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魔法少女リリカルなのは~とある4人の転生者~

作者:通行人B
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第3話 得て嬉しきは竹馬の友

「八束神社か。思っていたよりきれいだな」

家から十数分走り続けて目的地である裏山にたどり着いたのだが(この年でそんなに走れている時点で体の異常性が伺える)、予想していたよりもというより遥かに綺麗な神社だった。

「そこらへんから森に入れるか」

異常に長い階段をのぼりきって鳥居をくぐって脇道に逸れて森に向かいつつ、それと同時に左手を振ってチュートリアルを出現させる。

「なになに、幻術の極意その一。『まずは確固たるイメージを作り出せ』?『想像力が力になる』か…」

この時、俺は説明に気を取られていなければ気づけたのかもしれない。後ろで自分のことを見ている人間が居たことに。

「こんな時間にここに人が来るなんて…」

そんな声すら今の俺には届いていなかった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

結局あの後、修行をすることになったのだが…またしても一つ失念していた。幻術の修行において重要なことを。

「かける対象が居ない…だと!?」

いや、まあ動物とかは居るんだけどさ。どうしても分かりやすい反応してくれるのは人間しか居ないんだよ。どうするか…正直ただ瞑想するだけならここに来た意味ないし、かといって今から海斗かハルを呼ぶのも気が引ける。結果…

「よし、仕方ないから体術と魔法の練習するか」

左手で幻術のチュートリアルを消して魔法と体術のものに切り替える。

「『魔力の練り方からスゴ技までマスタズーブック』に『これであなたも最強の仲間入り!武術コンプリートガイド』?タイトルからして地雷っぽいんだが、まあいいか」

このタイトル見た瞬間に不安がよぎったのは仕方ないことだと俺は思う。そんな不安を押しのけつつも早速魔法の練習に掛かることにする。

「なになに、魔力を練るときは…」

………

……



「何とかできた…」

結局魔力の生成をやった後集束や圧縮などの技能に手を出してみたが実際、やってみると結構疲れたな。感覚を掴むまでに結構時間掛かったし。説明によると魔法の使用は複雑なためデバイスなるものが補助してくれるらしい。

「そんなもんないぞ俺」

参った。あいにくと俺はデバイスなるものを持っていない。どうやら、魔法というものは複雑な魔法陣を必要とするものらしく某忍者漫画で言うなら『印』というものに該当する。だが、俺はそんなものを自力でやれる自身がない。そうなると自然に魔法の訓練に支障が出ることになるのだが…と思っていたところ、なにかが引っかかった。

「…あ!そうか、魔法陣が分からないならその必要のないものを使えばいいんだ!」

さっき出した例えのおかげで見えたぞ。解決策が。あの、バカでもできるという『アレ(・・)』を魔力で再現すればいいだけのこと。

「魔力を手のひらに集束させて、乱回転。それを保てればかなりいいところまでいくんじゃないのか」

実際アレの威力はすごかったし。ただ、不安なのは魔力で再現できるかってところだけど…

「やってみないとわからないか」

物は試しと、手のひらを出して魔力を練り、集束させる。すると手のひらにぽつぽつと翠の光が発生し始め、球体になっていく。

「集束の段階では問題なし。これはやり方さえわかってれば出来るか」

ソフトボール大の大きさになったところで集束を停止させて次の段階に移ることにするのだが…

「うお、なんだコレ!?」

魔力の球体に回転を加えようとしたところ、魔力が異常な速さで回転をし始め留める間もなく破裂して霧散してしまったのだ。…失敗のようだ。

「思った以上に難しそうだな…圧縮しすぎたのか?」

集束の段階で球体内の魔力の密度を高くしすぎたせいで暴発したのか?そうなると集束・圧縮の段階で回転したときにバランスが崩れない絶妙な密度で魔力を圧縮しないと破裂したり形が崩れて留める段階にまで進めそうにないな。

「これは数打って感覚で掴むしかないな…」

そう言って再び手のひらに魔力を集束させ始める。さっきは濃すぎたのなら今度は薄くだ。

「次はこのくらいだ」

先ほどよりも心なしか色が薄くなった球体に回転をかけ始めるが、

「今度は少なすぎたか…これ結構骨が折れそうだな」

少し薄めにした程度だったが、先ほどとは違って今度は球体が萎んで消滅してしまった。意識的に細かく調節したつもりだが、それでも駄目らしい。長丁場になりそうだと、意識を入れ替える。

「へ?」

意識を入れ替えたときに初めて自分以外の人間(・・・・・・・)の気配に感づいた。馬鹿みたいだが修行に集中しすぎて完全に気づかなかった。慢心のツケをこんな形で払うことになるとは。…たまたま今来ただけかもしれない。そうさ、その可能性は大いにある。あるとも!やけなんかじゃないぞ!

