英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~
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第16話
~カレイジャス・ブリーフィングルーム~
「ええっ!?トヴァルさんが!?」
「1度目のユミル襲撃の件と言っていましたが…………何故彼まで責任を取る事になったのでしょうか?」
エリオットが驚きの声を上げている中、ユーシスは複雑そうな表情で訊ねた。
「…………実はヴァリマールがメンフィル帝国軍に回収された件を知った私はトヴァル君に依頼をしてユミルに向かってシュバルツァー男爵閣下にリィン君達の件も含めて何か知っているかどうかを聞いてもらう為にユミルに行ってきてもらったのだが…………トヴァル君の話では既にユミルは郷どころか、麓までメンフィル帝国軍による厳戒な警備体制が敷かれていたらしいんだ。」
「ええっ!?ユミルが…………!?」
「という事はエリゼの言っていた通り、メンフィルは最初からエレボニアは戦争を回避する為のメンフィルによる要求内容を呑まないと踏んでエレボニアと戦争をするつもりだったんだ。」
オリヴァルト皇子の説明を聞いたアリサは驚きの声を上げ、フィーは真剣な表情で呟いた。
「そしてトヴァル君はメンフィル帝国軍に交渉して何とかユミルに行こうとしたんだが…………メンフィル帝国軍はユミルに入国しようとした人物がトヴァル君だとわかるとすぐに入国の不許可を出してしまった為、結局トヴァル君はユミルに行けなかったとの事だ。」
「ど、どうしてメンフィル帝国軍はユミルに向かおうとした人物がトヴァルさんだとわかるとすぐに入国の不許可を出したんでしょうか…………?」
トヴァルがメンフィル帝国領であるユミルに入る事が許されなかった事が気になったエマは不安そうな表情で訊ねた。
「…………どうやらメンフィル帝国政府の関係者がレマン自治州にある遊撃士協会本部を訊ねて、1度目のユミル襲撃の件で何故遊撃士―――”中立の立場”であるトヴァル君が貴族連合軍に狙われていたアルフィンがメンフィル帝国の領土であるユミルに潜伏していたことをメンフィル帝国政府に報告しなかった事について責めたらしくてね…………その件を重く受け止めた遊撃士協会本部はトヴァル君の降格・左遷処分を決めたんだそうだ。恐らくメンフィル帝国軍がトヴァル君の入国を不許可にした理由は貴族連合軍の関係者に襲撃される原因であるアルフィンをユミルに潜伏させて、その件をメンフィル帝国政府にも報告しなかった事が関係しているだろうね…………」
「……………………」
「そ、そんな…………幾ら何でもそれは理不尽ですよ…………」
「―――いえ、本部に責任を追及したそのメンフィル帝国政府の関係者の言っている事は正論よ。―――例えどのような理由があろうとも、”中立の立場”である遊撃士のトヴァルが貴族連合軍にその身柄を狙われていたアルフィン殿下を他国の領土であるユミルに潜伏させて、その件をメンフィル帝国政府に報告しなかった事は大問題よ。もし予めメンフィル帝国政府がアルフィン殿下が内戦の最中にユミルに潜伏していた事を掴んでいたら、アルフィン殿下の身柄を狙う貴族連合軍による襲撃に備えてメンフィル帝国軍をユミルに派遣して襲撃を未然に防ぐ事もできたでしょうし。」
「サラ教官…………」
オリヴァルト皇子の説明を聞いたユーシスが複雑そうな表情で黙り込んでいる中、不安そうな表情で呟いたアリサに静かな表情で指摘したサラの話を聞いたトワは辛そうな表情を浮かべた。
「『俺のせいでお前達の努力を全て無駄にしてしまって、本当に申し訳ない』―――それが、通信で殿下に伝えたエレボニアから去る前のトヴァル殿の伝言だとの事だ。」
「トヴァル殿…………」
「……………………」
「あの…………ちなみに父さんはアルフィン殿下の件やメンフィル・クロスベル連合との戦争についてどのような反応をしたんですか?」
アルゼイド子爵の話を聞いたラウラとサラがそれぞれ重々しい様子を纏っている中、ある事が気になっていたマキアスは複雑そうな表情で訊ねた。
