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ある晴れた日に

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382部分:目を閉じてその九


目を閉じてその九

「近鉄の八十年代のあれもいいけれどな」
「あの帽子もいいよな」
「あっ、私その時の近鉄の帽子持ってるわよ」
 ここで言ったのは奈々瀬であった。
 彼女は自分のバッグに手を入れる。そうしてそれを出してきた。
 出て来たのは赤と白、それに青の派手な柄の帽子であった。前に文字が書いてあってそれに独特のデザインのマークもある。それを出してきたのだ。
「これよね、その帽子って」
「おい、いいの持ってるな」
「まだあったのかよそれ」
「お爺ちゃんから貰ったのよ」
 奈々瀬はその帽子を皆に見せながら述べた。
「この帽子ね。いい帽子だからって」
「そうだよな。やっぱりこの帽子な」
「最高にいいよな」
「ユニフォームも最高だったわよね」
「そうそう」
 この話に女組も加わってきた。春華だけがカラオケを使っている。
「物凄い派手だったけれどそれでも」
「物凄く格好よくて」
「あの時の日本ハムもよかったと思わない?」
 その日本ハムファンの茜の言葉である。
「オレンジのあれって」
「そうそう、あれもね」
「かなりよかったわよね」
「阪急なんかもね」
 話はすっかりパリーグになっていた。
「あの自分のチームのそれが入った帽子だよな。Hのじゃなくて」
「Bの方な」
 マニアックな話ではあるがそれでも進みはしていた。
「ユニフォームも黒と赤と白で」
「よかったのよねえ」
「私のライオンズは今もカラーは同じだけれど」
 そして恵美も言うのだった。74
「あの時の青一色はどうだったかしら」
「あれもいいじゃない」
 凛の言葉である。
「目立ったしね」
「そうよね。まあ阪神のあの縦縞は何とも言えないけれど」
 静華はどうしてもそれを一番としてしまうのだった。阪神ファンらしく。
「それでもあの時のパリーグの服ってね」
「いいのよねえ」
「巨人のは何時でも最悪だけれどな」
 こんな話をしているうちに春華の曲が終わったのだった。春華はここで皆に対してマイクを差し出してそのうえで問うのであった。
「それで次誰だよ」
「えっ、次か」
「次誰なんだ!?」
 皆ここで顔を見合わせた。
「そういえばよ。何か俺達あまり歌ってなくね?」
「だよなあ」
 このことにも気付いてしまうのだった。
「ええと、じゃあ野球の歌でも歌うか?」
「何する?」
 そのまま野球に入る一同だった。
「とりあえず六甲おろし入れて皆で歌って」
「後はベイスターズの歌でも入れておくか」
「北乃の店だしな」
 これはさりげない気遣いであった。
「後はまあ適当に入れて」
「適当に回して」
 あまりカラオケには頭がいっていないのであった。酒が回ってお喋りの方に向かっていた。これもまたカラオケ店の中での遊びの一つの方法である。
「まあ順番にやってって」
「そうしようかしら」
 そんな話をしながらまた注文する。すぐに明日夢がまたやって来た。
「はい、これね」
「あいよ」
「じゃあお皿空いたのはなおして」
 今度はピザであった。皆はそのピザを置く為にまず軽くテーブルの上を奇麗にしてそれからピザを置くのであった。
「さてと、皆で食べて」
「また飲もうか」
「それにしても皆今日も随分と楽しそうね」
 明日夢はその皆に対して言ってきた。
「全く。こっちは連日大忙しなのに」
「夜限定でしょ」
 静華はその明日夢に対して能天気に言ってきた。
「それにその分お小遣いになるからいいじゃない」
「それはそうだけれどね」
 このことは明日夢も認めた。
「けれどね。それでもよ」
「遊べないのが嫌とか?」
「お金が入ると思えばそれは我慢できるわ」
 この辺りはしっかりしている明日夢であった。
 
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