魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~
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Epica41-Bモルゲンデメルング艦隊攻略戦~Battle of Aquaveil~
†††Sideアインス†††
以前遭遇した時は逃してしまった大隊の艦隊を、今度こそが撃沈するべく交戦を開始したのだが・・・。
「なんだ、この硬さは・・・!」
私は主はやての指示の下、シグナムやザフィーラ、数居る航空隊員たちと共に艦隊全てを覆えるほどの巨大なバリアを破壊しようと試みているが、なかなか突破できない。
(以前遭遇した戦艦には通じていた防御魔法貫通の魔力杭では歯が立たない)
バリアの質が変化している。魔法とはプログラムであり、貫通や破壊効果の魔法は、プラグラムにプログラムを割り込ませて破綻させるというものだ。前回の戦艦のバリアもそれで無理やり突破させたわけだが、今回はプログラムを割り込ませる前に分散させられている感じがする。そう、これはバリアではなく、目に見えるレベルのAMFだ。
「(ただ、単純なAMFであれば、艦載砲も無力化されてもおかしくないが、艦載砲はバリアを突破してくる。何かカラクリがあるはずだ。ミサイル発射時にはわざわざ解除するくらいだ)・・・シグナム、純粋魔力攻撃ではおそらく無理だ! 魔力付加も含めた物理攻撃に切り替えてくれ!」
「了解だ!」
そして私も物理攻撃を選択して、発動の準備に移る。AMFの最大の弱点は完全物理攻撃に弱いと言うことだ。が、艦隊の装甲も対物効果くらいは有しているだろう。ならばこちらは物量で攻めるだけだ。足元にベルカ魔法陣を展開。
「水精、天へと翔け集え。高き処にて舞う息吹にて剣と成り、天壌を撃ち貫け!」
艦隊の周囲12箇所より水柱が螺旋を描くように空高くまで伸び、空で合流すると巨大な剣の形へと固定され、さらに氷結させることで、質量で相手を貫く物理攻撃である全長300mの「ベリサルダ!」となる。
「ザフィーラは破城の戦杭を!」
「む? 戦杭は質量を持っているとはいえ純粋魔力攻撃だぞ?」
「ああ、構わない!」
物理攻撃で攻めるが、魔力攻撃による揺らぎも無駄にはならないだろう。さすがにザフィーラに、素手で殴りにいけ、とは言えない。準備は整い、私は艦隊のバリアに攻撃を加えていた全隊に避難するように呼びかけ、避難が完了したのを確認。
「翔けよ隼!」
『シュツルムファルケン!』
「破城の戦杭!」
ボーゲンフォルムとなっている“レヴァンティン”より射られた矢と、空から落ちて来る巨大な杭がバリアに打ち付けられた。バリアは僅かに軋みを上げるがそれだけだ。
「往け!」
巨大氷剣ベリサルダが戦杭に続いてバリアに激突したが、先端から砕け始める。
「まだだ!」
――グラーシーザ――
バリアの面に沿って海上へと落ちていく氷塊を環状魔法陣で取り巻いて止め、「放て!」号令を下す。環状魔法陣は加速発射プログラムを有している。ゆえに超高速で氷塊を撃ち出すことが出来る。
「ビクともしないな・・・!」
「アインス!」
「攻撃の手を緩めるな!」
崩落していく氷剣の破片すべてに環状魔法陣を展開させ、バリアへと次々発射していく。ザフィーラも再度戦杭による攻撃を行う中、「アインス!」シグナムが私の元へと来て、ガジェットより放たれたバインド弾をシールドで防御してくれた。私はシグナムに「ありがとう!」と礼を言い、次の魔法を準備に入ろうと考えたのだが・・・。
(主はやてをガジェットの殲滅担当にするのが間違っているのか・・・?)
