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ある晴れた日に

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316部分:その日からその十二


その日からその十二

「女の子同士だから余計にね」
「しかも二人共結構可愛いから余計にね」
 咲も何と言っていいかわからない感じだった。
「妖しく見えるのよ、物凄く」
「何かこっちの方が仲進展してるよな」
「確かに」
 野本の言葉に静華が頷く。
「あの二人よりね」
「しかしよ。本当に動かないな」
 坪本は向こうの車両の二人を出入り口のガラス越しに見ながら言った。
「イグアナかよ、本当に」
「また変な例えだな」
 佐々は彼の言葉に眉を顰めさせて返す。
「イグアナって何なんだよ」
「イグアナって爬虫類だから暖かくならねえと動かないだろ?」
 坪本は佐々だけでなく皆にも話すのだった。
「それも全然な」
「って御前何でそれ知ってるんだ?」
 野茂はそれを彼に問うのだった。
「イグアナが暖かくならないと動かないなんてよ」
「ああ、俺の家で飼ってるからだよ」
 だからだというのだった。
「俺の家にいるからな。だからわかるんだよ」
「へえ、面白いの飼ってるな」
 坂上は彼のその話を聞いて興味深そうに声をあげた。
「イグアナかよ。あれって飼うの難しいんだよな」
「ああ、別にそういうことはないぜ」
 しかし坪本はそれは否定した。
「餌代だってかからないしな。大人しいしよ」
「そうなのかよ」
「ああ。爬虫類って結構飼いやすいんだよ」
 そしてこのことをまた話すのだった。
「いいぜ。中々」
「でえ、そのイグアナの名前は?」
 恵美はそれを尋ねた。
「何ていうの?それで」
「オマリーっていうんだよ」
 その名前についても話した。
「オマリーな。わかるか?」
「オマリー。ヤクルトの助っ人よね」
「そうだよな」
 その名前を聞いて奈々瀬と春華が顔を見合わせて話をする。
「日本シリーズでも大活躍した」
「何で阪神ファンのおめえが名付けるんだよ」
「いや、オマリーって阪神の助っ人じゃねえか」
 しかし坪本はこうヤクルトファンの二人に反論するのだった。
「関西弁で日本語喋るしな。六甲おろしだって歌ったぜ」
「それで阪神なのね」
「それでか」
「っていうか片岡にしろ金本兄貴にしろ下柳にしろそうだろ?」
 彼等もだというのである。
「皆阪神だろうがよ」
「真弓も元々はそうね」
 恵美はまた随分と伝説的な名前を出してきた。
「最初は太平洋クラブライオンズにいたけれど」
「っていうかよく知ってるわね」
 茜はその恵美の横で唖然としていた。
「そんなことまで」
「西武ファンだから」
 だからだと茜のその言葉に答える恵美だった。
「当然知ってるわ」
「それでなの」
「ええ。江夏に田淵も阪神にいたけれど」
「本人さん達奇麗に忘れてない?ひょっとしなくても」
「ええ、その通りよ」
 咲への今の返事は何処か弱さが見られた。
「田淵さんなんて六年も西武にいたのに」
「やっぱり阪神の方がいいの」
「阪神は最高らしいから」
 こう言う人間はかなり多い。そのオマリーにしろだ。
 
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