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レーヴァティン

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第百話 北部統一その八

「自然と」
「そういうことか」
「傷だらけの身体は格闘家や軍人の個人なら誇りにもなるでしょうが」
「それが国だとな」
「誇りどころか」
「無理をしてきた、している証だな」
「ですから我々もです」
 ローマもというのだ。
「まことにです」
「これからも出来る限り戦はしないでな」
「勢力を拡大させていきましょう」
「その方が楽だしな」
 外交や調略で勢力を拡大していく、その方はというのだ。
「実際に」
「そのこともありますので」
「じゃあこのままいくか」
「幸いこの島は一つの宗教が強くはありません」
 このことは紅葉が話した。
「これも大きいです」
「それな」
「はい、私達の世界の欧州のキリスト教の様な存在はありません」
「ああした宗教があるとな」
「それだけで戦争も多くなります」
「十字軍とか起こったりな、十字軍ってな」
 久志は教科書でも出て来るこの軍についても話した。
「あれ中東にだけ行ってないからな」
「南フランスや東欧にも行っています」
「リトアニアの方もだよな」
「そして強引に信者を増やしています」
「無理矢理にな」
「同じキリスト教徒であっても」
 南フランスにいたのはキリスト教カタリ派だ、しかしローマ=カトリック教会から異端とみなされて十字軍を送られたのだ。
「カトリックでないとです」
「攻められてるしな」
「彼等はです」 
 まさにというのだった、紅葉も。
「ローマ=カトリックの勢力を拡大する為の存在でした」
「そうだったよな」
「この島、世界にも教会は存在しますが」
「俺達の世界の中世とは違うからな」
「他の信仰も多く存在し」
「混在してな」
「あそこまで勢力が強くないので」
 そうした要素が重なってというのだ。
「それで、です」
「その分戦争が強くないな」
「そうです、ですから」
 それでと言うのだった。
「我々も出来るだけ戦わなくて済みます」
「これが宗教絡むとな」
「それが強い勢力を持ち他者を認めないものなら」
「必然的に戦争が多くなるな」
「宗教戦争が起こります」
「それな、俺な」
 主教戦争についてだ、久志も話した。
「そうした戦争が一番嫌でな」
「したくないですね」
「ああ、日本でもあったな」
「一向一揆ですね」
「あれも結構血が流れたしな」
「欧州に比べれば遥かにましにしても」
「やっぱり結構死んでるしな」
 特に織田信長との戦いでだ、信長の軍勢も一向一揆の方もお互いかなりの血を流し合った。それで久志も言うのだ。
「だからな」
「したくないですね」
「戦争の中でもな、だからな」
「教会ともですね」
「最初から関わり避けたんだよ」
 政教分離の路線を決めたというのだ。
「教会の支持や後ろ盾は大きかったけれどな」
「それでもですね」
「全部の宗教を認めるとも決めたんだよ」
「それは英断でしたね」
「こっちの教会はまだ他の宗教認めてるけれどな」
 この辺りは二十世紀後半の久志達が起きた世界のローマ=カトリック教会と同じだ。この教会の歴史に残る路線変更と言えるだろう。 
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