ガジェットは現状の航空隊や警備隊だけでも十分攻略できている。ならば、と結論付けたところで、『こちらハルトマンです。全隊はガジェットの撃墜に従事。八神司令、チーム八神として艦隊への攻撃を!』との指令が入った。主はやてを始めとした全隊が『了解!』と応じた。
「そうゆうわけや! チーム八神、全力全開でいくよ!」
「「「『『はい!』』」」」
主はやてが合流してくださるだけで流れは変わるだろう。彼女の騎士として私たちの戦意も高揚するというものだ。
「ザフィーラは、私の護衛をしながら戦杭を打ち続けて! シグナムは引き続きファルケンを! アインスはグラーシーザで波状攻撃や!」
「「了解です!」「承知!」
「アギト、サポートを任せるぞ!」
『おうよ!』
シグナムは足元に展開した魔法陣に着地し、ボーゲンフォルムの“レヴァンティン”を構える。ザフィーラは主はやての側に控え、ガジェットの動向に注意を払いつつも「破城の戦杭!」を発動。そして私も、バリアの周辺60箇所の水柱を噴き上げさせ、水飛沫を凍結して槍の穂と成す。何百発という穂を環状魔法陣で宙に固定。
「リイン、螺旋槍いくよ!」
『了解です!』
主はやての側に浮く“夜天の書”のページが勢いよく捲れ、あるページで止まった。
「我が呼びかけに応じ参ぜよ。深淵奈落を支配する冥府の女王の槍。空穿つ螺旋の唸りは破滅与える喜びの咆哮。突き進む道妨げる壁を無残に穿ち、其に純然たる破壊を齎す!」
バリア上空に巨大な螺旋槍を召喚。全隊から「おお!」と歓声が上がった。そして主はやてが「ヴルフシュペーア・デア・ウンターヴェルト!」術式名を唱え、螺旋槍がゆっくりと回転を始めて降下。
「いっけぇぇぇぇぇーーーー!」
「艦載砲の攻撃の種類が変化! バインド弾から砲撃!」
「螺旋槍を迎撃し始めた・・・!」
圧倒的な質量を誇り、貫通力に優れた螺旋槍に、さすがに艦隊も危機感を抱いたようだ。空母とミサイル艦を除く戦艦11隻からの砲撃による迎撃は、螺旋槍を徐々にだが削っていく。
「シグナム!」
「ああ!」
『翔けよ、隼!』
「シュツルムファルケン!」
「奔れ、グラーシーザ!」
私とシグナムでバリアへと攻撃を加えていき、ザフィーラはバリア上空に描いた20枚の魔法陣より「鋼の軛!」を突き出させ、砲撃の行く手を防ぎ続ける。ザフィーラのその機転で螺旋槍のダメージは減り、ようやく切っ先がバリアと激突。轟音と共にバリアがグッと沈み、海面も大きく波立った。
「このまま撃ち貫く!」
螺旋槍の回転速度が徐々に上がっていき、螺旋槍を破壊しようと艦載砲も放たれ続ける。私たちもバリアに攻撃を加え続ける中、「ガジェットが・・・!」螺旋槍に特攻を仕掛け始めた。全隊を無力化するより螺旋槍を潰すことを優先したようだ。
「それほどまでの脅威というのなら、私たちは螺旋槍を守ろう! 刃以て血に染めよ。ブルーティガードルヒ!」
血色の短剣型高速射撃魔法を発動。私の周囲に50発と展開し、「穿て!」一斉射出。ガジェットの速度をダガーは超えており、自動誘導型でもあるため逃げても着弾まで追い続ける。それもあって次々とガジェットの推進器に着弾して炸裂、続々と撃墜していく。
「アインス! ヘイムダルの単独発動、確か出来たよな!? 念のためにスタンバイしておいて!」
「ヘイムダルをですか? ですがアレの発動には申請や許可が必要なはず・・・」
ヘイムダルは、ベリサルダと同じく多量の水を空中にて凍結させて氷塊と成し、その質量で以て対象を押し潰す物理攻撃だ。しかし純粋物理攻撃であり、なおかつ直撃後の影響などを考慮してその発動にはいろいと手続きが必要になってくるはずなのだが・・・。
「心配あらへんよ。本局でアインスと合流する前にすでに申請を出してたし、ついさっき許可が下りたからな」
