ヒュアデスの銀狼
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SS1 カズ
前書き
魔法少女かずみ☆マギカの、IF。
もしもミチルのクローンに、男版が出来ちゃったらというもしも。
※いきなりモブ魔法少女が襲われます。
“悪い子のところには、オオカミが来るよ”
“悪い子は、オオカミに食べられちゃうよ”
その歌うような声が聞こえたら、オオカミに食べられる……。
某県にある、あすなろ市に、そんな噂が流れていた。
「ほーら、あなたの後ろに…。」
「やめてよー。」
「あははは、冗談よ、冗談。そんなオオカミが本当にいるわけないじゃない。」
女子中学生達が、そんな会話をしながら、歩いていた。
「それでね、そのオオカミのご主人様がいるって話もあるんだよ?」
「もう、やめてよー、そういう話。」
「なんでも…、可愛い女の子だって。」
「ほんとー? どうせネットで見たガセネタでしょ?」
「書き込みだと、見たり聞いたりした人は、みんな死んじゃってるって話だし。嘘じゃない?」
『悪い子のところには、オオカミが来るよ』
「ちょっとぉ! 私が怖がるからって! また!」
「えっ? 私じゃないよ?」
「私でもないわ。」
『悪い子は、オオカミに食べられちゃうよ』
「………………えっ?」
『グルルルルルル……。』
獣のようなうなり声と共に、少女達の周りの景色が、楽園を思わせる野原と木々の生えた景色に変わった。
「な、なに!?」
「させない!」
その時、現れたのは、カラフルで可愛らしい衣装に、杖を握った魔法少女。
「さあ、逃げて!」
「えっ、えっ!?」
『ガアアアアアアアアア!』
「きゃああああああああああ!?」
そこへ、現れたのは、ゾウのように大きな体を持つ銀色のオオカミ。
だが、ただのオオカミではない。
頭部に山羊のような角があり、背中に鳥のような翼を持つ、異形だった。
オオカミの登場に、一目散に逃げていく少女達。
オオカミが追おうと足を前に出すと、魔法少女が立ち塞がった。
「これが、噂の“オオカミの魔獣”なのね? 確かにオオカミみたい…だけど…。」
魔法少女が杖を突き出した。
「私が倒すわ!」
「それはどうかな?」
「えっ?」
オオカミの魔獣の背中に、フワリッと一人の少女が舞い降りてきた。
薄い色の髪の毛のその少女は、二つに束ねた髪を揺らし、オオカミの魔獣の横に降り立ち、オオカミの魔獣の顔の横を撫でた。
「かかってくれてありがとう。」
「えっ?」
「あの子達は囮。もとより魔法少女である、あなたが狙いだったんだよ?」
「なっ…?」
「この結界は、外に出れば普通の人間は記憶が改ざんされて忘れる。そして、魔法少女を逃がさない檻でもある。あなたは、これからこの子に…、オオカミに食べられるんだよ。」
「っ!?」
「さあ、行きなさい。久しぶりの“美味しいご飯”だよ。」
次の瞬間、オオカミが足を前に出し、魔法少女に飛びかかった。
そして、どれくらい時間が経っただろうか。
月が夜空に上がる頃。やがて、建物と建物の間の路地に、渦を巻く黒い穴が開いた。
そこから、薄い色の髪の毛の少女が飛び出しアスファルトの上に着地した。
十数秒ほどおいて、次に飛び出してきたのは、短い黒髪の少年だった。
年頃は、少女と同じぐらいだろうか。肌は白く、赤みのある黒い目をしている。顔立ちだけで見れば、少女と見まごうほど整っている。
その少年が飛び出すと、穴は消えた。
「美味しかった? “カズ”。」
少女からカズと呼ばれた少年は、グシグシと口元を服の袖で乱暴に拭いながら頷いた。
少女が、ハンカチを取り出し、カズに近づいてそのほっぺたを拭いた。
「行儀が悪いね。こんなに汚しちゃって。」
「…ご、めん。」
カズは、しょんぼりとした。
少女のハンカチは、ドス黒い血で汚れた。
「でも、それだけ美味しかったんなら、いいわ。普通の人間ばかりじゃ飽きものね。」
「…オレ…強くなった?」
「うん、一段と強くなったね。すごいよ、カズ。」
少女は、嬉しそうに笑顔を作り、カズの頬を両手で包んだ。
「良い子よ。私のオオカミさん。私のカズ君。」
「…か…んな…。」
「そう。私の名前、カンナ。よーく覚えたね?」
「カン、ナ…、カンナ。」
「そう、カンナ。……アイツの本名だってのが気に入らないけど、今は私が聖カンナなんだ。」
「ちが…う?」
「ううん。カズは気にしないで。それより、次の魔法少女を探さないとね。」
「次…、また…ウマイ?」
「ええ。きっと美味しいよ? それで、いじめていじめて、魔女にしてから食べちゃうの。そうすれば、カズは、もっと強くなれる。」
「オレ…、カンナ、の。」
「そう、私のために強くなって。そして、あなたを捨てた、アイツらを、びっくりさせるほど、つよーいオオカミさんになるの。」
「オレ…かずみ…違う…。すて…られ、た…。」
「そう。あなたは、女の子じゃなくて、男の子として生まれちゃったから、すぐに殺されて捨てられたの。でも、生き残った。カズが生まれ持った能力である、異常な再生能力…、“超再生力”って言えばいいかな? そのおかげで、マルフィカ・ファレス(魔女の肉詰め)である、カズは、魔獣として生まれ変わった。女の子じゃないし、魔女じゃなくて、魔獣って言う方が合ってるよね。」
「オレの…な、まえ…、カンナ…くれた。」
「そう、かずみってアイツらが付けてたから、カズ。かずみちゃんのお兄さんだよ。」
“悪い子のところには、オオカミが来るよ”
“悪い子は、オオカミに食べられちゃうよ”
「そう…いずれ悪い子(魔女)になる魔法少女は、あなたのご飯。美味しいご飯。もっともっと食べて、うーんと、強くなってね。私の、オオカミのカズ。」
聖カンナは、クスクスと楽しそうに笑いながら、カズの手を引いて、歩き出したのだった。
後書き
ある意味で、性転換?
ミチルのクローンの一人だけど、男性化したため、数には入っていません。なので、原作通り、かずみは13人目。
以下、オリ主(?)設定。
名前:カズ(かずみの男版なので、それっぽく)
能力:
オオカミの魔獣に変身。
四つ足と、二本足の狼男の二パターン。
エデンを思わせる楽園のような結界を張ることができ、結界内にいる動植物が攻撃を行うこともできる。
魔女と違い、結界内の動植物が魔獣化することはない。
固有能力:『超再生力』。血の一滴からでも再生可能。
その他:
濁ったソウルジェムから濁りを取り除くことができる。ジュウべえと違い、グリーフシードとほぼ同じ。ただし負担が大きいのであまりできない。
また、グリーフシードを食べることでより、強く、進化できる。(後々のフラグ)
連載するかは、未定。
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