「レーグニッツ知事閣下はリベールに連絡してアルフィンを保護してもらうべきと宰相殿に反対していたし、メンフィル・クロスベル連合との戦争もメンフィル帝国と貴族連合軍による2度に渡った”ユミル襲撃”の件でメンフィル帝国が求める要求の一部受け入れを交渉材料としてメンフィル・クロスベル連合との戦争を避ける事やメンフィル帝国の残りの要求内容を何か他の内容を対価とする事で変更する事も宰相殿や父上に進言していたが…………どれも、却下されたんだ。」
「そうだったんですか…………」
「”メンフィル帝国の要求”…………――――そういえば”破壊の女神”達と共にヴァリマールを回収しに来たエリゼが言っていた件だね。」
「エレボニア帝国がメンフィル帝国――――いや、メンフィル・クロスベル連合との戦争を避けるために承諾する必要がある要求か…………」
「…………殿下、ちなみにその要求内容を我々にも開示して頂く事は不可能でしょうか?」
オリヴァルト皇子の答えを聞いたマキアスは疲れた表情で溜息を吐き、真剣な表情で呟いたフィーの言葉を聞いたガイウスは静かな表情で呟き、アンゼリカはオリヴァルト皇子に訊ねた。
「それについては既に要求内容が書かれている写しがあるから大丈夫だ。――――――ちなみにこれがその写しだ。」
そしてオリヴァルト皇子はアリサ達にメンフィル帝国の要求内容が書かれている写しを配った。
「な――――――」
「そ、そんな…………!?」
「何だ、この滅茶苦茶な内容の要求は!?確かに全面的にエレボニア帝国に非があるとはいえ、幾ら何でも理不尽すぎるぞ!?」
「―――確かにエリゼの言っていた通り、”鉄血宰相”ならこんな要求、絶対受け入れないだろうね。」
「というか例えエレボニア帝国政府の代表者が”鉄血宰相”じゃなくても、誰も受けれないわよ、こんなとんでもない要求は…………」
「この要求内容を全て実行したらエレボニア帝国にまた混乱が起きるだろうね……」
「うん………それに”四大名門”の当主達全員に加えてアルフィン殿下とオズボーン宰相まで身分を剥奪されてメンフィル帝国による処罰を受けさせられる件もそうだけど、入国料とかあったら旅行や商売でエレボニアの人達がメンフィル領に行きにくくなるよ……」
メンフィルの要求内容を知る事ができたユーシスは驚きのあまり絶句し、アリサは悲痛そうな表情で声を上げ、マキアスは真剣な表情で声を上げ、静かな表情で呟いたフィーにセリーヌは呆れた表情で溜息を吐いて指摘し、重々しい様子を纏って呟いたアンゼリカの意見にトワは悲しそうな表情で頷いた。
「殿下、それでオズボーン宰相達――――帝国政府はこの要求内容に対してどういう反応をされたんですか?」
「『ユミルが襲撃されたのは隣国で内戦が勃発したにも関わらず、自分達は関係ないと高をくくってユミルに軍を派遣しなかったメンフィル帝国の責任であるにも関わらず、その責任をエレボニア帝国に押し付けた挙句このような理不尽な要求を呑む等言語道断』と宰相殿は言って、要求内容を拒否した挙句、クロスベルと連合を組んだメンフィル帝国に対してIBCによる”資産凍結”の件で受けたエレボニアの被害をメンフィルにも賠償するようにと、グランセルのエレボニア帝国の大使館に伝えたそうだ…………」
「む、無茶苦茶だ…………!」
「どう考えても”鉄血宰相”はメンフィル・クロスベル連合とも戦争するつもりのようね。」
「愚か者が…………!内戦を終結したばかりのエレボニアが他国と戦争をしているような余裕――――ましてや”百日戦役”で大敗させられてユミルを初めとしたエレボニアの領土を占領したメンフィル帝国相手に勝てると思っているのか、あの男は!?」
アンゼリカの質問に重々しい様子を纏って答えたオリヴァルト皇子の答えを聞いたマキアスは信じられない表情で声をあげ、セリーヌは呆れた表情で呟き、ユーシスは怒りの表情で声を上げた。
