ある晴れた日に
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163部分:共に生きその十三
共に生きその十三
「俺もな」
「無理なの」
「俺が使える楽器はギターだけなんだよ」
ここでは申し訳ない顔になる正道だった。
「それ以外はな。悪いけれどな」
「そうなの。じゃあ」
「けれど方法はまだあるぜ」
少し心配そうな顔になった竹山に対して述べた。
「まだな」
「どうするの?」
「音を日本風にすればいいんだよ」
こう言うのであった。
「ここはな」
「日本風にする」
「そうさ」
真剣な顔で竹山に答えた。
「日本風にな。するんだよ」
「って日本の音楽だけれど」
「だからあれだよ」
また言う正道だった。
「音の調子を日本のそれにするんだよ」
「日本の!?」
「例えばな」
脇に置いてあったギターを抱いて少し奏でだした。その曲の響きは。
「どうだ?」
「助六の音楽の一つだね」
「ちゃんとそういう感じに聴こえるよな」
「うん」
正道の言葉に対して頷く。
「確かにね。何となくだけれど」
「和楽器は使えなくてもそれに近付けることはできるんだよ」
「そういうことなんだ」
「ああ。だからな」
また言う正道だった。
「こうして普通の楽器でアレンジしていくからな」
「それ、頼めるよね」
「ああ、やってやるぜ」
不敵に笑っての言葉である。
「安心してくれよ。何度も聴いてやってやるからな」
「うん。じゃあそれは任せたよ」
「任せておいてくれよ。それでな」
「今度は?」
また正道の言葉に顔を向けることになった。
「何かあるの?」
「皆にも見せるんだよな」
彼が今度言うのはこのことだった。
「やっぱりな」
「うん、そのつもり」
すぐに答える竹山だった。
「さもないとわからないじゃない。特に主役の二人ね」
「あいつ等か」
「見てくれるかな」
それが少し心配なようである。
「その辺りどうかな」
「見るだろ」
正道はこのことにはさして不安視してはいなかった。
「それはな。やっぱりな」
「見てくれるんだね」
「主役だろ?」
彼がまず言うのはこのことだった。
「主役ならな。やっぱりな」
「見るってことなんだね」
「見ないとおかしいだろ」
彼はまた言った。
「やっぱりな」
「それに二人共無責任な性格じゃないしね」
「あいつ等が無責任だったらどうしようもないからな」
正道はこうも言った。
「正直なところな」
「そうだね。二人共結構しっかりしている方だしね」
「それにだ」
彼はさらに言葉を付け加えてきた。
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