ある晴れた日に
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199部分:さくらんぼの二重唱その十七
さくらんぼの二重唱その十七
「ちゃんと上手く歌うから」
「それとプリクラもよね」
「あれも撮らないとね」
今度はプリクラであった。
「新しい機種まだ?」
「そっちはもうすぐ入るから」
にこにことした顔で凛に返す。
「ちょっとだけ我慢してね」
「わかったわ。じゃあちょっとだけね」
凛もまたにこにことした顔になっていた。
「待たせてもらうわ」
「それで凛」
「何?」
「お芝居終わったらその格好で撮らない?」
明日夢は今度はこう提案してきた。
「終わったら。どう?」
「あっ、それいいわね」
凛もその提案に頷く。
「何かそれって」
「いいでしょ。じゃあ」
「うん。二人でね」
「おい、ちょっと待てよ」
「そうよ」
しかしここで春華や茜達がこの二人に言うのだった。
「おめえ等だけかよ」
「あたし達も撮りたいんだけれど」
「あっ、忘れてた」
「御免なさい」
本当に忘れてしまっていた。二人は完全に自分達の世界に入ってしまって周りのことには気付いていなかったのだ。この辺りは迂闊と言えば迂闊だった。
「それじゃあ皆も?」
「当たり前でしょ」
「そうじゃなくてどうするのよ」
彼女達はむっとした顔でその二人に言う。
「全く。仲がいいのはいいけれど」
「他の面々のことも考えてよね」
「御免御免」
「それじゃあ皆で」
明日夢は苦笑いと共に皆に言葉を返した。
「撮るわよ」
「そうじゃなきゃね」
「折角のお芝居なんだし」
彼女達は笑顔で言い合う。それは完全に女子高生の付き合いだった。
そしてその女子高生そのままのやり合いを見て男組も言うのだった。
「何だかんだであの連中もな」
「そうだよな。仲いいよな」
「だよな」
こう言い合うのだった。
「それにしても北乃と中森な」
「特にだよな」
「だよな」
やはりこの二人であった。
「仲よ過ぎだよな」
「殆どあれだよな」
「そうだよな、あれだな」
あえて何かはっきりとは言わないのだった。
「怪しいなんてもんじゃねえよ」
「両方共彼氏いねえしな」
それもまたこの話の根拠になるのだった。とにかく憶測は考えれば考える程あらぬ方向にいってしまう。それはこの時も同じだった。
「とにかく。今日はこれで終わりだな」
正道はその中で一人そうした話から今は離れていた。
「じゃあ帰るか」
「帰るの」
「ああ、これでな」
女組から一人離れていた未晴に対して言葉を返す。
「帰るさ」
「それでどうするの?」
「とりあえず休む」
こう答えた。
「何せ音楽殆ど徹夜だったからな」
「御苦労様」
「で、竹林はやっぱりあれか?」
今度は彼が未晴に対して問う。
「カラオケ行くのかよ。連中と」
「今日は用事があって」
ところがここで未晴はこう言うのだった。
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