戦闘描写練習文──ラインアーク攻防──
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ホワイトグリント撃破(序)
前書き
転載編第一話。二千字しかないけど載せないと始まらないので仕方ない。
『ミッションを連絡します』
今回の依頼仲介者は抑揚のない女性の声だった。この声を何度か聞いたことがあるなどという関係ない感想を抱きながら彼はその通達を聞き始める。
『ラインアークの主戦力、ホワイトグリントを排除してください』
目標はラインアークに所属する最強のネクスト、ホワイトグリント。新規開発のフレームとGAグループの新鋭兵装に身を固めた、中量二脚ACの完成形の一つ。
『ホワイトグリントのランクは9ですが、実際には、その数字よりも遥かに強力なネクストです。そうでなければ、現状況は生まれていません』
そのネクスト自体の優秀さと、それを操るリンクスの実力が奇跡的な化学反応を起こして生まれた、企業という首輪の付いていない山猫の中で最強の単独戦力として名を馳せていた。
『たとえあなたであっても、1対1の戦いは危険です。ランク1、ステイシスと協働して、ミッションにあたってください』
それを葬ろうとするのに同じ単独戦力を用いるのは理に叶っている。
『唯一の拠りどころたるホワイトグリントが失われれば、ラインアークの抵抗の意志は、脆くも崩れ去るでしょう』
彼女は明るい未来を宣伝し始める。それがリンクスにとっても明るい未来であるかのように。
『そうなれば、クレイドルの憂患は一気に解決されます』
最も、彼は楽観的な企業の予測などどうでもいいと思っていた。実際、管理者でない山猫が管理者の未来まで考えてやる必要はない。
『我々は、このミッションに最高の戦力を用意しました。あとはあなたにお任せします』
ビデオメールを見終えた彼は、それを一度閉じると他の依頼が無いかを確かめる。時期の被る、出来ればGAかそれに準ずる勢力の依頼を期待していたのだが、彼の期待に反してそうした依頼は届いていなかった。
「……オーメルの政治力は伊達じゃないか」
彼は勝てるどうかは別としても逃げるだけの実力はあったので、受けるのは別に構わなかった。だが、「今回も」オーメルの差し金であることは問題だ。彼はあまり特定の企業に肩入れしたくはないと考えていたのだが、最近は立て続けにオーメルの依頼を受け、BFFとGAのフラグシップAFを落としていた。ホワイトグリントがGA系列から支援を受けていることを考えれば、今回はオーメル側のこの依頼は拒否すべき物であったのだが……。
「まさか"強制出撃"依頼とは……」
リンクス側の尻込みを意識していた彼らは、他の依頼が無い場合において拒否が不可能という、統治企業連盟にとっての鬼札を切っていた。
この命令を避けるためだけにカラードへの参加をせず、イレギュラーや企業専属リンクスとして表舞台に出ないことを選択するリンクスも多い。かつてのオリジナルの中にもそんな選択をした人間は少なくはなかった。
だが、首輪付きである彼には関係ない話だ。目の前に問題の依頼があり、それを拒否できないのはほぼ決まっているのだから。
「どうする?」
彼のオペレーターが傍らに立ち、彼の答えを求めた。彼にとって師と言ってもいい相手の問いに、彼は一瞬だけ考え、はっきりと言いきった。
「……受けますよ」
それに対し、オペレーターは一言だけ質問を返した。
「理由は?」
彼はそれに答える理由は持っていなかった。
「走らない山猫に存在意義があると思いますか?」
それでも、彼にとって飛び続けることに一片の疑問の余地もなかった。
「……そうだな」
少しの沈黙をおいて、オペレーターが返答する。彼がリンクスとして生きるなら、それ以上に必要なことなど何もありはしなかった。
──そのはずだった
1730hrs. 17 April 2165
Area:Line Ark
Object:KILL"White Glint"
……紅く染まり始めた空が、接近する白い機体を淡く光らせる。
『こちら、ホワイトグリント、オペレータです』
特徴的なOBを吹かしながら接近する白い機体。生ける伝説にして地上に住む人間の希望。
──ホワイトグリント
『あなたたちはラインアークの主権領域を侵犯しています。速やかに退去してください』
それを駆るのは世界を変えて見せた最強のリンクスにして、大切な物を失い続けた悲劇の英雄。
──ラストレイヴン
『さもなくば実力で排除します』
"彼"は何も語ることなくそこに佇み、戦争の始まりを待っていた。
『フン、フィオナ・イェルネフェルトか。アナトリア失陥の元凶が何を偉そうに』
それに対して挑発的に返答してみせる声が一つ。今の時代の最高峰リンクスの一人、ランク1の毒舌家、オッツダルヴァのものだった。
『ホワイトグリント、大げさな伝説も今日で終わりだ』
そして彼はその矛先を伝説へ変える。
『進化の現実って奴を教えてやる』
まるで愚弄するかのように、何処までも芝居がかった台詞を投げかけた。
『……行けるな、貴様?』
ランク1の声が首輪付きに対する物に変わり、幾分か口調が柔らかくなる。
「……ええ」
小さな返答を返し、彼はストレイドのOBを発動させた。
『じゃ、始めようか』
オッツダルヴァの駆るネクスト、ステイシスもOBを発動。
『ミッション開始! ステイシスと協同し……』
──貴方を落とす
『ネクスト"ホワイトグリント"を撃破する!』
──答えを見つけるために
中量タイプの高速ネクスト2機は音の壁を越えた加速でラインアークの本拠地、海上都市へと突撃した。
後書き
この時点では戦闘シーンは存在しないわけですね。一月前の私は、なぜこんなのを書いていたのだろう。
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