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ある晴れた日に

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466部分:夕星の歌その六


夕星の歌その六

「俺にはどうということはない」
「そうか」
「そうだ。それならそれでな」
 言いながら次々に飲んでいく。酒は瞬く間に消え残ったのは僅かだった。その僅かの酒も全て飲んでしまった。本当に瞬く間であった。
 全て飲み終えてからそのうえで。彼は佐々に告げた。
「もう一本いいか」
「そう言うと思っていた」
 言いながら早速同じ焼酎の瓶を出してきたのだった。
「飲め。気が済むまでな」
「そうさせてもらう。今日もな」
「ここまで飲む奴とは思わなかったんだがな」
「酔いたいからだ」
 だからだと返すのだった。
「だから飲む。今はな」
「そうか」
 ここではあえて問わない佐々だった。彼はじっと正道を見ていた。そうしてそのうえで彼なりに慎重にその言葉を選んでいたのである。
「わかった。じゃあ飲め」
「多分もう一本いく」
 こう返す正道だった。その瓶が目の前に下ろされるのを見ながらの言葉だった。
「今日もな」
「一日平均三本か」
「それ以上は飲めない」
 そのことについてこう返しもした。
「実際のところな」
「んっ?何でだ?」
 何故飲めないかは佐々にはわからなかった。それで今の彼の言葉を聞いてついいぶかしむ顔になってそのうえで問い返したのである。
「何でそれ以上飲めないんだ?三本以上は」
「アルコールを一定まで飲むとそこで自然に飲めなくなる」
 だからだと答える正道だった。
「それでだ。飲めなくなる」
「何か便利な体質だな」
「それだけ飲んだらもう殆どのことを忘れられる」
 今出した言葉はかなり剣呑なものだった。
「それでな」
「まあだったらいいけれどな」
 そこまで聞いて相槌の様に正道に言葉を返した。
「そこで止まるんだったらな」
「俺としてはもっと飲んでとことんまで忘れたいがな」
「それは止めておいた方がいいな」
 今も飲み続ける彼への言葉であるのは言うまでもない。
「さもないと本当に取り返しがつかなくなるからな」
「そうなっても構わない」
 捨て鉢そのものの言葉で今コップの中にある焼酎を煽るようにして飲むのだった。見ただけでかなり身体に悪そうな飲み方である。
「別にな」
「どうしたんだか。本当にな」
 佐々はそんな彼の言葉を起こるわけでもなく呆れて聞くだけだった。
「御前もな。最近おかしいぜ」
「おかしいという自覚はない」
 応えながら焼酎をコップの中に自分で注ぎ込むのだった。
「別にな」
「そうかよ。自分ではかよ」
「それでだ。もう一本な」
「おい、もうか」
 見れば二本目も瞬く間だった。気付けばもう殆どなくなっていたのである。
「相変わらず速いな」
「すぐに飲んだ方が簡単に忘れられる」
 これまた随分と捨て鉢な言葉だった。それをあえて出しているといった感じであった。
「だから飲む。すぐにな」
「それでもどうだ?普段より酔いはましになる筈だぜ」
「その牛乳のせいでか」
「何度も言うけれどな。潰れるな」
 またしても真面目な顔になる佐々だった。
「酒にな。それはいいな」
「潰れたらどうするつもりだ?」
「そう言われるとわからないがとにかく潰れるな」
 対応については答えずにあくまでこう言うのであった。
 
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