蒼穹のカンヘル
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四十七枚目
今日は一月一日、元日だ。
現在時刻は01:36。
「あぁ……ちっこい篝君も暖かくていいね」
「一匹貰って帰っていいかマスター?」
炬燵に潜った二人が白いナマモノを抱きながら呟く。
「ダメに決まってるだろう」
現在、領地の屋敷に入れて貰った和室に炬燵を出してまったり中だ。
ここに居るのは俺、藍華、ミルたん。
それともう一人。
「少年、お腹すいたんだけど」
「なぁ、魔王って暇なのか? 冥界は新年のパーティーとかねぇのかよ?」
「休憩中だよ☆」
セラフォルー・レヴィアタンだ。
それも何時もの魔王少女姿ではなく正装らしきドレス。
「で、我が主。なんか用?」
「特に無いよ。ここが単に居心地がいいってだけ。
あ、この二人が持ってるの私にもちょうだい」
「はいはい…」
いつの間にかできるようになっていた分身能力でちっこいコピーを作り、龍化させる。
猫くらいの大きさの龍化分身をセラフォルーに渡す。
「はいありがとねー」
「あんま変な所触んなよ」
今出してる五体の分身は感覚が繋がっていないとはいえ一応俺の分身だ。
残りの二体は炬燵の中で丸くなっている。
切り離した分身は好きに操れるが、操作と感覚共有を手放すと勝手に行動し始める。
小さいと龍化して猫みたいに寝るし、等身大だと勝手に龍化して寝始める。
……俺ってそんなに眠たいキャラなのだろうか。
あと、俺の身長の半分より小さくすると何故かデフォルメされて丸っこくなる。
「はいはいわかってるよ☆」
いちいち語尾に☆つけんなウゼェから。
「ところでヴァーリちゃんは?」
「ジュスヘル達と飲んでる」
神社に母さん、ヴァーリ、ジュスヘル、グザファン、レイナーレ、カラワーナ、ミッテルトが集まっている。
たぶん父さんはアザゼルと角でチビチビやってるんじゃないかと思う。
ぶっちゃけると酔って絡まれると嫌だからこっちに逃げてきたっていうのもありはする。
「え…? あの子未成年なんじゃ…?」
片目をつぶってミッテルトと視界をリンクする。
「母さんが甘酒飲ませてるだけみたいだし大丈夫でしょ」
ミッテルトは気付いてくれたらしく、部屋をぐるりと見渡してくれた。
父さんとアザゼルとグザファンが居ない。
別室で飲んでるのかな…?
と、そこにジュスヘルが転移術式で侵入してきた。
「ヴァーリが呼んでるぞ篝」
「えぇー……ヴァーリ甘え上戸じゃん…」
去年の雛祭りは…うん…その…ね?
「お前が我慢すれば済む話だろう?」
「じゃぁコイツら連れていけば?」
炬燵で丸くなってたチビドラゴンの尻尾を引っ張って炬燵から出す。
そのままプラーンと持ってジュスヘルに差し出す。
「分身か?」
受け取ったジュスヘルが言った。
「おう」
「あと五匹くらいくれないか?」
「そんなにどうすんだよ…」
サイズダウンした手のひらサイズのプチドラゴンをチビドラゴンの上に10匹くらいのっける。
「ぷきゃー」
「うきゅー」
「ぷきゅー」
うん、出しすぎた。
超喧しい。
「きゅー」
「煩いから早く持ってけよ」
「これお前自身だろう?」
「正確には俺が能力で作り出した子機だ」
「吸血鬼のコウモリみたいなものか?」
「そんな感じ」
ジュスヘルが転移したのを見送り、また炬燵でまったりする。
「セラフォルー、お前酒飲む?」
「もうどうとでも呼んでおくれよ…」
「じゃぁ無礼講って事でセラな」
「まぁいいや。 日本酒あるの?」
「あるよ」
父さんから貰った日本酒を炬燵の上に置く。
「藍華とミルたんは?」
「もらおうかしら」
「初めてだが…飲んでみるかな…」
side out
姫島神社
「篝は無理だったがコイツらを貰ってきたぞ」
ジュスヘルが戻るなり手の中のドラゴンが勝手に飛び出した。
パタパタと羽を動かして、全員ストーブの前に集まって寝始めた。
「この子もらうよー」
ヴァーリがチビドラゴンを手に取った。
「くるる…?」
コテン、と首を傾げるチビドラゴン。
「これはこれでかわいいね…」
「ヴァーリちゃんわたしにもそっちの子ちょうだい」
「はい、朱璃さん」
ヴァーリはもう一匹のチビドラゴンを朱璃に渡した。
「くゅるる…」
「小さくても翼は篝と同じなのね…」
朱璃が翼を撫でながら、微笑む。
「んー…見たところエネルギーの流れも篝のミニチュアですね」
ヴァーリがチビドラゴンをひっくり返してお腹をぷにぷにつつく。
堕天使三人娘もプチドラゴンを一匹ずつ手に取る。
「小さいとかわいいわね…」
レイナーレが人差し指で顎の下を撫でると気持ち良さそうに目を細めた。
「ぷきゅー…?」
「この子ら鱗までぷにぷにしてるっす!」
「ソフトシェルクラブみたいだな……」
「きゅぴぃっ!?」
カラワーナの手の上のプチドラゴンが逃げ出した。
「いや食べないけどな」
プチドラゴンはヴァーリのうでの中のチビドラゴンの羽の下に潜り込んだ。
そこへグザファンが入ってきた。
「お? 篝の分身か?」
ストーブの前で丸くなるプチドラゴンを見て…。
「饅頭みてぇだな。旨そうだ」
きゅぃぃっ!? とプチドラゴンsが悲鳴を上げて、チビドラゴン二匹の翼の下に潜り込む。
「まぁまぁ、安心してくださいな。食べるにしてもちゃんと調理しますから」
ピぃ!?