「そ、そうですか、それはまた・・・」
用意周到、見事です主はやて。局から許可が下りているのなら遠慮は要らない。螺旋槍が徐々に崩れ始めていくのを視界に収めながら、足元にベルカ魔法陣を展開。元“夜天の書”の管制人格である私は、今の2代目“夜天の書”に納められている魔法を全て、この身1つで発動できるようになっている。
「(ルシルから授かったSSSランクの魔力量の使い時と言うわけだ)・・・海より集え、水神の槍」
ヘイムダルの詠唱を開始。バリアの周囲8箇所の海面より空へと向かって海水が勢いよく立ち昇る。螺旋槍の石突の上空で1箇所に集まって巨大な塊となる。
「彼方より来たれ銀雪の吐息。逆巻き連なり天に座せ・・・!」
その巨大な水の塊が凍り付いていき氷塊へと姿を変える。今は魔力で宙に浮かせているが、その魔法を解除すれば後は落下して、下に在るもの全てを押し潰す一撃、ヘイムダルの完成だ。
「アインス、もうちょいそのままで待機お願いや!」
「了解です!」
螺旋槍の回転が徐々に鈍くなっていき、至る所からボロボロと崩れていく。穂先もバリアに若干食い込んでいるかどうかと言ったところで、バリアの強度が尋常ではないことを改めて確認できたわけだが・・・。
「アカン、崩れる!」
とうとう回転が止まり、螺旋槍はその役目を果たすことなく瓦解を始めた。大小様々な岩塊がバリアに直撃していくがビクともしない。そして砲撃は、今度は氷塊を狙い始めた。
「アインス!」
「はい! 落ちよ、ヘイムダル!」
氷塊を取り巻いていた環状魔法陣を消失させると、浮力を失った氷塊が落下し始める。螺旋槍の瓦礫と共にバリアへと激突・・・するかどうかというところで・・・
――空対地レールガン――
氷塊が複数発の砲撃によって破砕されてしまった。魔力でもエネルギーでもなく、さらにこの高威力ということで、瞬時にレールガンによるものだと判った。
『艦隊の上空に熱源反応!』
『モニターに出します!』
側にモニターが展開されたのだが、「何も映ってない・・・?」ようだ。熱源反応というのは、レールガン発射時のものだろうから、上空に何か居るのは間違いないはずだ。
「アインス!」
「はい! 槍陣を成せ 白銀の破槌! ヘイムダル・ファランクスシフト!」
砕かれて海面へと向かって崩落していた氷塊を再集結させ、さらに複数の小型氷塊でバリアを包囲。そして「落ちろ!」と号令を下すと同時・・・
――空対地レールガン――
レールガンがやはり上空から発射されたのが判った。氷塊がまた破砕される中、主はやてが「ハルトマン司令! 熱源はどこからでしょう!」と尋ね、『少し時間を! ・・・高度12km!? 成層圏からの狙撃です!』という報告を受けた。
『記録映像をモニターに出します!』
モニターに映るのは広大な空だけだったのだが、いきなり何も無い宙で強烈な爆発が起きた。レールガン発射時のマズルフラッシュだろう。間違いなく成層圏に何かが居る、もしくは在る。そんな正体不明のことを、アンノウン、と呼称することになり、その呼称が呼ばれたら最大警戒だ。
「アインス、ちょう辛いかも知れへんけど・・・」
「問題ありません。正体を掴めるまでヘイムダルを生成し続けます!」
再び海水を巻き上げさせ、崩落する氷塊を巻き込んでバリア上空で再結集。そこをまたレールガンで破砕される。主はやて達の総攻撃を受けても揺るがないバリアを展開したままの艦隊が徐々に戦闘区域から離脱していく。
「しかし何故だ? 転移で逃げないのは・・・?」
『こちら第零技術部所属艦ベルリネッタ、ウーノ・スカリエッティ一尉です。これより月村すずか技術主任、トーレ・スカリエッティ一尉、クアットロ教官、セッテ・スカリエッティ二尉、高町なのは教導官、八神ヴィータ教導官、フェイト・T・ハラオウン執務官の、対AMF武装隊が参戦します。指揮権は八神はやて二佐、あなたに委譲します』
