ある晴れた日に
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487部分:歌に生き愛に生きその九
歌に生き愛に生きその九
「とにかくよ。音橋だけれどね」
「自棄になってたんじゃないかしら」
「それよね」
恵美はまたそれを言うのだった。
「だとしたら原因は?」
「真面目な話毎日お酒そこまで飲んでるなんて」
明日夢は今度は冷静に考えて述べた。
「あれよ。相当な理由があったのよ」
「まあそうだよね」
「理由がなければやっぱり」
「毎日そこまで飲まないわよね」
皆明日夢の言葉を受けてまた考えた。
「だからか。あれだけ飲んでいたのは」
「理由があったから」
「まあそれでもな。聞かない方がいいよな」
佐々はここで皆に対して話した。
「何かがあってもな。やっぱりな」
「そういうことよ。今回もだけれど」
恵美も言う。
「今は詮索しないことね」
「それじゃあやっぱりあいつはそっとしておいてだな」
春華は恵美の言葉を受けて述べた。
「めぐりんよ、遊びにも誘わないんだな」
「その方がいいわ。一人でいたい時もあるでしょうし」
これは彼女の気遣いだった。あえてそうして彼の自由にさせてそのうえでいいようになってもらうつもりだったのである。つまり彼女が選んだのは放任ということであった。
「そういうことよ」
「じゃあいっか。明日は皆で球場行く予定だったけれどな」
「ああ、阪神対巨人か」
「明日のあれね」
このことはもう皆で決めているのだった。取り立てて阪神が好きではない面子もいたが誰もが巨人を忌み嫌っているのでその点で一致したのである。まさに巨人という球団は巨悪そのものであった。少なくとも彼等の中ではそうした存在になっているのである。
「それ行くけれどあいつはなしでな」
「じゃあチケット一枚どうしよう」
「あいつのは」
「売るしかないわね」
恵美がここで述べた解決手段は実に現実的なものであった。
「それだと」
「じゃあ売ったそれで」
「皆で何か飲む?」
「っていっても甲子園もビールとかポップコーンとか高いし」
球場の中の売り物はどれでも高くなってしまうものである。これは日本という国の特徴である。しかしそれがそのままそのチームの収入にもなるのだからいいと思えばいい。ただし東京ドームでそれをやると巨人の方に入ってしまうのであるがそれは要注意であろう。
「他で飲むか」
「それに使おうか」
それでこう話すのであった。そんな話をしてその日をいつもの様に過ごす彼等であった。
その日も正道は未晴の下を訪れた。そのうえで彼女の枕元でギターを演奏し歌を歌う。そしてその次の日もであった。
その日クラスの面々は甲子園の一塁側にいた。学校が終わるとすぐに甲子園に行きそこで多くのメンバーは阪神グッズを着て応援するのであった。
着ていないのはヤクルトファンである春華と奈々瀬、それに広島ファンである千佳であった。それにホークスファンの咲と西武ファンの恵美、それと日本ハムファンの茜は阪神の縦縞の法被だけを着ている。
「法被はいいの」
「帽子だけは駄目だけれど」
咲はこれは譲れないというのであった。
「法被はいいかなって思ってね」
「私もね」
「私も」
恵美と茜もであった。パリーグファンの彼女達は幾分か気楽なものであった。
「それで法被は着てるけれどね」
「セリーグじゃ阪神が結構好きだし」
「だからかよ」
「それでか」
「私は全部着てないけれどね」
見れば明日夢はメガホンも何もかもを持っていない。春華達もせめて風船は持っているというのにだ。彼女はそれさえも持っていないのである。
「ベイスターズファンの誇りがあるから」
「ああ、今日一回終わって十点差だぜ」
「また今日もひでえな」
ここで男組が携帯を見て言う。
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