ある晴れた日に
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485部分:歌に生き愛に生きその七
歌に生き愛に生きその七
「それは」
「是非ね。できれば急所も」
「ああ、それは駄目よ」
「そうそう」
明日夢だけでなく静華もそれには反対するのだった。何故か急所攻撃が異常に好きな二人であった。
「もうどんな男でもそこを狙えば一発だからね」
「もう究極にして最後の狙い場じゃない」
これについては完全にわかって話をしてそのうえで攻撃対象としているのだった。それだけにかなりタチが悪いと言えば悪いことである。
「だからよ。そこだけはよ」
「いざって時の切り札よ。もっともね」
「もっとも?」
「私他にも色々と弱点知ってるけれどね」
千佳に答える形で実に能天気に話す静華だった。
「もうね。眉間とか目と目の間とかその喉とかみぞおちとか。他には口と鼻の間とかね」
「弱点多いのね、本当に急所って」
彼女の話から先程の桐生の言葉が嘘ではないことをわかった千佳だった。
「そこを狙えばなの」
「そうよ。脳天もそうだし」
「ああ、脳天もなの」
「少年の背だったら狙うのはちょっと難しいけれど」
明日夢のその小ささをじっくりと見ながら話す静華だった。
「それならみぞおちとかね。狙えばいいしね」
「みぞおちね」
「そこを一気に」
正拳をここで繰り出してみせたのであった。右、続いて左に。
「こうやって連続でやったら終わりよ」
「それだけでなのね」
「その前に相手の膝とか足首をわざと打ってバランスを崩させると余計にいいわよ」
「かなり実戦的ね」
「当たり前よ。私空手道場の娘よ」
実ににこにことして語る。
「もうこんなのは朝飯前よ」
「それはいいんだけれど」
竹山がそのにこにこと話す静華に対して突っ込みを入れてきた。
「あの、前から思っていたけれど」
「何?」
「遠藤さんのお家って活人拳だよね」
このことを真顔で問うのだった。
「確か。そうだよね」
「そうだけど」
今更何を言っているの、ともう顔に書いてある静華だった。
「それ前に言ったじゃない。っていうかいつも」
「けれど何か技物凄くえげつなくない?」
「だよなあ。玉の潰し方とかな」
「口と鼻の間なんてよく知ってるよな」
男連中は竹山の指摘を受けてあらためてそのことを話した。
「何ていうかな」
「リアルだよな」
「他にもそんな技あるの」
「耳とか狙うとかね」
今度はそれであった。
「耳も効くのよ。他には相手の肘とか膝を狙うとか」
「滅茶苦茶危ねえよな」
「なあ」
男連中はその話を聞いてさらに思うのだった。
「っていうか何なんだよそれ」
「絶対殺人拳だろ」
「それでも活人拳よ」
だが本人はあくまでこう主張するのであった。
「急所を知ってるとそれを守れるじゃない」
「まあそうだけれどね」
竹山はそれは認めて頷くことができた。
「それはね」
「だからよ。知って相手がどう攻めてくるかも把握する」
こうてきぱきとした感じで技の仕草を実際に皆に見せながら話していく。
「そのうえで活かしていくのよ」
「だから活人拳なんだ」
「あくまで己の身体だけでなく心も鍛える」
言葉はさらに真面目なものになった。
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