艦隊の不自然な離脱方法に疑念を抱いているところにウーノ・スカリエッティからの全隊通信が入った。空を見上げればLS級の艦船が、ヴォルフラムやリュッチェンスの側へと向かって来ていた。
†††Sideアインス⇒すずか†††
武装端末を装備した私たちはベルリネッタからの降下ハッチから空へと飛び立って、すでに艦隊と交戦中だったはやてちゃん達と合流して、はやてちゃんの指揮下へと入った。
「――なるほど。すずかちゃん達が今武装してるのが、スカラボ特製の対AMF武装ってわけか。とりあえず遠距離系の武装で撃ってもらえるか? その効果を確かめて見たい」
「了解! なのはちゃん、フェイトちゃん、トーレ。砲撃戦モードを!」
近接用の“ウォーハンマー”を装備してるヴィータちゃんとセッテ、かく乱担当のクアットロ以外の私たちは魔法陣やテンプレートの足場に着地して、それぞれ装備してる武装の先端を巨大なバリアで身を護ってる艦隊へと向けた。
「「「「バレルオープン!」」」」
“ストライクカノン”の砲身を展開して、バッテリー駆動によるエネルギーをチャージ。
「「S1、S2、バレル展開!」」
さらに私となのはちゃんは、自身の両サイドに浮遊してる“フォートレス”を構成してるシールド3基の内の2基、大型のS1、中型のS2シールドの砲門も向ける。S1は砲撃戦用の粒子砲で、S2は中距離戦用のプラズマ砲。ちなみに新しく採用したS3には、近接戦用の実体剣を内蔵させてある。
「みんな、すずかちゃん達の邪魔になるような敵の動きに注意! いつでも対処できるように!」
「ヘイムダルを囮にします!」
「ガジェットの増援やミサイルの発射は途切れているが、空に何か居るのも確かだ! 各員、最大警戒!」
バリア上空に造りだされる巨大な氷の塊が、何か居るらしい空から私たちの姿を覆い隠してくれた。
『注意! アンノウンに熱源反応!』
――空対地レールガン――
その直後に氷塊が撃ち砕かれて、いろいろな大きさの氷塊がバリアに向かって降り注いで直撃してく。そのうち、私たちの射線上を邪魔するように落ちてきていた氷塊が、深紫色の環状魔法陣でフワリと浮いた。
「射線クリア! 今や!」
「「ストライクカノン!」」
「「エクサランスカノン・ヴァリアブルレイド!」」
「「「「シューット!!」」」」
トリガーを引いて一斉に砲撃を放った。バリアは艦載砲やはやてちゃん、アインスさんの特大魔法、シグナムさん達航空隊の攻撃を何度受けてもビクともしなかったことは、ここに来るまでに送られてきた交戦記録映像で判ってた。それでも私は、ドクターが考え、それを形にしたスカラボのみんなの努力を信じたい。きっとプライソンの遺産に勝てるって・・・。
「当たれぇぇぇぇぇーーーーっ!」
私たちの砲撃はバリアに到達して、そのまま弾かれることなくスッと通過。そして13隻ある戦艦の内、2隻の戦艦の側面に着弾して爆発、黒煙を上げた。
「バリアを難なく貫いた!?」
「というよりは素通りした!?」
はやてちゃんの驚きの声の後、「おおおおお!」って歓声が周囲から上がった。その最中でも氷塊がいくつもバリアに当たっていくけど突破できずに弾かれて、バリアの側面をすぅーっと滑っていく。
『八神司令!』
「はいっ! 対AMF隊は艦隊への攻撃を続行! それ以外が護衛! 大気圏外に何かしらの兵器、あるいは大隊メンバーが居る可能性が大きい! 最大警戒で、対AMF隊を護りきるんや!」
はやてちゃんの指示が全隊に伝わって「了解!」の大合唱。直後に『注意! 艦載砲が稼動!』とリュッチェンスから知らせが入った。砲撃を受けた2隻と空母、そしてミサイル発射艦以外の9隻の主砲や副砲などの砲門が、私たちの居る高度に合わせてきた。
