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レーヴァティン

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第百七話 善政が招くものその十

「六万ともなるとね」
「だからか」
「そうさ、どんどんね」
「国人達も寺社も降ってくるか」
「そうだよ、領主もね」
「そうか、しかしな」
 英雄は打ち鮑を食べつつ述べた。
「大きな勢力だから降ってくる」
「それがあたし達の狙いでもね」
「若しだ」
「あたし達が落ち目になるとね」
「少しでも躓くとだ」
 その時のこともだ、英雄は話した。
「降ってきた連中はな」
「旗を変えるね」
「そうなる、独立するかだ」
「敵に寝返る」
「そうするのは目に見えている」
 まさにというのだ。
「だからだ」
「そうした連中のことを考えて」
「政を行う中でな」
「そうした勢力を組み込んでいってだね」
「組み込んだ独立した勢力ではなくだ」
 そうした状態にせずにというのだ。
「完全にだ」
「あたし達の中に入れるね」
「俺達の勢力にな」
「さもないとっちゃな」
 今度は愛実が言ってきた。
「ただ降ってきた連中を受け入れただけで」
「寄合所帯でしかなくな」
「まとまりもないっちゃね」
「だから俺は今もだ」
「組み入れた勢力をっちゃな」
「組み入れていっている」
 政の中でだ、そうしていっているというのだ。
「全てな」
「そうっちゃな」
「そして降った国人や寺社や領主達も用い」
「忠誠心もっちゃな」
「向けさせる様にしている」
 他ならぬ自分にというのだ。
「人だからな」
「それっちゃが」
「どうした」
「あんたの待遇はいいから」
「だからか」
「降った勢力はどんどん懐いていってるっちゃ」
 そうなっていることをだ、愛実は英雄に話した。
「忠誠心も持ってきているっちゃ」
「そうなのか」
「これも政っちゃが」
 降った者達をよく遇して忠誠心を持たせることもというのだ。
「あんたはっちゃ」
「このことでもか」
「成功してるっちゃよ」
「それならいいがな」
「そうっちゃ、だからっちゃ」
「このことについてもだな」
「このままっちゃ」
 こう英雄に言うのだった。
「やっていくといいっちゃ」
「折角こちらに来ても背かれない様にだな」
「そうしていくっちゃ」
「ではな」
「それっちゃが」
 愛実は英雄にあらためて話した。
「うち等はこのままっちゃな」
「そうだ、この大軍のことを喧伝しつつな」
「紀伊を進んでいくっちゃな」
「目指すは紀伊和歌山城だ」
 この城が戦略目標だというのだ。 
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