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ある晴れた日に

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376部分:目を閉じてその三


目を閉じてその三

「それだったら」
「わかってないわね。スリルよスリル」
 咲はいつもと同じことで返す。
「勝った時のあの最高の組み合わせもあれば負けた時のいつもの最悪の組み合わせもあるからこそ絶対に注文するのよ」
「それ四回に三回は変な組み合わせ来るよ」
 桐生は今のベイスターズの勝率から述べた。
「確か今の勝率二割五分だよね、あのチーム」
「記録じゃないの?それって」
 茜がさりげなく突っ込みを入れる。
「そこまで低い勝率って」
「ええと、確かあれだったわ」
 千佳が自分の頭の中のデータを出してきた。
「一番酷かったのが勝率二割六分三厘で一〇三敗」
「実際にそんなチームあったの」
 咲はそれを聞いてまず目をしばたかせた。
「ホークスも弱い時は凄かったけれどそこまではいってないわよ」
「ホークスの野球ってかなり大雑把じゃない?それにしても」
 奈々瀬は咲の贔屓のそのチームのことに突っ込みを入れた。
「連勝の後連敗とかするわよね」
「それがホークスよ」
 咲もそれを聞いても全く動じていない。
「打って打たれるのがよ」
「何か野球の原点に帰ったみてえな野球だな、おい」
 野本はそれを聞いて思わず言ってしまった。
「抑えて打って打てないのじゃねえのかよ」
「それ阪神じゃない」
 咲は今度は野本に突っ込みを入れた。
「そのまま。打てないって」
「こっちは伝統的にそんなチームなの」
 凛が少し憮然としながら咲に答えた。
「甲子園だからどうしてもピッチャーがよくないと駄目だからそうなるのよ」
「そういえばそうね」
 恵美もそれを聞いて頷く。
「殆どの時期でピッチャーが揃っているわね」
「けれどねえ。打たないから」
「兄貴だけだから」
 凛だけでなく静華も悲しい顔になっていた。
「兄貴だけ頑張ってくれてるのよね」
「兄貴いなかったらどうなるんだ?」
「怖いこと言うなよ」
 坪本は野茂に対して言い返す。
「暗黒時代だろ、それってよ」
「あの壊滅的に打てないあの時代かよ」
「打てなくてどれだけ負けたんだろうな」
 坂上と佐々はあの暗黒時代を思い出しそのうえで暗澹たる気持ちになっていた。阪神の長きに渡った伝説の暗黒時代である。
「思い出したくもねえぜ」
「斉藤とか桑田でたらマジで完封だったからな、あの時代は」
「しかしよ。あの時ってうちにはもっと負けてたんだよな」
 ヤクルトファンの春華の言葉である。
「一年で余裕で二十敗してたよな」
「してたしてた」
 同じくヤクルトファンの奈々瀬が彼女の言葉に頷く。
「物凄い負け方ばかりだったわよ。しかも」
「うるせえんだよ、おい」
 野本がその二人の会話に怒りに満ちた声を出してきた。
「そんなことは言わなくていいんだよ」
「って事実じゃねえかよ」
 春華も言い返す。やはり負けてはいない。
「実際どれだけ負けてたんだよ」
「巨人に勝てばいいんだよ」
 まさに阪神ファンの言葉だった。
「結局はよ」
「いや、負けてたし」
「ねえ」
 春華と奈々瀬の容赦のない突っ込みはまだ続いていた。
「だから頭にきたんだよ」
「こっちもね。巨人に負けてもらわないと困っるのよ」
 こちらも本音を言っていた。
「それが何だよ。全然打てなかったじゃねえかよ」
「最終戦で負けたりしたし十三ゲームひっくり返されたり」
「うう、それはあれなんだよ」
 事実を言われると実に弱い阪神ファンだった。実際に巨人相手にここぞとばかりに敗れてしまっているからこれは否定できなかった。
 
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