「で、まずはメンフィルと連合を組んでいるクロスベルを占領する為に侵攻させたエレボニア帝国軍があっけなく殲滅された挙句、自分が信頼する部下――――それも”鉄血の子供達”の”筆頭”まで殺されるというあまりにも手痛いしっぺ返しを受けていながら、本気でメンフィル・クロスベル連合と戦争をするつもりなのですか、オズボーン宰相は?」
「ああ…………宰相殿といい、宰相殿の無謀な判断に対して何の反論もしない父上は一体何を考えているんだと、私も言いたいくらいだよ…………」
呆れた表情で溜息を吐いたサラは真剣な表情でオリヴァルト皇子に確認し、オリヴァルト皇子は重々しい様子を纏って頷いた後疲れた表情で溜息を吐いた。
「…………ねえ、どうして”情報局”はカルバード共和国がメンフィル・クロスベル連合との戦争によって既に滅亡していたことをクロスベルに侵攻する前に把握していなかったの?少なくとも、メンフィル・クロスベル連合が共和国を滅ぼしたことを知っていたら、クロスベルへの侵攻はもう少し慎重になっていたんだと思うんだけど。」
「言われてみればそうだよな…………?」
フィーの疑問を聞いたマキアスは考え込んだ。
「どうやらメンフィル・クロスベル連合―――いや、恐らくメンフィル帝国軍の諜報組織に所属している者達が共和国に潜伏していた”情報局”の者達を全員暴いた上で”暗殺”してエレボニアに共和国の件の情報が伝わらないように情報操作をしたらしくてな…………これもメンフィル帝国軍の諜報組織による仕業だと思われるのだが昨日、帝都近辺で共和国に潜伏していた”情報局”の者達全員の遺体が発見されたとの事だ。」
「ええっ!?共和国に潜伏していた”情報局”の人達が!?」
「もしかしてミリアムちゃんが”情報局”に呼ばれた理由は、その暗殺された”情報局”の人達の”穴埋め”としてかもしれませんね…………」
「ええ…………そうなると、下手したらミリアムとの合流は厳しいかもしれないわね…………」
アルゼイド子爵の答えを聞いて仲間達と共に血相を変えたエリオットは驚きの声を上げ、不安そうな表情で呟いたエマの推測に頷いたサラは真剣な表情で考え込んでいた。
「前々から疑問に感じていたけど、何で”メンフィル帝国”とやらをそこまで恐れているのかしら?そりゃ、”百日戦役”での大敗があるから恐れるのも無理はないかもしれないけど、皇子のその口ぶりだと今回の戦争、”最初からエレボニアは敗戦する事を前提”に話しているように聞こえるわよ。仮にもメンフィルが現れるまではエレボニアは”大陸最強”を誇っていたのに、何でメンフィル相手だとそこまで弱気になるのかがわからないわ。」
「セ、セリーヌ。」
「………それに関してはオレも気になっていた。異世界の大国である”メンフィル帝国”。わかっているのはオレ達人間とは違う種族――――”闇夜の眷属”を始めとした異種族が人間と共存して暮らしている国家で、国家、軍の規模は少なくともエレボニア以上。そしてリィンから聞いた話のみになるが、メンフィル帝国は今まで戦争に負けたことがない相当な強国ではあるようだが…………」
セリーヌの疑問を聞いたエマが気まずそうな表情をしている中ガイウスは静かな表情で呟いて自身の疑問を口にした。
「……………そうだね。ちょうどいい機会だからリベールの旅行をきっかけに知り合う事ができたメンフィル帝国の上層部――――リウイ陛下を始めとしたメンフィル帝国の上層部の方達から教えてもらえたメンフィル帝国の歴史も含めたメンフィル帝国についての事を説明するよ。」
そしてオリヴァルト皇子は自分が知るメンフィル帝国の事についてをアリサ達に説明した。
「なっ!?という事はメンフィル帝国の建国者であれるリウイ陛下はメンフィルの初代の皇で、それも元々は”平民”だったんですか!?」
「まさかメンフィルがリウイ陛下が起こした反乱によって建国された国家だったとは…………」
「しかもその後に当時の大国だった”カルッシャ”という国の謀によって起こされた大陸全土の国家を巻き込んだ戦争に勝利して”帝国”へと成り上がった国とはね…………それを考えると間違いなくメンフィル帝国軍は”エレボニア帝国軍すらも”比較にならない程の精鋭揃いなんだろうね。」
