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歳を取って

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第一章

               歳を取って
 かつての美少年美青年も歳を取ればどうなるのか、沢田羊三はすっかり皺だらけになり髪の毛は薄くなって真っ白になり髭までそうなって身体もすっかり衰えたその風貌で低くなり衰えた感じの声で孫達に笑って話していた。
「お祖父ちゃんは昔凄くもてたんだぞ」
「そんなにもてたの?」
「そうだったの?」
「そうさ、小学校の時から五十位までな」
 今は七十だ、だがその頃までというのだ。
「もててもてて仕方なかった、お陰でお祖母ちゃんも随分ヤキモキしたもんだ」
「お祖母ちゃんがそうなる位って」
「お祖父ちゃんそんなにもてたんだ」
「僕全然もてないのに」
「僕もだよ」
「ははは、お祖父ちゃんみたいな顔になればな」
 その時はとだ、羊三は孫達にまた笑って話した。
「御前達ももてるぞ」
「もててもてて仕方ないんだ」
「そうなるんだ」
「そうなって困るからな」
 家の縁側でお茶を飲み日向ぼっこを楽しみながらだ、羊三は孫達に話した。だが孫達が帰るとだった。
 妻の和佳奈にだ、羊三はこんなことを言った。
「本当に昔のことはな」
「あくまで昔よね」
「もててもな」
 それでもというのだ。
「今じゃな」
「あんた昔は本当に凄かったからね」
 妻としていつも身近にいてヤキモチも散々した立場からだ、和佳奈は夫に話した。和佳奈の顔も皺だらけで髪の毛も雪の様だ。背中もやや丸くなっていて動きも鈍い。
「それがね」
「今はこの通りだ」
「お爺さんになって」
「そっちもお婆さんになってな」
「本当に変わったね」
「ああ、変わりに変わって」 
 それでというのだ。
「別人みたいだよ」
「そうなったね、お互いに」
「顔にスタイルにどっちも自信があって」
 五十まではそうだった、容姿については本当に自信の塊だった。
「下手なホストや俳優よりももてて会社でも大人気だった」
「仕事も出来たしね」
「敵なしだと思ってたさ、しかしそれも本当に昔で」
「只のお爺さんになって」
「もうもてようという気もない」
「ファッションもね」
「そんなのもっとだよ」
 もてようという気よりもというのだ。
「ないさ」
「じゃあこのまま」
「もう静かに暮らすか」
 その余生をというのだ。
「そうするか」
「あんたはそれでいいんだね」
「何しろ七十だ」
 今度は具体的な年齢の話をした。
「流石にその歳になるとな」
「何かをしようって気にもなれなくて」
「孫と話をして散歩をしてゲームをして」
 テレビゲームだ、羊三はファミコンが出て来た時から楽しんでいる。それで今も趣味の一つにしているのだ。
「死ぬまでな」
「ゆっくり暮らすのね」
「そうしようか」
 こう言って実際にだった、羊三はもう多くの女性が寄ってきた頃は嘘の様に静かに暮らし服装もただ暑さ寒さを意識するだけで。 
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