レーヴァティン
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第百七話 善政が招くものその九
「最善だと考えている」
「では紀伊に兵を進めると共に」
「それでだ、あとだ」
英雄はさらに話した。
「六万の軍勢を動かす」
「このことをだな」
今度は幸正が述べた。
「大きく喧伝するな」
「紀伊、そしてな」
「他の国々にもだな」
「喧伝する」
「六万の兵を動かすことを」
「そして多くの鉄砲と大砲もだ」
この二つもというのだ。
「多くあるとな」
「あえてだな」
「言う、これがな」
「周りの小さな勢力にだな」
「伝わるとな」
「降る勢力がさらに増える」
「小さな国人等はだ」
それこそというのだ。
「この話を聞いただけでな」
「降ることを決めるな」
「伊勢や山城、そしてな」
英雄はさらに言った。
「さらにだ」
「他の国も」
「丹波、但馬にも及べば」
それでというのだ。
「いいことだ」
「ではな」
「俺は戦は厭わないが」
「戦にならないとですね」
「それが最善だ」
またこういうのだった。
「だからだ」
「この度も」
「戦にならないならな」
それでというのだ。
「いい」
「よし、では大きくな」
多くの大砲や鉄砲を擁する六万の兵が動くことをというのだ。
「このことを喧伝していこう」
「出陣しつつな、見せる」
その六万の兵をというのだ。
こう言ってだった、英雄は自らその六万の兵を大坂に集めてそのうえで紀伊に向けて出陣した。それと共に。
出陣した、そして喧伝を行うとだった。
英雄は本陣で勝ち栗と打ち鮑、それに昆布を食べつつ仲間達に言った。
「伊勢、山城にか」
「この紀伊でもね」
桜子が応えた、十二人も彼と同じものを食べている。
「国人達がね」
「降ってきているか」
「六万もの兵なんてね」
「そうそう出せないからか」
「若しもだよ」
桜子は英雄に笑って話した。
「それだけの兵がね」
「自分達のところに来たらか」
「それも沢山の鉄砲や大砲まで持って」
そのうえでというのだ。
「来ると思ったらね」
「戦う前にか」
「自分達から降って」
そうしてというのだ。
「ことなきを得ようってね」
「思うか」
「大きな勢力だと」
それだけでというのだ。
「降る人達も出て来るよ」
「そういうものか」
「この浮島で六万の兵を動かせる勢力なんて」
「幾つあるかだな」
「多分ないよ」
そこまではというのだ。
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