結局ヴァーリの下に全プチドラゴンが集まった。
「こういうの見ると、つい意地悪したくなっちゃうのよねぇ…」
朱璃の膝の上のチビドラゴンはクァとあくびをしている。
「食べますか?」
朱璃がみかんを差し出す。
「くゅー」
差し出されたみかんを加えると上を向き、咀嚼する。
「くゅー…」
尻尾が嬉しそうに揺れる。
「本当に猫みたいですね」
side in
「しょぉーねぇーん! もうね!もうね! あの老害ども吹き飛ばしたいんだよぉ!」
「くっそこっちがハズレだったか。落ち着けセラ」
セラに酒を飲ませたら唐突に愚痴りだして、今に至る。
なんかヤバそうな機密をポロポロこぼし始めたので藍華とミルたんはドラゴニューツの新年会にロストで放り込んだ。
さっきからこの女特級秘密事項をペラペラとしゃべっている。
教会とか旧魔王派に送り込んだスパイの名前とかのどうでもいい割に知った責任が重いやつばっかりだ。
「あー、はいはい。数年以内に旧魔王派はクーデター起こすからその時に存分にやれ」
「よっしゃぁ! 死ねシャルバぁぁぁぁ!」
シャルバ? 誰だっけそれ? まぁ、どうせ旧魔王派の誰かだろ。
「その時には、きっと俺もアンタの為に戦えると思うよ」
現在悪魔側から振られている仕事の多くははぐれ討伐。
それも秘密裏に。
たぶん駒王協定が締結されるまではこのままだろうな。
俺まったくクイーンっぽい仕事してないし。
しばらくセラの相手をしていると、部屋の角にログインエフェクト…じゃない、転移魔方陣が浮かんだ。
「やはりここでしたかお姉様」
現れたのは青いドレスに身を包んだソーナだった。
「あー! そーなたんだぁー! 一緒にのもぉー!」
「ダメです。パーティーは終わりましたが今からサーゼクス様が内密の御前会議を行いますので」
「えぇー! やだやだやだぁー! 飲むのぉー!」
「ソーナたん、この酔っぱらいさっさと引き取ってくれないか?」
「は?」
こわ…。
「ソーナさん、この酔っぱらいさっさと引き取ってくれないか?」
「元からそのつもりです」
ソーナはセラの顎を片手で掴んで口を開けさせると、毒々しい色の液体を流し込んだ。
ビクンッ! とセラが震えて顔を青くする。
「なに今の」
「酔い覚ましです。少し刺激が強いですが」
「あ、そ…」
ソーナがややぐったりしたセラを立たせた。
「じゃぁな、ソーナ。また近い内に」
「ええ、そうねカガリ」
そしてセラとソーナが転移で帰って行った。
「ん? アイツ俺の分身もっていかなかったか?」
side out
御前会議会場。
ぷにぷにぷにぷに…………。
「ふむ」
サーゼクスは目の前のナマモノをつついて感触を確かめた。
「くゅるるる……」
「セラ、私にも一匹貰えるようカガリ君にたのん…」
ガブッ!
「ッアァ━━━━ッッッ!?」
後書き
四十八枚目はこの作品のR18パートである『色欲の龍天使』にて公開しています。
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