「あ…」

「あ…」

で、振り返った。んでもって木陰から除いている彼女(・・)とばっちり目が合ってしまった。

「さっきの綺麗だったね」

その微笑みと共に放たれたその一言を聞いて、

「…ああ、終わったな」

俺は死ぬ瞬間のとき以上にその言葉を実感した。

………

……



その後しばらくして先日の少女なのはの様に処理オチして逃走…というわけにもいかず、先ほどの少女と隣り合って腰を下ろしている現状、わが胸を占めるは、

「…」

「…(き、気まずい!)」

落ち着いたせいで逆に何を喋ればいいか分からなくなってしまった。前世での18年間の経験も喧嘩ばかりとあってはこんな時には何の役にも立たないのだ。そう考えてくるとなんだか前世の自分が酷くむなしく思えて泣けてくる。コミュニケーション能力磨いておけばよかったなぁ。

「どうしたの?」

「え、なにがっ!?」

そんな風に考え込んでいた所為か話しかけられてびっくりしてしまった。

「ううん、なにか悲しげな表情だったから…」

うん、間違っても本当のことは言えない。恥ずかしすぎる。

「自分の迂闊さを嘆いてたんだ…さっきのだけど…」

この際見られていたのはいい。手品だといって誤魔化すか、と思ったが、

「魔力って言ってたけど魔法を使えたりするの?すごいね!」

その笑顔のその一言に撃沈です!って、独り言まで聞かれてたんかいっ!?

「あの、つかぬ事をお伺いしますが一体どこからお聞きに?」

あまりのテンパり具合でつい敬語を使ってしまった。次の一言でさらに加速することになる。

「神社に来て『八束神社か。思っていたよりきれいだな』って言ってたところからかな」

ハイ、アウトォォォオオオオオオオ!最初からじゃん!もう誤魔化し聞かないレベルだっつーの!

「もうなんかどうでもよくなってきたな。うん」

心底そう思う。一転してあきらめの境地だ。そうだ。彼女に言わないでもらえるように頼むか。

「えっと、出来ればこのことは誰にも言わないで欲しいんだけど…」

「大丈夫、私口が堅いほうだから」

任せなさいと微笑みながら告げてくる。…それが今は聖母の笑みに見える。

「ありがとう。東堂朔也って言うんだ。きみは?」

「わたしは、神咲冬華って言うの。ここで巫女をしてるの。って言っても見習いなんだけどね」

「巫女ってことはもしかしてこの神社、神咲さんが掃除してるのか?」

「そうだよ。毎日って言うわけじゃないけど。あと、わたしのことはトウカでいいよ。多分同じくらいだと思うし。わたしは来年に小学校に入るの。東堂くんは?」

「同じく来年に入学だよ。俺のことはサクヤって呼んでくれトウカ」

なんだかんだでアイツら以外で初めて出来たな同年代の知り合い。

「うん。ところでサクヤくん」

「どうした?」

「サクヤ君明日も来る?」

「一応。ここ以外に人目につかないところが無いんだよ。だから出来れば使いたいなぁって思ったりしてるんだけどそこんとこどうなんでしょうか?巫女さん見習いのトウカさん」

「う~ん、どうしようかな?」

指を口に当てて考え込むトウカ。なんか、わざとやってるな?にしても、様になってるなぁ。

「お願いします、掃除でもなんでもするんで!」

「ふふ、別にいいよ。さっきも来て欲しくて聞いたんだし。あ、でも掃除はサクヤ君がいいなら手伝って欲しいかな?最近お姉ちゃんが怪我してしばらく掃除ができなくなっちゃうところだったから」

「まあ、一人でやらせるわけにもいかないしね。いいよ、掃除くらい。場所を借りられるなら全然!」

「ありがとう、サクヤ君」

「なに、いいってことさ。俺も場所借りられて助かるし。それに、」

「それに?」

少し、タメた俺にトウカが首をかしげる。

「もう俺たち…その、友達だろ?」

「…うん!」

俺の言葉にトウカが満面の笑みで頷いてくれた。なんか、修行の成果以上にこの笑顔が今日得たもので一番のような気がする。

…もっとも、この出会いがのちのち俺を否応無く厄介な状況に身をおかせることになるのだがこのときの俺はそんなこと知る由も無かった。
 
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