ある晴れた日に
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191部分:さくらんぼの二重唱その九
さくらんぼの二重唱その九
「けれど王さんは」
「何なのよ」
「理想の方なのよ」
ここでもまた言い切った。
「ああいう人になるべきよ。男の子ってね」
「また随分と要求が高いな、おい」
「じゃああれか?」
男組は咲の今の言葉に対して言うのだった。
「俺もホームラン八六八本打たないと駄目なのかよ」
「無茶言うな」
「日本一の監督にも二回なってなかったか?」
「日本シリーズも相当出てるよな」
見事な経歴なのは間違いない。
「山田久志から逆転サヨナラスリーラン打ってな」
「そんなのそうそうできるかよ」
「なせばなるよ」
咲はこう言って引かない。
「人間努力すればね」
「やっぱりおめえ何か要求高過ぎるよ」
「無茶言うな」
「少なくともそれって」
「ねえ」
女組もここで言うのだった。
「咲だけの趣味だし」
「王監督はいいけれど」
「じゃああんた達はどうなのよ」
身内に突っ込まれた咲はその彼女達に顔を向けて問うた。
「誰が理想の人なのよ」
「私は大魔神かしら」
明日夢が考える顔になって述べた。
「誰にも渡さないわよ」
「いや、取らねえから安心しろって」
「今更な」
皆の明日夢への突っ込みは何故か微妙なものも含まれていた。
「最高の人じゃない」
「まあ少年がそう思うのならいいけれどな」
「人それぞれだし」
「凄い引っ掛かるけれど」
「まあまあ」
「気にしない気にしない」
「そうさせてもらうわ」
明日夢自身も強引にそれで納得することにした。
「ところでよ」
「はい、それで」
「お芝居の話よね」
「そうよ、それよ」
明日夢は野球からそこに話を戻したのだった。
「それだけれど。後は舞台を整えて?」
「順調だな」
野本が言った。
「そこんところは俺がいるから安心しろ」
「あんたが言っても安心できないけれど?」
明日夢は懐疑そのものの目でその野本を見つつ言うのだった。その目については野本は完全に無視してそのうえで話を進めるのだった。彼もかなりのものだ。
「とにかく。このままいけばかなり早く話が終わるな」
「音楽もな」
ここで言ったのは正道だった。
「そっちはこれでいける」
「オッケーだってこと?」
「竹山よ」
正道は今度は竹山に顔を向けていうのだった。
「音楽はあれでいいよな」
「僕はね」
彼は納得した顔で頷いたのだった。
「それでいいと思うよ」
「皆にも聞いてもらいたいけれどな」
「うん、そっちもね」
竹山も竹山で彼の言葉に応える。
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