魔法が使える世界の刑務所で脱獄とか、防げる訳ないじゃん。
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第一部
第44話 ごっちゃごちゃ
「……あーやべ」
「あれ、響じゃないですか。何がやばいのですか?」
地下牢獄にある拷問室を、目隠しだったり枷だったりを付けたレンさんを連れて訪れてみたのですが、扉を開けた瞬間にこれです。全く、酷いじゃないですか。
「……看守ッ! レンッ‼︎」
「って、喋るんじゃねぇよ」
「看守? それは私の事ですか?」
「琴葉も一々反応すんな‼︎」
むっ。メイドのくせに、私に命令しましたね?
後で沢山お仕事をあげましょう。そして、これからずっと私に命令なんて出来ない様なカラダにしてあげます。
「ふわっはっはっは‼︎ 牢獄に囚われる愚かな罪人達よ‼︎ オレ、グレース・アートルム様が来たぞぉ‼︎ ってうわっふぉい⁉︎ あっるえぇっ⁉︎」
相当荒ぶってる人が来ましたね。一体誰ですか……って。
「グレースですか。如何したんですか? そんなにテンションが高いなんて、何時振りですか」
「うっわ、はっず‼︎ 誰も居ないと思って叫んでたら普通に人居たんだけどマジヤヴァァアイ」
「貴方のテンションの方がマジヤヴァァアイです」
「あっは! ノってくれる琴葉ちゃんマジ好き」
「あっは。有難う御座います」
……さて。突然荒ぶってるグレースが現れたのですが、問題はそこでは無くて、彼が連れている人です。
白い髪に赤い目。一見女の子っぽいですが、男の子ですね。
「あっそうだ。此の子、最近マフィアビルに侵入してきた第三号クンだよー! 二人の御仲間サンだって事まで確認済みだぜぃ‼︎」
「あ、御苦労様です。第二号であるレンさんは『琴葉を助けてグレースをぶん殴る』事が目的と話して居ましたが」
「あー……それはマジかもしれん」
「あ、マジなんですか。てっきり冗談かと思って響に受け渡そうと思って居たのですが」
「あれー。琴葉ちゃん、会話の先頭にワザと“あ”って付けてる? “あ”多くね?」
「あれー、気付かれちゃいましたー? まぁ偶然って事にしといて下さい」
って、問題はそこじゃないでしょう‼︎
侵入者第一号の青髪眼鏡さん、第二号のレンさん、第三号のアルビノさんを如何するかです‼︎
取り敢えず、レンさんに付けていた拘束具を全て外して、拷問室内の椅子に座らせる。
グレースも、アルビノさんを拷問室の中に入れて、椅子に座らせる。
さて、此処からは響に任せて、私はゆるりと寛いでいましょうかね。
「……琴葉。もう大体此奴等の目的とかは見当が付いているんだが」
「えっ、そうなんですか。流石響、仕事が早いですね!」
「っつーか、知り合いなんだが⁉︎」
「えっ、そうなんですか。となると、敵組織の暗殺者なんですね! 即刻処刑を……」
「そうじゃなくてだな⁉︎ 此奴等は暗殺者でも無い、ただの第一魔法刑務所の囚人なんだが‼︎」
「えっ、そうなんですか。なら、被験体にしましょうそうしましょう! 今刑務所に戻ったとして、どうせ看守共の手で殺されるんですからね」
「嗚呼、ハイ。分かりやしたー……」
こら、響。返事はしっかりしてください。
まぁ如何でもいいですけど。
此処までで疑問に思った事があります。
それは、何故響が囚人、しかも第一魔法刑務所と言う魔法犯罪者を取り締まる最大の刑務所の囚人の事を知っているのか。
同業者でも無い囚人を、何故知っているのか。
レンさんについて探ってみた時にまた頭痛が来た辺り、要さんと侵入者達は少し前の、消された記憶の辺りの私と、何かしらの関係があったのだと考えられます。
青髪眼鏡さんが私の事を“看守”と呼んだのと、三人が囚人である事を考えると、若しかして———
否、そんな事は絶対に有り得ない。
私はずっとマフィアに居た筈。
彼の子を匿った事に因って、私は被験体になった。
その後、私は四年前、彼の人達と一緒に此処を抜け出した。
あれ、私は一度マフィアを裏切っている?
抜け出した後、私は何処で、何をして居たの?
分からない。
なんで……?
なんでわからないの?
痛い、痛いよ。
苦しい、嫌だ。
助けて、助けて助けて助けて。
「ねぇ、私の空白の四年間について教えてくれる? 響」
「はぁ⁉︎ いきなり如何したんだよ! 此奴等の事ぁ俺に任せて、何も考えんな‼︎」
「響は知ってるんでしょ? “四番”と、“八九番”と、“レン”と、“要”の事」
あれ、“四番”って何? “八九番”って何?
レン? 要? 違う、違う違う。
私は仲間じゃ無い人のこと、呼び捨てになんかしない。
「おい、それ以上考えるな‼︎ 琴葉! それ以上は反逆行為になるぞ‼︎」
「ねぇ、教えてよ……! 私は四年間、何処で何をして居たの? なんで侵入者達は私を助けるって言うの? 私、過去にマフィアを裏切ったよね? なんで此処に居られるの? なんで私は生きているの?」
「止めろ‼︎ それ以上は‼︎‼︎」
「嗚呼、分かった。私は第一魔法刑務所の看守だったんだ。マフィアを裏切って、看守になったんだ。だから———」
私は死ぬね———。
直後、大きな爆発音に似た音と共に、拷問室内は瓦礫に包まれた。
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