ある晴れた日に
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319部分:その日からその十五
その日からその十五
「確かに一つの場所に集まるより二つの場所にいた方がよく見えるし」
「連絡はこれでね」
明日夢は言いながら今度は携帯を出してきた。
「それでどう?」
「いいんじゃね?」
「だよな」
皆もそれに賛成して頷き合う。
「とりあえず二手に分かれてな」
「ああ、そうそう」
茜がここでまた言うのだった。
「二手に分かれるのならどうせだから?」
「んっ!?」
「何か考えあるの?」
「もう徹底的に化けない?」
こう皆に提案するのだった。
「カップルに。そうしたらばれないんじゃないかしら」
「おい、カップルってよ」
「こいつとか?」
「こんなのと!?」
男組も女組も互いを見合いながら言い合う。その顔だけであからさまに嫌がっているのがわかる。皆そういう意味で同じ顔になっていた。
「一緒にって」
「何でよ」
「何でもかんでもそれでもそれだと自然よ」
しかし茜はまだ言うのだった。皆が露骨に嫌な顔を見せてもだ。
「そうじゃない?遊園地なんだから」
「そうね」
それに頷くのは恵美だった。
「確かにこんなにぞろぞろ集まっているよりずっと自然ね」
「しかしよ。この連中とか?」
野本は露骨に女組を見ながら話す。
「こんなよ。俺にだって選ぶ権利はあるぜ」
「五月蝿えよ、それはこっちの台詞だよ」
野本の今の言葉に返したのは春華だった。
「うちだってよ、手前なんぞと一緒になりたかねえよ」
「私もよ。絶対に嫌」
「私も」
女組は次々に言い合う。最早話はどうしようもなくなっていた。
男組も拒否反応を示し女組も嫌がっている。茜の言葉はそのまま抗争を作り出してしまっていた。しかしここで明日夢が言った。
「じゃあ私凛と一緒になるから」
「そうよね。私も少年と」
二人はここでもじゃれ合うように抱き合うのだった。遊園地で見てもかなり淫靡な光景になってしまっている。少なくとも健全とは言えない様子だ。
「一緒にいるから」
「それでいいわよね」
「いいけれどあんた達レズにしか見えないし」
「だよな、おい」
野本と咲がそんな二人に突っ込みを入れる。
「けれどこれでいいんじゃない?一つ組み合わせができたわよ」
「それで他はどうするんだ?」
「何か男同士女同士でもいいかしら」
茜は速攻でカップルになった二人を見て言うのだった。
「考えてみれば遊園地って友達同士でも行くわよね」
「そうだよ、こんな連中と一緒になるなんてな」
「こっちだってお断りよ」
やはりカップルになるというと拒否反応を見せ合うクラスの面々だった。そしてそのうえで言い合うのだった。
「じゃあまず俺と御前な」
「うん」
野本と竹山が二人になった。
「何かすげえ腑に落ちないけれどな」
「気にしなかったらいいじゃない」
「ちっ、御前は普通なんだな」
いつも通り冷静でいる従兄弟を見て憮然とした顔になる。しかしまだ二人は言うのだった。
「まあいいさ。気心は知れてるしな」
「宜しくね」
「さて、じゃあ僕は」
「組まない?」
桐生と加山であった。
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