ある晴れた日に
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293部分:空と海その二十六
空と海その二十六
「けれど。それでも」
「何処に行くの?」
「あそこ行きましょう」
言いながら東の方を右手の人差し指で指し示した。見ればそこは岩場であった。
「あそこにね」
「ああ、あそこね」
「って何で岩場なんだ?」
そのことに首を傾げる者もいた。
「あの岩場に」
「そうよね。何でかしら」
「どうしてあの岩場なんだよ」
「何かあそこから見た景色が奇麗みたいだから」
だからだと答える未晴だった。
「だからね。どうかしらって思って」
「そう。だったら行ってみる?」
「そうするか?」
皆傾げさせた首を元に戻してそのうえでまた言い合うのだった。
「とりあえず竹林が悪いこと言うわけないしな」
「野本と違ってな」
「ここでまた俺の名前出すんじゃねえよ」
自分の名前が出て口を尖らせる野本だった。
「いい加減にしろよ、ったくな」
「だからいちいち気にしなかったらいいでしょ」
「そうだよ。そうやって反応するから煽られるんだろ」
他の面々はすぐに呆れた声で彼に告げた。
「まあとにかくな。岩場に行ってみるか」
「そうね。ビーチバレーも飽きたところだし」
「丁度いいわね」
皆また言い合うのだった。
「じゃあ行こうか。皆で」
「そうよね。じゃあ」
「行きましょう」
こうして彼等はその岩場に行くのだった。砂浜を歩いていくがこの砂浜が結構暑くなっていてそれが厄介ではあった。
「うう、ジリジリくるな」
「暑いからねえ」
「夏だからね」
その暑さは苦笑いをしながらも我慢できるものであった。
「これは仕方ないか」
「我慢してね」
「で、そんな中でもかよ」
「あんたは。それ持ってるのね」
「取られたら大変だからな」
正道はここでもギターを持っていた。それを背負いそのうえで砂浜を進んでいるのだった。炎天下で日差しもジリジリと来る中でである。
「だからな。これはな」
「持って行くのね」
「ギターは俺の心なんだよ」
彼の言葉は何処でも変わることがない。
「俺のな。だから絶対にな」
「手放せないのね」
「ああ、そうだ」
皆の問いにはっきりと答えたのだった。
「これだけはな」
「いつも凄いよな」
「ええ」
皆そんな彼の言葉を聞いて感心した言葉を出すのだった。
「ギター手放さないでな」
「身体の一部みたいに」
「身体の一部なんだよな。本当にな」
彼はまた言う。
「俺にとっちゃな」
「そういえばさ。音橋君のギターって」
竹山はふと気付いたように言葉を出した。
「上手くなってない?入学の時と比べて」
「そうよね。確かにね」
「あの時よりさらに上手くなってるよな」
「ええ」
皆も彼の言葉に頷く。確かに彼のギターは上手くなっているのだった。
「やっぱりいつも演奏してるから?」
「それで?」
「そうだろうな」
そして正道も自分自身でも頷くのだった。
「本当に毎日やってるからな」
「つまりあれだよな」
そして春華がいつものタイミングで言うのだった。
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