「軍による強さだけじゃなく、外交面でも強すぎだよ…………周辺国家による”大封鎖”をされて文字通り孤立したにも関わらず、その”大封鎖”を利用して国内の安定に集中させつつ、裏ではその”大封鎖”を破る外交を行っていたとの事だし…………」
「そして極めつけに”闇夜の眷属”の中でも”最強”を誇る種族である”魔神”と、異世界の神々によって選ばれて不老不死になる存在―――”神格者”という存在も保有している、か。」
「ん。その内の”魔神”とやらはわたし達がヘイムダルで出会った”魔弓将”だったとはね。」
「更にその”神格者”の一人が異世界の宗教を取りまとめていて”闇の聖女”と呼ばれているペテレーネ・セラ神官長だったなんて…………」
「…………話からして間違いなくその”闇の聖女”は、最低でも魔女の眷属(アタシ達)の”長”と”同格”…………下手をすればそれ以上の術者なんでしょうね。―――少なくてもヴィータじゃ遠く及ばない術者よ。」
「あ、あのクロチルダさんすらも遠く及ばない術者って一体…………」
説明を聞き終えたマキアスは驚き、ラウラやアンゼリカは真剣な表情を浮かべ、トワは不安そうな表情で呟き、静かな表情で呟いたガイウスの言葉に続くようにフィーとエマはそれぞれ考え込み、目を細めて呟いたセリーヌの推測を聞いたエリオットは信じられない表情をした。
「…………殿下。殿下の話によると父君が”魔神”という種族の為”半魔神”であられるリウイ陛下はもしかして”魔神”のように寿命や老化は…………」
「ああ。―――リウイ陛下もペテレーネさんやエヴリーヌ君達のように”寿命や老化は存在していないんだ。”だから、リウイ陛下は100年以上生きていても若々しい姿だし、武術の腕前も全く劣らないどころか、増々強くなっているだろうね。」
「”寿命や老化が存在していない”なんて女としては羨ましすぎるけど、”英雄王”を恐れている他国からしたら最悪な事実でしょうね…………」
「ええ…………”英雄王”としての武勇をゼムリア大陸中にその名を轟かせ、恐れられているリウイ陛下が少なくても寿命や老化で死なないなんて事実をオズボーン宰相あたりが知ればさすがに頭を抱えるんじゃないんですか?」
「ア、アンちゃん…………」
アルゼイド子爵の推測に頷いたオリヴァルト皇子の説明を聞いたサラの推測に頷いた後に答えたアンゼリカの冗談じみた言葉にその場にいる全員が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中トワは疲れた表情で溜息を吐いた。
「えっと………ちなみにリウイ陛下の実力って、比較すればどのくらいの強さなんですか?ヘイムダルの時にクロウ相手に圧勝した話は聞いてはいますけど…………」
「―――少なくても、エレボニアでその名を轟かせている武将達が全員で挑んでもリウイ陛下の勝率は圧倒的だと思う。―――それこそ”ヴァンダール”、”アルゼイド”の両子爵閣下にゼクス先生、オーレリア将軍とウォレス准将、そしてクレイグ将軍が協力して挑んでもリウイ陛下に”本気”を出させる事すら怪しいくらいだ。」
「な――――――」
「ええっ!?リウイ陛下って、そんなに滅茶苦茶強いんですか!?」
「正真正銘の”化物”じゃないですか!?」
アリサの質問に答えたオリヴァルト皇子の答えを聞いて仲間達と共に血相を変えたラウラは絶句し、エリオットとマキアスは驚きの声を上げた。
「ハハ…………リウイ陛下の場合凄いのは剣術だけじゃなく、”魔神”としての力もあるから、リウイ陛下がその気になってその身に秘める”力”を解放すれば戦車や機甲兵も一瞬で塵と化する事も可能だと思うよ。」
オリヴァルト皇子の推測を聞いたアリサ達はそれぞれ冷や汗をかいて表情を引き攣らせ
