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ドリトル先生と姫路城のお姫様

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第二幕その十

「アルコールが飛びますね」
「うん、結構そうなるね」
「そこまでしますか」
「泉鏡花はそうだったんだ」
「細菌恐怖症でも」
 トミーも首を傾げさせて言います。
「極端ですね」
「だからチフスになったからね」
「それで、なんですね」
「お水もお湯にしてね」
 熱消毒をしてです。
「そしてね」
「そこからですね」
「飲む様にしていたから」
 だからだというのです。
「そのことを考えると」
「お酒もね」
「熱燗で」
「沸騰する位だったんだ、それもぐらぐらとした感じになるまで」
 そこまで沸騰させてというのです。
「沸騰させてからね」
「飲んでいたんですか」
「そうだったんだよ、泉鏡花は」
「そこまでは普通ないですね」
「そうだと思うけれどね、僕も」
「日本酒だけじゃないですけれどね」
「熱くして飲むことはね」
 このこと自体はというのです。
「日本酒よりは少ないと思うけれど」
「あるにはありますけれど」
「泉鏡花はまた極端だったね」
「本当に極端な潔癖症だったんですね」
「あの人はそうだったんだ」
 まさにというのです。
「僕が今話した通りにね」
「じゃあ先生は普通にですね」
「普通の熱燗で頼むよ」
「そうさせてもらいます」
「是非ね、あとね」
「あと?」
「お風呂を先に入っていいかな」
 トミーにこちらのことも尋ねたのでした。
「今から」
「ご飯の前にですね」
「そうしていいかな」
「はい、どうぞ」
 トミーは先生に笑顔で答えました。
「やっぱり飲むのならですね」
「先にお風呂に入った方がいいね」
「はい、ですから」
 それでと言うトミーでした。
「今からですね」
「お風呂に入って」
「ご飯ですね」
「そうさせてもらうよ」
「その様に」
「今から楽しみだよ」
 先生は湯豆腐と熱燗の話をまたしました。
「温まるね」
「そうですね、湯豆腐に熱燗となると」
「そういえば泉鏡花は金沢の人だったよ」
「あちらの人ですか」
「そうだよ、実はね」
 今度は泉鏡花の出身のお話になりました。
「あちらの人なんだ」
「そこまでは考えませんでした」
 トミーは泉鏡花のお話の中で述べました。
「実は」
「そうだったんだね、トミーは」
「けれどあちらの人でしたか」
「ひょっとすると潔癖症以外にもね」
「湯豆腐と熱燗が好きだった理由がありますね」
「金沢は冬寒いからね」
 それでというのです。
「雪が深くてね」
「だから温かいものが好きだった」
「ひょっとするとこれも理由だったかな」
「そうかも知れないんですね」
「理由は一つとは限らないからね」
「どんなことでも」
「そう、だからね」
 それでというのです。 
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