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ある晴れた日に

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193部分:さくらんぼの二重唱その十一


さくらんぼの二重唱その十一

「もう少しで舞台が整うしな」
「じゃあ明日になるんだな」
「早ければ今日中になるぜ」
 彼はこうも言った。
「その辺りは進み方次第ってとこだな」
「早いうちにか」
「それじゃあいっちょ気合入れるか?」
 春華の目が動き野茂がすかさず言葉を入れた。
「ここでな」
「気合って?」
「だからよ。気合入れてな」
 もう野茂の声は普段より威勢のいいものになっている。
「それでな。やっていくんだよ」
「今の作業終わらせるのかよ」
「で、音橋の音楽チェックしてな」
「また随分とハードなスケジュールね」
 茜がそれを聞いて述べた。
「今から終わらせるだけでも結構だけれど」
「それはすぐに終わるよ」
 加山が茜に言ってきた。見れば彼もトンカチを持ってあちこちに釘を打っている。
「皆が力を合わせればね」
「皆でやればってことね」
「そう。男女関係なくね」
 実際に彼は動いている。だから説得力があった。
「そうすればね。すぐよ」
「そうかしら」
 茜は加山の話を聞いてもまだ首を傾げさせた。
「そんな簡単にいくかしら」
「なせばなるだよ」
 今度の加山の言葉はこうであった。
「だからね。やろうよ」
「そうね。とにかくやらないとはじまらないわね」
「そういうこと。それじゃあ」
「おい、切るのはどんどん持って来いよ」
 野本は相変わらず鋸を持っている。どうやら元々鋸やそういったものを使うのが好きらしい。他にはハンマーもその足元に置いている。
「叩くのもな」
「ほい来た」
「じゃあ頼むぜ」
「切るのはいいぜ」
 鋸を持って楽しげに笑うその顔は殆ど殺人鬼である。こうした時にそのアメリカの不良の如き外見はマイナスになっていた。しかし彼は意に介してはいない。
「叩くのもな。胸が湧くよな」
「あんたダンスだけじゃないのね」
「こうした作業も好きだぜ」
 早速木をまとめて持って来た奈々瀬に対して答える。
「大工仕事もな」
「じゃあ私達もね」
「この服端っこに置いてね」
 明日夢と凛はジャージに完全になっていてそのうえで作業にあたっていた。
「急いでやって」
「音橋の音楽チェックしよう」
「そういうことね。音橋、しっかり作ってるわよね」
「だからそれは聴いて確かめろよ」
 自信たっぷりの返答だった。
「俺も殆ど徹夜だったんだからな」
「よし、じゃあその徹夜の仕事の結果」
「見せてもらうわよ」
 皆忙しい中でも和気藹々としていた。そうして全員で力を合わせて作業を終わらせてそのうえで。彼等は集まって正道の音楽をチェックするのであった。
「で、何処にあるの?」
「それとも今から演奏するのかよ」
「ああ、テープに録音してあるよ」
 竹山が出て来て皆に述べた。
「もうね。ちゃんとね」
「相変わらず用意がいいな」
 坂上はそんな彼を見て頷きつつ言うのだった。
「こうした時はやっぱり頼りになるな」
「何でも記録しておかないとね」
 竹山は坂上の言葉に応えつつそのテープを取り出してこれまた持って来たラジカセに入れる。ラジカセ自体はかなり旧式のものだった。
「今時テープっていうのもないけれどな」
「まあそれはいいか」
「テープにはテープのよさがあるんだよ」
 ここでは彼のこだわりを見せてきた。
 
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