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ある晴れた日に

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189部分:さくらんぼの二重唱その七


さくらんぼの二重唱その七

「いないの」
「千里さん元気かね」
「この前メールあったけれどお元気そうみたいよ」
 春華に未晴が告げる。
「何か向こうでいい加減な後輩がいて困ってるみたいだけれど」
「そうか。元気なんだな」
 春華はその後輩のことは置いておいてその娘さんが元気なのことを喜んでいた。
「じゃあそれでいいさ」
「そうね。千里さんがお元気ならね」
「まあとにかくな」
 野本はかなり強引に話を戻してきた。
「そこの教会和菓子あるんだよな」
「そうよ」
「マジでちょっと行ってみるか」
 この男が一番図々しかった。
「和菓子。好きだしな」
「それはいいけどあまり行儀悪いことするなよ」
 春華はその顔を顰めさせて野本に忠告した。
「御前そこがやばいからな」
「何か俺随分言われてるな」
「言われるようなこと言うしやるからだろ」
「自覚しろ、自覚」
 また壺本と佐々に言われる野本だった。
「ったくよお。まあこのケーキもな」
「美味いしな」
「とにかく。このケーキ食べてね」
 ケーキを持って来た明日夢が皆に言う。
「続きも頑張りましょう」
「そうね。それじゃあ」
「また。やるか」
 皆甘いものを食べてやる気を出したのだった。
「ケーキ食べて元気が出たし」
「それじゃあね」
「いい具合に進んでるしね」
 ここで江夏先生が皆のところに出て来た。田淵先生も一緒である。
「皆この調子で頼むわよ」
「頑張ってね」
「って先生達」
「いたんですか」
 皆やっと先生達の存在に気付いた程だった。
「何かいないなって思ってたけれど」
「何処にいたんですか?今まで」
「ずっとここにいたわよ」
「監督してたのよ」
 先生達は生徒達の言葉に少し呆れた顔になって返した。
「気付かなかったの?」
「最初からいたのに」
「ええ、まあ」
「本当に」
 皆本当に先生達の存在に気付かなかったのだった。この辺りは迂闊だったというよりは舞台を作るのや衣装合わせに夢中になっているせいだった。
「っていうかシュークリーム食べてるし」
「ケーキまで」
「ああ、これ美味しいわね」
「やっぱり」
 ちゃっかりお菓子まで食べている先生達だった。
「山月堂が作っただけはあるわね」
「一度食べたら忘れられない感じね」
「うちの店の看板の一つですから」
 明日夢はにこりと笑って先生達に答える。
「結構苦労して契約取りましたし」
「杉下のサインってそんなに価値あるのかしら」
「さあな」
 凛も坂上もその辺りは今一つわからなかった。
「確か中日を日本一に導いたエースだったけれど」
「元祖フォークボールだったよな」
「杉下茂さんのサインならそれだけの価値はあるわよ」
 今言ったのは中日ファンのその未晴だった。
「もうね。昔からのファンにとってはね」
「そうなんだ」
「それでなの」
「ええ、そうよ」
 皆にもこのことを言う。
「それ出すなんて本当に少年のお家も思い切ったものだって思うわ」
「私にとっては誰のサインかしら」
 明日夢は自分ではどうかとも考えた。
 
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