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ドリトル先生と姫路城のお姫様

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第二幕その五

「意地でも栄養の関係って認めなくて」
「軍医さんだったけれど」
「そう、軍医としてね」
「食べものに麦を送ることを認めなかったんだったね」
「それであの人は陸軍の軍医さんだったけれど」
「陸軍ではかなりの人が脚気で倒れたね」
「そうなったよ、日露戦争の時でもね」
 よりによって戦っている時にです。
「陸軍軍医総監、陸軍の軍医で一番偉い人にもなったけれど」
「頑固な人だったんだ」
「頑迷でプライドが高くてね」
「舞姫のことがあの人だったら問題だけれど」
「どうもね」
 そうした人だからというのです。
「付き合いにくい人だったみたいだよ、権威にも弱かったしね」
「同じお医者さんでも先生と全然違うね」
 王子はここまで聞いて思いました。
「先生は柔軟だしプライドというか天狗じゃないしね」
「偉そうにしても意味ないからね」
「それに権威は気にしないし」
「それはその時代や場所でいつも変わるから」
 だからというのです。
「やっぱりね」
「意識しないんだね」
「そうだよ」
「本当に先生とは正反対だね」
「抜群の秀才で当時滅多に出来なかった留学までしてね」
「ドイツにだね」
「当時の医学の最先端も学んで」
 そうしてというのです。
「しかもね」
「確かそこでも優秀な成績だったんだね」
「そうだよ、だからね」
 それだけにというのです。
「あの人はね」
「凄くだね」
「そうした性格になったんだ」
 かなり頑固でプライドが高くて権威主義だったというのです。
「夏目漱石も被害妄想でヒステリックだったけれど」
「何か森鴎外は」
「もっとね」
「問題がある人だね」
「学問はあって文才もあったけれど」
 人としてはというのです。
「実際にお付き合いするとなると」
「付き合いにくそうだね」
「夏目漱石よりもね」
「そうみたいだね」
「まあ泉鏡花も癖が強かったけれど」
 今の本題のこの人もというのです。
「けれどね」
「それでもだね」
「森鴎外よりははるかにましかな」
「先生森鴎外嫌いかな」
「ううん、嫌いというかね」
「学問をしてだね」
「そういう人だってわかったんだ」
 人間としての森鴎外を知ったというのです。
「僕なりにね」
「そういうことなんだね」
「当時のエリート中のエリートだったから」
「大学は今の東大医学部でね」
「そうだよ」
「そこで優秀な成績で」
「留学までして」
 そちらでも優秀な成績で、です。
「軍医としても出世して」
「そんな人だったから」
 文字通りのエリート中のエリートだったからです。
「人間としてはそうなった」
「そういうことだね」
 二人でこうお話しました。 
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