ある晴れた日に
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188部分:さくらんぼの二重唱その六
さくらんぼの二重唱その六
「っていうか教会に和菓子!?」
ところが明日夢はその組み合わせに眉を顰めさせるのだった。
「十字架の前に和菓子って。かなり異様な光景だと思うけれど」
「ああ、それ神様が違うわよ」
咲はその明日夢に対して言うのだった。
「それはね。違うから」
「だって教会っていったら」
「それキリスト教の教会じゃない」
実際に明日夢は完全に勘違いしていた。彼女の中では教会といえばそのキリスト教の教会しかなかったのだ。ところが実際は違っていたのだ。
「そっちじゃないから」
「違うの?」
「全然違うわよ」
はっきりと言う咲だった。
「そこはね」
「そんなに違うの」
「日本の宗教だし」
「それじゃあ神社みたいなもの?」
「それとはまた違うのよ」
神社ともまた違うというのだった。
「けれど正座して参拝するし」
「お寺とも違うのよね」
「けれど日本のだから」
咲も今一つ説明が弱い。
「とりあえず神様と教祖と御先祖様を崇めてるけれどね」
「ふうん、そうなの」
「まあとにかく」
咲はとりあえず話を進めるのだった。
「そこの教会からのお下がりとかでよく頂いてるのよ」
「私達もね」
静華がここで少し照れ臭そうに述べた。
「結構。何かあったらお邪魔して」
「おやつにって」
「そういうことでね」
凛と奈々瀬も静華と同じ調子で言うのだった。
「頂いてるけれど」
「まあそういうことで」
「御前等幾ら何でもそれは図々しいんじゃね?」
「なあ」
坂上も野茂もそんな彼女達に呆れた顔になっていた。
「それってやっぱり」
「どうよ」
「しかしそんなに和菓子が多いのかよ」
野本はこのことに羨ましいものを感じたままだった。
「いいな。俺達も行ってみるか」
「御前もかよ、おい」
「同じ穴の狢だろ?それじゃあよ」
そんな彼には壺本と佐々が突っ込みを入れる。話はケーキを食べながらであるが和菓子の話になっていた。同じ甘いものであってもそこが違っていた。
「けれどそんなに和菓子が多い教会なんだ」
「いつもすぐになくなるけれどな」
春華が桐生の問いに答えていた。
「うち等も食うし色々な人にあげてるし」
「そうなんだ」
「天理教の教会って質素なのよ」
咲は今度は先程よりはっきりと答えた。
「物惜しみせずにあげるし」
「それはまた凄いね」
桐生はこのことは素直に認めた。
「そうおいそれとはいかないことだよ」
「そうでしょ。特に咲が行く教会はそうなのよ」
「その八条分教会?」
「ええ。そこね」
「いい教会みたいだね」
桐生はマロンのケーキを食べながら述べる。
「そこって」
「いい場所よ。今長女さんがいなくて少し寂しいけれど」
「いないんだ」
「ちょっと天理の方の学校に行ってて」
そういう事情によってなのだった。
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