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ある晴れた日に

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240部分:オレンジは花の香りその二十三


オレンジは花の香りその二十三

「で、相手は男か?女か?」
「男の子だったの」
「悪ガキなんだな」
 そのこともわかる正道だった。
「どうせ意地悪な奴だったんだな」
「色々されたわ。悪口だって言われたしその意地悪だってされたし」
「それであの五人がか」
「ええ。そのいじめっ子をとっちめて」
 そういうことだった。これは正道にも容易に読めた展開だった。話を聞いていて内心やっぱりな、と思ったがそれは言葉には出さないのだった。
「それでね」
「助けてもらったんだな」
「自転車乗れるようになった時も皆で助けてくれたし」
「皆でか」
「ええ。皆励ましてこけたら立たせてくれてそれで頑張れたの」
 このことも話す未晴だった。
「おかげでね」
「色々と助けてもらったんだな」
「落ち込んでいる時はいつも優しくしてくれるし。いい友達よ」
「あんないい加減な連中からは想像できないけれどな」
「いい娘達よ」
「まあ悪人じゃないのは確かだな」
 これは一目でわかることだった。誰が見てもだ。
「それはな」
「だからよ。咲達大好きなの」
 話すそのうえで微笑んだ。雨の中を二人並んで歩きながら。
「ずっとね。これからもずっと」
「そういうの。いいよな」
「ええ。けれどね」
 ふと未晴の言葉の調子が変わってきた。
「それもね」
「それも?」
「増えそうなの」
「増える?何がだ?」
「何がって言われたら」
 未晴の言葉が少し止まった。
「言ってもいいかしら」
「言わなきゃわからない話ならな」
 正道はぶっきらぼうに応えた。
「言いたくない話は聞かないしな」
「じゃあ。一つだけ言うわね」
 未晴は顔を少しだけあげてまた言ってきた。
「このまま。歩いていけたらいいなって」
「このままか」
「ええ。このまま」
 声は微笑んでいたが顔は俯いていた。その声も雨の音を頼りにできるだけ彼に聞こえないようにしているかのようだった。
「このまま。いいかしら」
「いいんじゃないのか?」
 また答えた正道だった。
「俺もな。こうして」
「歩いていたいのね」
「雨でもいいさ」
 彼は顔を少しあげていた。そのうえで少し上を見ていた。
「雨でもな。このままだったらな」
「そう。有り難う」
「おたくそれでいいんだな」
 言ったそのうえでまたぽつりと問うたのだった。
「このままで」
「このままじゃないと。それはね」
「そうだよな。そう言うと思ったさ」
「思ってたの」
「話の展開ってやつかな」
 この辺りはあえてぼかしたのだった。
「それでな」
「そう」
「雨でも風でも」
 彼はまた言った。
「一人だとどうしようもなく寂しくてもな」
「二人だとね」
「ギターだってそうさ」
 今度は自分がいつも持っているギターのことを話した。ギターは今もその背に背負っている。丁寧にケースに入れてそのうえでだ。
 
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