」
「絶対にならないな」
「そうね」
 咲は唇を噛んで二人の言葉に頷いていた。
「それは。間違いないな」
「相手、誰なんだよ」
 春華の言葉はいつも以上に荒れていた。
 
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