ある晴れた日に
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524部分:空に星は輝いているがその十一
空に星は輝いているがその十一
「さっきマップ覚えたけれどね」
「それだとこっちでいいのかよ」
「北乃の言った方で」
「うん、いいよ」
いいよというのだった。彼は。
「こっちでね」
「じゃあ行くか」
「そっちに」
皆で行くのであった。そうするとだった。
扉があった。その前に立つと彼等は一旦隠れることにしたのだった。
「あいつ何時来るかわからないから」
「今のうちに隠れて」
「何処に隠れる?」
とりあえず周りを見回す。するとだった。
丁度扉の右手に階段があるのがわかった。その物陰に隠れることにしたのだった。
「こっちがいいよな」
「そうね。階段の下に隠れて」
「それだったら」
こうして少し急いで階段の下に隠れるのだった。そのうえで正道が来るのを待つ。暗い場所から明るい場所を見る形になっていた。
そのうえで待っていると暫くしてだった。裏手のその扉が開いたのだった。
「来たな」
「そうね」
「やっとか」
皆ごくりと息を飲む。そうして病院に入って来たのは。
背中にギターケースを背負っている。それだけでわかった。
「よし、あいつだ」
「間違いない」
「それだったら」
皆で言い合う。階段の下から出て。彼の行く先を見るのだった。
「左ね」
「ああ」
「そっちだな」
口々に言い合う。そしてそっとついて行く。
彼が行く先を見て竹山は。いぶかしむ声で呟いた。
「あれっ、こっちは」
「んっ、竹山」
「どうかしたの?」
「確か」
頭の中でマップを思い出す。そうして出て来た答えは。
「隔離病棟だよ」
「隔離病棟!?」
「っていうと?」
「うん、そうなんだ」
皆に話すのだった。
「ここはね」
「隔離病棟って」
「そんな場所に一体」
「何で行くの?」
皆首を傾げさせながら話をする。
「何でそんな場所に?」
「お見舞いに行く人もいないのに」
「どうしてなんだよ」
皆それがどうしてもわからなかった。しかし正道はその間にも彼等の前を進む。そうしてその行く先は次第に暗くなっていくのだった。
その暗さが面々を次第に暗くさせていく。彼は遂にある場所に辿り着いた。
「なあ、ここって」
「そうよね」
「如何にもって感じだけれど」
さながら鉄格子であった。少なくとも彼等にはそう見えた。ガラスと鉄の扉だったがそこには全てを阻む剣呑なものがあった。確かに。
正道は鍵を開けた。そうしてだった。正道はその扉を開けて中に入っていく。そうしてその闇の中に消えていくのだった。
闇の中に消えた正道を見ている彼等は。扉のガラスのところから見えるその彼を見ながら。顔を見合わせて言い合うのであった。
「なあ、どうする?」
「どうするって?」
「何するんだ?」
「だからどうするんだよ」
皆で言い合うのだった。
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