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ある晴れた日に

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530部分:空に星は輝いているがその十七


空に星は輝いているがその十七

「だから。毎日音楽をあの娘に聴かせてくれているの」
「それでだったのか」
「あいつそれで最近」
「彼は本気よ」
 このことも話す晴美だった。
「本気でそれをしているから」
「そうですか。本気なんですか」
「あいつも」
「私も。信じたいから」
 絶望の中でも、という今の晴美の言葉であった。
「あの娘がまた心を取り戻してくれるって」
「未晴・・・・・・」
「そうよ、心は」
 五人は顔を蒼白にさせ完全に顔を下に向けながら呟いた。
「身体は大丈夫だったら」
「壊れた心さえ元に戻ったら」
「だからなのよ」
 また言う晴美だった。
「彼はね。毎日来てくれてるのよ」
「それを知ってるのは」
「病院の人以外は私達だけよ」
 晴美はまた明日夢の問いに答えた。
「家族でも。私だけなのよ。それを知ってるのは」
「そうなんですか」
「お母さんだけですか」
「あとは先生達だけ」
 ここで晴美はまた言った。
「顔を見合わせたことはなかったけれど」
「そういえば」
 恵美が気付いたのだった。
「江夏先生はこの病院の名前を出す時に表情が一瞬変わったわね」
「あっ、確かに」
「それは」
 皆今の彼女の言葉にはっとなった。
「今思ったらそれって」
「やっぱりそうだったんだな」
「未晴のことだったのね」
 恵美はあらためて言った。
「あの娘が入院していることを知っていたから」
「それで音橋のことも」
「知ってるから」
「田淵先生は言わなかったし顔には出さなかったけれど」
 田淵先生はというのだった。
「それでもね。江夏先生はそれで」
「そういうことなの」
「だから本当に」
「それで私達も」
「それで」
 皆ここでまた言葉を交えさせることになった。
「未晴のこと知ってしまったし」
「音橋のことも」
「貴女達にもとても言えなかったの」
 晴美はまた五人に対して言ってきた。
「話が話しだから。とても」
「ええ、それは」
「わかります」
 それは何故かわからない程五人もものがわからないわけではなかった。むしろわかり過ぎている程わかることだった。痛いまでにだった。
「未晴にそんなことがあったなんて」
「とても」
「それでだけれどよ」
 ここで言ったのは野本だった。
「どうするよ、俺達」
「どうするって?」
「どういうことなんだよ、それ」
「だからどうするんだよ、これから」
 言葉を一つ付け加えてきた。
「これからどうすればいいんだよ、竹林のこと知っちまってよ」
「それにあいつのこともよね」
「音橋のことも」
 それもだというのである。
 
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