魔法が使える世界の刑務所で脱獄とか、防げる訳ないじゃん。
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第一部
第24話 新年魔法大会 【幕間 続】
神白さんとシンが琴葉を探しに行って、二分程経った頃だろうか。
「ただいまー」
ヘラヘラと笑いながら、琴葉が戻ってきた。この笑み……まさか。
「琴葉、もしかしてッ……グレースを殴ったのか!」
「いやぁ、彼奴がいきなり抱き着いてきたからつい反射的に、ね」
「だからあの絶叫……」
なんだ、心配して損した。どうせ、ロクでも無い理由だとは思っていたが、そこまでロクでもないとは思わなかった。
「……ねぇ、琴葉ちゃん。本当にグレースくんの事、殴っただけなの?」
何故か静かになっていたハクがいきなり声を出す。琴葉の目を、何か疑う様な目で見る。
「………え?」
「だって、琴葉ちゃんから血の臭いがするよ。それに、グレースくんも帰ってこないし。直前、グレースくんも琴葉ちゃんも、様子がおかしかったよね。もっと違う、何か。血が出る様な何かをしたんじゃないの」
一舎代表選手の待機席に冷たい空気が流れる。無いと信じたいが、もしかしてと考えてしまう。
早く、早く否定してほしい。そうしないと、琴葉を疑ってしまう———
「———あ、黒華主任。神白主任が何処へ行ったか、知ってますか?」
「……嗚呼、白雪副主任。神白は見てないけ」
「おお、真冬くん。神白主任は一舎の方に行ったよー」
「遮るなし」
また白髪の看守……琴葉と要の言葉から考えると、名前は白雪真冬だろうか。寒そうな名前だな。髪も肌も真っ白で、確かに雪みたいだ。
「ありがとうございます。あと、黒華主任———そろそろ僕の仲間が、貴女の大切なモノを壊しに来ますので。貴女がしたように」
「……把握済みだよ。でも、良いのかね? 敵に情報を与えても。“マフィアは”情報の漏洩にはかなり気を配っていた筈だけど」
「大丈夫です。今日、貴女は“戻る”のですから」
「へぇ。まぁ、“勝手に言ってろ”って言えないことは分かってるから言わないけど……御前なら、ここに入ったら真っ先に神白を始末すると思ったけど、しなかったね」
「今になって後悔しています。ですが、双子達も居るので、不利なのは貴女の方ですからね」
「……あっ」
「いえぇぇええい‼︎ みんなぁ‼︎ だいじょーぶかぁああああ⁉︎⁉︎ さっきのは、おとこのコがちょこーっとふざけて、おんなのコにセクハラしちゃっただけだよー‼︎ ビンタされちった! てへぺろっ‼︎ ってことでしょー‼︎‼︎ ってなワケで、大会はしっかり続けちゃうぞー‼︎ ヒャッハァァアアアアア‼︎‼︎‼︎‼︎」
「だから遮るなってぇ」
いきなりミオウが叫んで、張り詰めていた空気が一瞬で緩くなる。
目の前で行われていた言い合いも、意味が読めないまま、終了した様だ。
「次の競技、頑張ってね。白雪副主任」
「最終競技、頑張ってください。黒華主任」
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