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レーヴァティン

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第九十九話 要塞攻略その十二

 芳直との話をしてだった、久志はトリエステには剛、騎士団との国境には進太にそれぞれ二万ずつ渡してだった。
 そのうえで自身は主力を率いてヴェネツィアに向かった、そうしてヴェネツィアを陸から包囲したが。
 そのヴェネツィアを見てだ、久志は言った。
「奇麗な街だけれどな」
「攻めるとなりますと」
「厄介だな」
「はい、これだけ陸から攻めにくい街はありません」
 順一はこう言った。
「まことに」
「そうだよな」
「ですから」
「今はな」
「攻めるべきではありません」
「幾ら大砲は術が充実していてもな」
「陸から攻めるには」
 どうしてもというのだ。
「非常に難しいものがあります」
「だからな」
「はい、ここはです」
「芳直達が来るのを待つか」
「そうしましょう、待つこともです」
 それもというのだ。
「戦です」
「これまでは随分順調に進めたけれどな」
「そうそう順調にいきません」
「それも戦か」
「相手があり気候等も関係します」
「それでアクシデントもあるか」
「左様です」
 これをクラスセヴィッツの戦略論では摩擦と呼ぶ、戦争はこちらの思惑通りに行く筈がなく様々な要因が計画を狂わせていくものだ。
 それでだ、順一も言うのだ。
「ですから」
「それでか」
「今は待ちましょう」
「我慢してか」
「そうしておきましょう」
「そういうことだな」
「では」
「ああ、じゃあな」
 久志も納得して述べた。
「ここはな」
「待ちましょう」
「そうしような」
 こうしてだった、ヴェネツィアを囲んだローマの主力は今はヴェネツィアを陸から包囲して動かなかった。その間にだ。
 剛と進太が率いている軍勢の動きの情報が伝わった、彼等というと。
「トリエステ降伏か」
「はい、そして国境までです」
 報告をする士官が述べる。
「軍が到達してです」
「掌握したんだな」
「諸都市と村達は全て降りました」
「それは何よりだな」
「そしてそのうえで」
「トリエステと騎士団領との国境まで軍勢が到達したんだな」
「そうなりました」
 こう久志に報告する。
「今は国境の警護を進めておられます」
「剛も進太もか」
「そうされています」
「よし、合格だよ」
 久志は国境の守りを固める二人の動きを笑顔で評した。 
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