「全隊ブレイク! ザフィーラ、アインス! すずかちゃん達を護って!」
「「はいっ!」」
砲撃体勢を一旦解除して、艦載砲より放たれる魔力弾の回避行動に入る中、私は「クアットロ!」に、シルバーカーテンによるかく乱をお願いする。13隻の艦は無人らしいし、幻術や電子系で攻めれば艦隊の動きを抑えることが出来るかも。
「ベルリネッタ、リュッチェンス、ヴォルフラム。これより幻術でデコイを多数生み出します。識別信号を送りますので、全隊にも送信してください」
『『『了解です』』』
「信号の送信・・・完了。クアットロ、いいよ!」
「は~い! シルバーカーテンいっきま~すぅ!」
クアットロが発動したシルバーカーテン。私たち全員の幻影が何十体と空を覆った。艦載砲からの攻撃がピタリと止んだことではやてちゃんから対AMF武装隊に「攻撃続行!」指示を出た。私たちも「了解!」と応じて、トリガーを引いて一斉に砲撃を発射。砲撃はまたバリアを完全にスルーして、指示どおりに砲台を破壊していく。
『注意! アンノウンから魔力反応! 数2!』
『魔力反応増大! ターゲット1の魔法発動を確認! 魔力値測定・・・S+相当!』
――氷柱弾雨――
空から落ちてたのは魔導師じゃなくて巨大な氷の六角柱9本。直径5m、全長30mほどもあろうかっていう氷柱が何十本と渦巻き状に落下して来た。本物の隊員たちは避け切れているけど、幻術の方は躱しきれずに押し潰されちゃってる。
「まだまだ行きますぅ~!」
――シルバーカーテン――
「今の魔法はまさか・・・!」
「シグナム、それを考えるんは後や! 私たちがすずかちゃん達を必ず護りきる! どんどん攻撃して!」
「了解!」
「ヴィータちゃん、セッテ! プラズマパイルでの攻撃を許可します! あ、でももし、ここに来るまでの仮説どおりだった場合は・・・」
「そん時は、トーレのストライクカノンと端末交換だな。判ってる。よっしゃ! んじゃはやて、いってくる!」
「了解。ウォーハンマー、プラズマパイルでの攻撃を開始します」
「気ぃ付けてな、ヴィータ! セッテさんも!」
艦隊への射線が通る位置を探りながら、近接武装の“ウォーハンマー”を持つ2人に指示を出すと、2人はほぼ無差別に発射され続ける艦載砲の弾幕の中を突っ切ってく。
『注意! ターゲット2の魔法発動を確認!』
「来るぞ!」
空から落雷のような轟音と稲光がしたかと思えば、今なお落ち続けてる氷柱に沿うようにして雷が私たちの居る高度にまで降りて来た。そしてある1本の氷柱の天辺に降り立ったことで雷撃の正体を確認できた。紫色の雷を全身に身に纏った、大隊の制服を着た男性だ。
――ブリッツ・セッテ――
全身に纏う電撃から鎖が10本と伸びて来た。その先端が私たち対AMF武装隊に向かってるのが直感で判った。
「迎撃! ブラッディダガー!」
「ブルーティガードルヒ!」
「「シュート!」」
はやてちゃんとアインスさんが血色の短剣型射撃魔法を発動。2人合わせて50本の短剣が高速で放たれて、電撃の鎖を全て迎撃して弾いた。残りの短剣は本体の仮面持ちへ向かうけど、氷柱から飛び降りた彼が氷柱の側面を蹴って、私に向かって突進してきた。
「なのはちゃん達は攻撃続行!」
私の指示で私の側から離れたなのはちゃん達は、それぞれ自分で射線を確保して艦隊への攻撃を続ける。私は仮面持ちへの攻撃に備えて“フォートレス”を本来の役割――盾として使う。
「前面展開!」
3つのシールドを前方に逆三角形に展開して、中央の隙間へと“スノーホワイト”をはめた右手の平を翳して「バスターラッシュ、スタンバイ!」する。“ストライクカノン”の出力を絞れば非殺傷設定と同じような効果を発揮できるけど、あくまで似たようなだから基本的に魔法が通用する相手への発砲は管理局法上禁止だ。だからここは私の魔法の出番。
