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ある晴れた日に

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338部分:白銀の月その三


白銀の月その三

「きゃっ!」
「これは確かに怖いな」
「え、ええ」
 思わず声をあげてしまった未晴は今の正道の言葉に頷いた。
「ここは確かに」
「尋常や怖さじゃないからな」
 そして正道もこう言うのだった。
「このお化け屋敷はな」
「よくこんなの考えたわよね」
「廃虚になった病院か」
 正道は言いながら周囲を見渡す。そのうえであえて開けられている病室の中を見るとそこには手術されたままで転がっている亡骸を見るのだった。それは解剖されておりその腹を露わにさせていた。やはりそれを見ると牧村もかなり引くものがあったのは事実であった。
「これはな。やっぱりな」
「怖過ぎるとこがあるわよね」
「そうだよな、ここはな」
「何度来ても怖いのよね」
 未晴もまたその病室を見ていた。そうしてそのうえで言うのだった。
「ここはね」
「来る度に出て来るものが違うしね」
 そうしたことを変えてきているのもこのお化け屋敷が怖がられる理由なのだ。
「だからね」
「ここは怖いな」
「そうなのよね。あんまりにも怖いから」
 未晴はもう病室を覗いてはいなかった。そこにまた何かが動いたのが見えたからだ。それでさっと視線を外したのである。怖いからである。
「それに今だって」
「ああ、あれ医者だな」
「また出て来たのね」
「どうする?見るか?」
「いいえ」
 未晴はそれは断るのだった。
「遠慮するわ、ちょっとね」
「そうか、俺も少しな」
 正道もこう言って立ち去ろうとする。しかしここでその病室から医者が出て来たのだった。これまた実に気色の悪いメイクのマッドサイエンティストであった。
「ぐははははははははははっ!」
「また出て来たし」
「何かこのメイクも凄いな」
 腹から内臓を出し右目が飛び出たままになっている物凄い格好である。まるで自分自身まで改造手術を施してしまったかのようである。
「何かの漫画に出て来るみたいだな」
「そうね。少女漫画で怖いのに出て来そうなね」
「よくこんなものを毎回毎回思いつくな」
 牧村の言葉は感心さえしたものだった。
「アイディアも豊富だな」
「頑張って考えているのね」
「人を怖がらせる為にな」
 そういうことにも努力が必要なのである。そうでなければ本当の意味でお化け屋敷はできはしない。これは何事にも言えることではある。
「必死に考えているんだろうな」
「その介が出てるわよね」
「本当にな」
 未晴は医者が姿を消してとりあえずは落ち着いた。しかしそれでも警戒はしていた。廊下は相変わらず暗く何処から何が出て来るのかわからなかった。
「こんな場所は滅多にな」
「そうよ。何か見てるだけで怖いものがあるわ」
 未晴は遠くを見る。しかしそこには何も見えてはいなかった。今のところは。
「ここって」
「一人で行くのは俺でも少し勘弁して欲しいな」
「男の人でも難しいのね」
 未晴はこのことにふと気付いた。
「ここってやっぱり」
「じゃあ男一人で入った奴見たことあるか?」
「ないわ」
 これが答えだった。
「そういえば」
「ここはそこまで怖いんだよ」
 正道は未晴が答えてからまた述べた。
「俺だって一人だとちょっとな」
「男の子から見てもここは怖いのね」
「少なくとも一人で入られる場所じゃない」
 そういうことだった。
 
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