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ある晴れた日に

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227部分:オレンジは花の香りその十


オレンジは花の香りその十

「そういうのないわよ」
「じゃあ中森一本か?」
「それもありか」
「どうしても私をレズにしたいのね」
 明日夢は皆のそうした検索にいい加減嫌な顔になってきていた。そしてそれを言葉にも出すのであった。
「悪意でもあるの?本当に」
「私も何か頭にきてきたんだけれど」
 その相手と言われている凛も参戦してきた。
「私も少年とは何もないから。これ本当よ」
「ちっ、そうかよ。面白くねえなあ」
「本当に何もないのかよ」
 どちらかというと男組の方がそのことに不満そうであった。それが言葉にも出ている。
「まあそうだろうとは思っていたけれどよ」
「何だ」
「何だじゃないわよ、何だじゃ」
「勝手に人の関係妖しいものにしないで欲しいわね」
 これまたかなりあからさまに嫌悪感を露わにする二人だった。
「そりゃ私が男の子だったら凛みたいな娘彼女に欲しいけれど」
「私も。少年みたいな娘彼女だったら」
「だからそう言うから誤解されるのよ」
 奈々瀬がそんな二人に突っ込みを入れた。
「二人共そう言うから駄目なのよ」
「それはそうだけれど」
「けれど何もないから」
「ああ、もうわかった」
 正道はこれで話を強引に終わらせにかかってきた。皆の中でこう言ったのだった。
「わかった。それでだ」
「ええ」
「今夜場所はライオンズブルーだな」
 このことを明日夢達に問うのだった。
「そこでいいんだな」
「ええ、私はそれでいいわ」
 貸す当人である恵美の返事だった。
「それでね。今お店私がやってるようなものだから」
「あれっ、そうなの?」
「お店のことも勉強しろって。親に言われてるのよ」
 こう加山に答えるのだった。
「それでね。今お店は実質一人でやってるのよ」
「それはまた大変だね」
「楽しいわよ」
 しかし恵美にとってはそうした仕事も楽しいものらしい。リラックスした声だった。
「それにこれで生きていくんだし」
「生きていくんだ」
「喫茶店の娘が喫茶店で生きていかなくて何処で生きていくのよ」
 恵美の言葉はこれまた随分とリアルなものであった。
「そうでしょ?この辺りは皆同じよ」
「そういうものなんだ」
「同じよ。もっとも生きるからには楽しまないと」
 同時にこうした言葉も出す。
「そういうことでね」
「じゃあ今夜は楽しむんだな」
「ええ」
 正道の言葉には頷いてみせた。
「そのつもりよ。それじゃあ今夜ね」
「ああ、楽しみにしておくな」
「ケーキも楽しみしておいてね」
「サンドイッチもな」
 明日夢と佐々は相変わらず自分達の在庫一掃に余念がなかった。
「物凄く美味しいからね」
「頬っぺたが落ちる程にな」
「マジで胃薬用意しとくからな」
 そんな二人に春華が突っ込みを入れる。
「何かあったらおめえ等承知しねえからな」 
 こんな話をしているうちに夜になった。皆その貸切の恵美の家の店に入る。店の中は床は木造でブラウンだったが壁は違っていた。壁は水色に近い青だった。
「ああ、やっぱりね」
「そうだと思ったよ」
 静華と坪本が店の中に入るとすぐに言った。
「だからライオンズブルーなのね」
「この青だからかよ」
「そうよ」
 恵美は店に入って来る皆をカウンターで迎えていた。青のジーンズに白いブラウスというラフ名格好の上に白いエプロンを身に着けている。
 
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