ある晴れた日に
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174部分:輝けダイアモンドその八
輝けダイアモンドその八
「音楽は。大丈夫よね」
「安心してくれよ。それは順調だぜ」
「だったら安心していいのね」
「作る分にはな」
ここでは話の調子を少し変えてきていた。
「順調さ。けれどな」
「けれど?」
「いいかどうかっていうとな」
やはり言葉の調子が少し変わってきていた。
「自信はあるけれどそれでもな」
「?どうかしたの」
「俺としてはいけてると思うんだよ」
言葉をさらに続けてきた。
「俺としてはな」
「じゃあいいんじゃないの?」
「ちょっとその辺り聴いて欲しいんだよな」
正道の顔が難しいものになった。
「ちょっとな」
「つまり他の人に受け入れられているかどうかっていうのは不安ってことなのね」
「ああ。正直に言ってな」
強気な彼にとっては珍しい言葉であった。
「今回は。ちょっとな」
「そうなの」
「だからな。あれなんだよ」
彼はさらに言葉を続けてきた。
「誰かに一度聴いて欲しかったりな。いや」
「いや?」
「おかしいな」
ここで顔を顰めさせる正道だった。
「俺がこんなこと言うなんてな」
自分でもこのことに気付いたのだった。
「おかしいな。何でだ?」
さらに自問自答した。
「自分でもわからないな」
「わからないならそれはそれでいいじゃない」
未晴は自問自答する彼に対して言うのだった。
「世の中何でもわかっていなかったら駄目ってわけでもないし」
「そういうものか」
「そんな簡単なものじゃないって思うわ」
高校一年生にしては随分と大人びた言葉であるがそれでも未晴が言うと板についているから不思議だった。それが彼女の持っているものだろうか。
「だからね」
「それでいいのかよ」
「何でもわかったら凄く詰まらない世の中よ」
未晴はこうも言うのだった。
「どうしてもわかっていないといけないものだってあるけれど」
「そうじゃないものだってか」
「そう思うわ。だからね」
「ああ、わかったさ」
正道はここで納得した顔になった。
「今は。このことは考えないでおくさ」
「そういうことね」
「それでもな」
だがそれでも言うことはあった。
「音楽だけれどよ」
「ええ」
「聴いて欲しいんだけれどな」
それはまた未晴に対して告げた。
「竹林にな。いいか?」
「チェックして欲しいのね」
「ああ」
彼女の言葉にもはっきりと答える。
「それでだけれどな。いいよな」
「ええ、いいわ」
未晴は彼の言葉ににこりと笑って頷いてみせた。
「私でよかったら」
「悪いな。ただでさえあの五大馬鹿の面倒見てるのによ」
「五大馬鹿って」
また随分な物言いであった。
「あまりそういう言葉って」
「あの連中にはついつい言いたくなるんだよ」
言いながら脳裏にその五人を能天気な表情で思い浮かべるのであった。
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