「それにリウイ陛下だけが凄い訳じゃない。カーリアンさん、ファーミシルス大将軍閣下、サフィナ元帥閣下、シェラ元帥閣下、そしてリフィア殿下を始めとした私がリベールの旅行時代で出会ったメンフィル帝国の皇族、武将と私が知っているだけでもリウイ陛下には届かなくても、たった一人で機甲師団一つを易々と壊滅に追いやれる手段を持つ人達がいる事に加えて私も知らない多くのメンフィル皇族、武将、そしてメンフィル帝国軍と推測するだけでもメンフィル帝国の強さはまさに言葉通り強い意味での”解析不明”なのさ。―――私がメンフィル帝国を恐れる理由がこれでわかっただろう?」
「………………………………」
疲れた表情で答えたオリヴァルト皇子の指摘にアリサ達は何も返せず重々しい様子を纏って黙り込んだ。
「今の話を聞けばあの”結社”が潰された事にも納得ね…………」
「ん…………しかも今回はメンフィルだけじゃなく、クロスベル―――”六銃士”までエレボニアにとっての”敵”になるから、どう考えても内戦とは比べ物にならないくらい”最悪な状況”。」
重々しい様子を纏って呟いたサラの言葉に頷いたフィーは静かな表情で答えた。
「ちなみにその”六銃士”の一人にしてクロスベル皇帝の一人でもあるヴァイスハイト・ツェリンダーは以前にも話したことがある私やミュラーも巻き込まれた”影の国”が持つ特殊性で転生前の彼も巻き込まれたんだが…………その彼も”影の国”に帰還してからの経歴も凄まじいのさ。―――それこそ彼が成し遂げた偉業はドライケルス大帝以上と言っても過言ではないだろう。」
「ええっ!?”獅子心帝”以上の偉業をクロスベルの皇帝の一人が…………!?」
「それにオリヴァルト殿下はその方の事を”転生前”と仰っていましたが、一体それはどういう事なのでしょうか?」
オリヴァルト皇子の説明を聞いたトワは驚きの声を上げ、エマは真剣な表情で訊ねた。そしてオリヴァルト皇子はヴァイスの事について説明をした。
「異世界の昔の皇帝が今の時代に生きる時代の人物そのままそっくりに生まれ変わるとか非常識な…………」
「しかも、そのヴァイスハイト皇帝がかつて成し遂げたという偉業もオリヴァルト殿下の仰る通り、認めたくはないがドライケルス大帝以上だな…………」
「ん。国内で起こった内戦を終結させたどころか、その内戦の隙を狙って侵略してきた国家全てを飲み込んでその”メルキア”っていう国を豊かにして皇帝に即位したって話だもんね。」
「メンフィルの”英雄王”といい、そのヴァイスハイトって皇帝といい、まさに”血統主義”であるエレボニアにとっては”天敵”みたいな存在ね。―――二人とも本来”皇”とは縁のない地位だったにも関わらず、”成り上がり”で当時の”皇”を玉座から排除して自分が玉座についたのだから。」
「セ、セリーヌ…………」
ヴァイスの事を知ったマキアスは疲れた表情で溜息を吐き、複雑そうな表情で呟いたユーシスの意見にフィーは同意し、静かな表情で呟いたセリーヌの意見を聞いたエマは冷や汗をかいた。
「殿下、ヴァイスハイト皇帝の件を考えるともしかして、他の”六銃士”もヴァイスハイト皇帝同様過去のヴァイスハイト皇帝と縁がある方々が転生した方々なのでしょうか?」
「それについては私も詳しい事はわからない。ただ、”蒼銀の魔剣士”の異名で呼ばれている”アル”というエルフ族の女性はヴァイスにとってかつての彼が最も信頼する副官にして後に彼の正妃となったリセル君の次に信頼し、大切にしている人物である事は以前の”西ゼムリア通商会議”の際に教えてもらえたが…………」
「…………………もしかしたら、ギュランドロスさんが言っていた”最高にして最強のライバル”と言っていた人物はそのヴァイスハイト皇帝の事かもしれないな…………」
「へ…………ガイウス、”六銃士”の事について何か知っているの!?」
「確か”ギュランドロス”という名前の人物は”六銃士”の中にもいて、その人物はもう一人のクロスベル皇帝らしいけど…………」
アルゼイド子爵の問いかけに答えたオリヴァルト皇子の後に答えたガイウスの推測を聞いたエリオットは驚き、サラは信じられない表情でガイウスにギュランドロスの事について軽く説明した。
「ああ…………以前ノルドで魔獣に包囲された父さん達を助けてくれた恩人――――ギュランドロスさんとその仲間の人達からそのヴァイスハイトという名前が出た事があるんだ。ギュランドロスさんの話では自身が認める”最高にして最強のライバル”だと言ってたが……」
