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ある晴れた日に

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186部分:さくらんぼの二重唱その四


さくらんぼの二重唱その四

「釘ってのは幾つあっても足りないな」
「何でこんなにいるんだよ」
「それだけ大きな舞台ってことだろ?ああ、それでな」
「今度は何だよ」
「釘出ないようにしろよ」
 このことを念押しするのだった。
「危ないからな」
「わかってるさ」
 このことは春華もわかっているのだった。
「何かあったら少年とか凛にも迷惑かかるしな」
「御前等も出るんだろ?確か」
「脇の花魁だけれどな」
「じゃあ御前等も怪我しないようにな」
「そういうことだよな。じゃあまたやるか」
 春華は奈々瀬達のところに戻ってまた釘を打とうとした。しかしその時だった。
「皆、休憩しよう」
「差し入れ来たよ」
 明日夢と凛が皆に言ってきた。見れば二人も今は衣装を脱いでメイクを落として作業に適した服になっている。二人共ジーンズ姿である。
「うちの店の残り物だけれど」
「ケーキ来たわよ」
「あっ、ケーキ!?」
 ケーキと聞いて声をあげたのは咲だった。
「そのケーキってスタープラチナで出してるケーキよね」
「そうよ、その山月堂から仕入れてるケーキ」
 杉下のサインで契約を取ったそのケーキだ。
「それよ。どう?」
「慶彦君の家のケーキね」
 咲はこのことを意識せずにはいられなかった。
「咲実はまだ食べたことなかったのよ、そこのケーキ」
「あれっ、まだだったの?」
「和菓子はいつも食べてるけれど」
 あくまでケーキは、ということだった。
「それでもね。ケーキはね」
「じゃあ今食べたらいいじゃない」
「丁度いい機会よ」
 明日夢と凛はそれぞれその咲に対して言う。
「美味しいから」
「けれどスタープラチナでまだ食べてなかったの」
「食べよう食べようと思ってたけれど」
 その意志はあるのだった。
「けれどね。今までね」
「機会を逃すのはよくないわよ」
 明日夢の言葉は少しだけ怒ったようになっていた。
「うちの店の売り物なんだし」
「御前言うことは結局それかよ」
「商売っ気の抜けない奴だな」
 男組は今の明日夢の言葉に思わず突っ込みを入れた。
「全くよ。何かって思えばよ」
「それかよ」
「いいじゃない」
 だからといってそれで怯む明日夢でもなかった。
「ケーキはあるんだし」
「開き直ったな、おい」
「強いな」
「じゃあ食べないの?」
 やはり明日夢は強かった。
「どうなのよ」
「いや、食うけれどな」
 皆こう答えた。
「ケーキ好きだしな」
「俺も」
「僕も」
「何よ、結局皆食べるんじゃない」
 明日夢は彼等の言葉を聞いて顔を少し膨らまさせた。頬がリスの様になる。
「それなら最初からそういえばいいのに」
「まあまあ」
 そんな彼を桐生が宥める。
「皆何だかんだ言って北乃さんに感謝してるんだし」
「そうかしら」
「してるよ。僕だってね」
 自分もそうだと言う桐生だった。
 
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