ある晴れた日に
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509部分:冷たい墓石その十七
冷たい墓石その十七
「それでだったのよ」
「そうだったの」
「そうだったのよ」
また話す陽子だった。
「そこからああいうふうになったのよ」
「事情があったってわけね」
明日夢は少し俯いて述べた。
「それでだったの」
「そうなのよ。高校に入ってからもそうだったの」
「ああ、実はな」
「無愛想なままよ」
今度は五人が話す。
「あんたが思ってる通りでね」
「無愛想よ。けれどね」
しかしここでまた話す彼女達だった。
「一応皆と付き合ってるわよね」
「最近はともかく」
「そうなの。少しは明るくなったのね」
その話を聞いて少しほっとしたようになった陽子だった。
「友達付き合いが深くなったの」
「それであいつ友達は?」
「いたの?」
「いたことはいたわ」
いたということだった。
「一応はね」
「一応ね」
「数は多かったみたいだけれど」
前置きが来た。次の言葉は。
「付き合いは深くなかったわね」
「そうだったのね」
「何かわかるような」
「今はどうかわからないわよ」
陽子はあくまで過去を語っている。自分でもそれはわかっているのだった。
「今はね。けれどよ」
「昔はそうだったんだ」
「中学の時のあいつは」
「一応あいつの御両親もよく知ってるけれど」
このことをまた話す陽子だった。
「時々電車で見るし。通学中に」
「お元気なの?」
「御二人共ね」
元気だというのである。
「とてもお元気よ。共働きで」
「それ最近もなの?」
咲は彼女達の中だけにおいて核心を尋ねた。
「最近だけのことなの?」
「それって」
「今日も見たわよ」
今日もだという。答えに他ならなかった。
「今日もね」
「そう、今日もなの」
「ってことは」
先の友人のことについてもだった。答えが出てしまったのだった。
「御家族でも友達でもないのね」
「そうね」
「?何かあったの?」
陽子は五人と明日夢がそれぞれ呟くのを聞いて気になって問うたのだった。
「気にしてるっぽいけれど」
「気にしてるっていうかね」
「まあ何ていうかね」
この辺りは誤魔化すのだった。これは六人共であった。
「何でもないから」
「こっちの事情だから」
「そうなの」
それを聞いて特に突っ込むことを止めた陽子だった。どうやら外見通りさばさばした性格らしい。
「まあ私が知ってるのはこれだけよ」
「そう」
「有り難う」
ここまで聞いてこれで尋ねることを止めたのだった。
「じゃあ後は」
「またアルバイトね」
「約束の時間まで御願いね」
そこはしっかりと告げる明日夢だった。
「いいわよね、それで」
「ええ、まあ」
「じゃあそれで」
五人としても異存はなかった。そうして時間までアルバイトをするのだった。
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