「そのような出会いがあったのですか…………」
「フム…………ちなみにその仲間の人達の名前は何という名前なんだい?」
ガイウスの話を聞いたエマが驚いている中、オリヴァルト皇子は考え込んだ後ガイウスに訊ねた。
「ギュランドロスさんの仲間の人達は3人の女性で…………ラウラや子爵閣下よりも深い蒼色の髪の女性の名前はギュランドロスさんの奥方のルイーネ・サーキュリーさん、アリサのような金髪の女性の名前はエルミナ・エクスさん、そして紫髪の女性の名前はパティルナ・シンクさんだ。」
「―――決まりね。どの人物の名前や特徴も残りの”六銃士”と一致するわ。」
「彼らはどのような経歴かはわからないが…………ギュランドロス皇帝がヴァイスハイト皇帝と共にクロスベル皇帝として即位しているという事は、ガイウス君の話通りそのギュランドロス皇帝にとってヴァイスハイト皇帝が”最高にして最強のライバル”であるように、ヴァイスハイト皇帝にとってもギュランドロス皇帝は自分にとっての”最高にして最強のライバル”だからこそ、同じ立場になる事を受け入れたのかもしれないね。」
「それを考えるとギュランドロス皇帝もヴァイスハイト皇帝のようにかつては異世界の国の”皇”であった可能性が考えられますね…………」
ガイウスの説明を聞いたサラは静かな表情で呟き、アンゼリカとラウラはそれぞれ考え込んでいた。
「その…………話を変えますが、今までの話からしてわたし達が向かっている場所はメンフィル帝国の大使館があるリベール王国のロレント市ですか?」
「いや、ロレント市はリベール王国の領土の為当然リベール王国政府から入国許可を取る必要がある為、国境である”ハーケン門”に向かっている。」
「そして入国許可が下りたらロレントに向かう前にリベールの王都である”グランセル”に向かう予定となっている。」
トワの質問にアルゼイド子爵とオリヴァルト皇子はそれぞれ答えた。
「へ…………メンフィル帝国の大使館があるロレント市じゃなくてリベールの王都であるグランセルに?一体何故…………」
「まさか王国政府―――いえ、アリシア女王陛下達にメンフィル帝国との交渉の際の仲介に入ってもらう為にグランセルに向かっているのでしょうか?」
「あ…………」
マキアスが疑問を口にするとユーシスがその疑問に対する答えの推測を口にし、それを聞いたアリサは呆けた声を出した。
「ああ。君達も知っての通りリベールはメンフィルと同盟を結んでいる国家であり、2年前の”リベールの異変”の件でアリシア女王陛下の跡継ぎであるクローディア王太女殿下はリウイ陛下達とも親しい関係を築いている。…………正直な所私はアリシア女王陛下達からは”恩”を受けてばかりでその”恩”に対して何も返せていないにも関わらずアリシア女王陛下達に再び頼る事は心苦しいが、恥を忍んでアリシア女王陛下達の慈悲深さに頼るつもりだ。」
そしてユーシスの質問に対してオリヴァルト皇子は決意の表情で答えた。
その後ハーケン門に到着した”カレイジャス”はハーケン門にリベールへの入国許可やアリシア女王達との面会の許可を取った後、グランセルの国際空港に離陸し、アリシア女王達が出した送迎の車に乗ってリベールの王城―――”グランセル城”に向かい、城に到着して謁見の間に向かったアリサ達は壁際で謁見の様子を見守る事になり、オリヴァルト皇子とアルゼイド子爵はアリシア女王達との謁見を開始した――――
後書き
というわけでトヴァルは登場することなく、メンフィルによる政治攻撃によってエレボニアから退場させられちゃいましたwトヴァルをエレボニアから退場させる為に遊撃士協会本部に政治攻撃を仕掛けたメンフィル帝国政府の人物は一体誰なのかは後に判明しますが…………まあ、他の光と闇の軌跡シリーズの話を読んでいる人達ならそれが誰なのかはすぐにわかるでしょうね~ww
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