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ある晴れた日に

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528部分:空に星は輝いているがその十五


空に星は輝いているがその十五

「だから。幼稚園の頃からずっと一緒で」
「はっきり言うけれど親友同士なんての超えてるのよ。それなのによ」
「いや、そう言われるとよ」
「こっちもな。ちょっとな」
 坂上と坪本は顔を見合わせていた。
「俺達だって」
「わからねえよ」
「複雑な事情があるみたいね」
 千佳が言った。
「よくわからないけれど」
「何かあるんじゃないかなって薄々思っていたよ」
 言ったのは加山だった。
「けれど。それでも」
「どういった事情があるのか」
「全然わからないのが」
「それでどうするの?」
 恵美は今ここにいる全員に問うた。
「それで」
「それでって」
「どうするかって」
「中に入の。それともどうするの」
 再び問うてきたのだった。
「それでだけれど」
「ええと、中には未晴がいて」
「あいつもいるんだよな」
「二人が」
「けれど未晴は」
 そしてこのことを思わずにはいられなかった。未晴のことをである。
「どうなってるかわからない」
「そうよね」
「入るの?」
 恵美はまた皆に問うた。
「これから」
「それは」
「どうしよう」
「入る?どうする?」
「ええと」 
 誰もがどうしても決断を下せなかった。しかしであった。
 扉が開いたのだ。その未晴がいる扉がだ。
「!?」
「誰!?」
 皆扉が開いてビクリ、となった。とても動けなくなった。そうしてだった。
 そこから出て来たのは正道ではなかった。その人は。
「えっ、貴女達は」
「お母さん!?」
「嘘・・・・・・」
 未晴の母である晴美だった。彼女だった。
「どうしてここに」
「それは・・・・・・」
「その・・・・・・」
「自動販売機のところに行きましょう」
 晴美は咄嗟に正道の時と同じ決断を下したのだった。
「いいわね」
「はっ、はい」
「わかりました」
「それじゃあ」
 晴美は後ろ手で扉を閉めた。中に入れようとしないのは明らかだった。
 そのうえで、であった。彼等を隔離病棟の近くにある自動販売機の前に連れて行った。そうしてそこで事情を話したのだった。これも正道の時と同じだった。
 皆その話を聞いて唖然となっていた。とりわけ五人はである。
「嘘よ、そんなの」
「未晴が。そんな」
「いや、これは」
「嘘じゃないぜ」
「間違いないな」
 男組が信じようとしない五人に対して述べてきた。
「それはわかるだろ?」
「嘘でこんなこと言うかよ」
「そうだろ?」
「それは」
「そうだけれど」
 五人にしてもわかっていることだった。だから彼等の今の言葉を否定することはできなかった。それはとても無理なことであった。
「夏休みにそんなことがあったなんて」
「それで今も」
「御免なさい」
 晴美はここで彼女達に謝ってきた。
 
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