「紫電・・・一閃!」
私を護るように立ちはだかってくれたシグナムさんの紫電一閃が仮面持ちに向かって振り下ろされるけど、その一撃が彼に当たることはなかった。何故なら仮面持ちが直角に急上昇したから。凄い機動力だって驚く暇もなく私たちの視線が上に向くと、仮面持ちはシグナムさんの頭上から改めて私に向かって来ようとしていた。
「させん!」
――牙獣走破!――
ザフィーラさんの飛び蹴りが仮面持ちを襲う。だけどその一撃すらも彼は身を捩って回避。でも「シュヴァルツェ・ヴィルクング!」アインスさんの奇襲のような鋭い一撃は直撃。大きくよろけたところに、「紫電一閃!」シグナムさんの炎の斬撃を今度は食らって、バリアの方へと墜落。
「ダメだ! あたしじゃバリアを突破できねぇ! すずかの言ってた通りだ!」
仮面持ちの方へと視線を向けたところにヴィータちゃんが戻ってきた。ただのバリアじゃないと思ってたけど、やっぱり結界だったんだ。純粋魔力を一切通さず、全てのプロセス内で少しでも魔力を使った物理攻撃すらも防ぐ。だから魔力の防護服に身を包んだヴィータちゃんは結界に弾かれて、一切の魔力を使用しないセッテや“ウォーハンマー”は結界をスルー出来た。
「判った! トーレ、ヴィータちゃんと端末交換! ヴィータちゃん、ストライクカノンの使用法は・・・」
「問題ねぇ、知ってる!」
――制圧せし氷狼――
『注意! ターゲット1が魔法発動!』
トーレとヴィータちゃんが端末の交換をしている中で報告が入った。遅れて空から氷で出来た狼が20頭と駆けて来た。完全にカローラ姉妹の魔法だけど、それを口にすることはなかった。セレスちゃんは今、大隊と戦ってるそうだからきっと・・・フィレス元一尉だ・・・。
――ブリッツ・クーゲル――
さらにバリアの表面に立ってる男性仮面持ちが電撃弾を30発と放ってきた。それらは私たち対AMF隊に標的が絞られていて、艦載砲も本物と偽者との区別がつき始めたのか、かなり側を通っていくようになってきてる。
「端末の交換完了! すずか、私はセッテと合流してバリア内部から攻撃を開始する!」
「あたしはフェイトと一緒にストライクカノンで砲撃担当だな!」
「カノンの反動結構きついから気を付けてねヴィータ!」
「私とすずかちゃんは、このままフォートレスとストライクカノンによる爆撃だね!」
「トーレとセッテを誤射しないように注意しながらだけど、端末には互いの位置や射線を知らせる安全装置もあるから、派手にいこう!」
「安心して。みんなは私らが全力で護衛する!」
はやてちゃん達が電撃弾や氷の狼を迎撃してくれるから、私たちも安心して攻撃を続けられる。そしてとうとう「戦艦の1隻を撃沈!」することが出来た。黒煙を上げて転覆した1隻の戦艦が少しずつ海の中に沈んでいく。
『注意! アンノウンから魔力反応! 数・・・20! 敵性魔導師部隊です!』
歓声が上がって、さぁ次の戦艦を沈めるために動こうとしていた中での増援の報告。武装隊や警備隊の人たちが、自分たちが請け負います、と高度を上げていく。そして交戦に入った。
――雪花飛刃――
――ブリッツ・クーゲル――
氷の花弁型カッターと電撃弾が襲い掛かってくるけど、それらをはやてちゃん達が迎撃してくれる。そして私たちが艦隊への攻撃をする。それを繰り返して、さらに空母とミサイル艦を撃沈して何十分か経過したとき・・・
『時空管理局、そして聖王教会の皆さん、聞こえますか。本局内務調査部、聖王教会騎士団オランジェ・ロドデンドロン所属、ルシリオン・セインテストです。私は今、最後の大隊の拠点に潜入しています』
ルシル君からの通信が入った。
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