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ある晴れた日に

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241部分:オレンジは花の香りその二十四


オレンジは花の香りその二十四

「一人で弾いて寂しい時があってもな」
「二人だと違うのね」
「聴いてくれる人がいないとな」
「そうよね。そういう時ってあるらしいわね」
「そういう時にな。ギター好きだよな」
「ええ」
 また正道の言葉に静かに頷いたのだった。彼はそれは横目で見たままだった。顔は正面に向けて前を向いている。
「好きよ」
「そういう時。頼むな」
「わかったわ」
 また彼の言葉に頷いたのだった。
「それもね」
「俺、こういうのははじめてだけれどな」
「私も。何か自然にこうなったって感じかしら」
「だよな。色々と一緒にいるうちにな」
「自然だけれど」
 それでもという言葉になってきていた。
「それでも。違和感とかはないわ」
「俺もだよ」
 二人の心境は同じだった。
「何かな。こういうのはじめてだけれどな」
「はじめてなの?」
「ああ」
 未晴の言葉に対して静かに頷いたのだった。
「だから。戸惑ってるけれどな」
「私も」
 そしてそれは未晴も同じなのだった。
「実はね」
「おたくもか」
「彼氏とか。そういうのいてくれたことなかったから」
「ずっとか」
「そうよ。ずっとよ」
 また話す未晴だった。
「ずっとね。そうだったからわからないけれど」
「わからない者同士なんだな」
 正道はそのことがわかった。
「二人共。そうなんだな」
「それでもいいかしら」
 未晴は少し俯いた顔で呟いたのだった。ここでもだった。
「二人共わからないままでも」
「最初はそれでいいんじゃないのか?」
 しかし正道はそれならそれでいいと言った。
「誰だって。最初は何もわからないんだよ」
「最初はなのね」
「けれどそれがお互いならな」
「お互い。支え合ったりできるわね」
「だから。いいんじゃないのか」
 これが彼の意見であった。
「俺はそう思うけれどな」
「そうね」
 未晴は少しだけ考えてから正道の言葉に答えたのだった。
「二人だったら。そうよね」
「一人だともうそれでどうしていいかわからないけれどな」
「わからない同士だったらね」
「ああ。お互い支え合って進むことができるからな」
「じゃあ。二人で」
 未晴は少しだけ俯いたまままた言葉を出した。
「歩いていけばいいわね」
「そうだな。じゃあな」
「ええ」
「ところでな」
 正道は未晴と二人の話を終えてからそのうえでまた言ってきた。
「何?」
「あのオレンジだけれどな」
 彼が話すのはオレンジのことだった。この日のパーティーで未晴が持ってきたそのオレンジのことだ。彼はそのオレンジのことを話す。
「あれ、国産だったよな」
「ええ、そうよ」
 まず正道のその言葉に頷いたのだった。
「それがどうかしたの?」
「そうか」
 正道は最初はその言葉に応えた。
 
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